年明けあっという間にオミクロン株の感染拡大で「第6波」が全国を襲い、比較的穏やかだった生活も全国各所に「まん延防止等重点措置」が発令され行動が制限され、再び窮屈な状況に追い込まれています。新規感染者数は東京都だけで1万人は超えるものの、幸いなことに死亡者数はゼロを更新、重傷者数も数十人と「レベル2」の状態を維持しています。専門家の予測では全世界的にも2月をピークになんとか再び穏やかな「ウィズコロナ」生活に戻れそうだと話していますが油断は禁物。
そんな中前回もお伝えしたとおり、岸田首相は昨年末に「宇宙開発戦略本部会議」の中で日本の宇宙事業に向けた基本方針を打ち出しました。12月8日にはzozotown創業者の前澤友作さんが日本人の民間人で初めてISS国際宇宙ステーションまで到達し12日間の滞在を果たし、日本も本格的な宇宙事業に国を上げて乗り出そうという状況。また1月24日(月)には「ハッブル宇宙望遠鏡」の後継機種と言われる「ジェイムズ・ウェッブ宇宙望遠鏡」が地球から約150万キロ離れた目的地の第2ラグランジュ点L2に到達。宇宙の神秘の解明にさらなる期待。ということで引き続き今年を担う宇宙の話題を紹介します。
■日本のGPSがさらに高精度に、、、
映画「スタートレック」のカーク船長扮する米国俳優ウイリアムシャトナーさんを宇宙まで送り届けて話題の宇宙開発企業ブルー・オリジン社は、昨年末最大10人を収容できる独自の宇宙ステーション「オービタル・リーフ(Orbital Reef)」を建設すると発表、なんと内部には研究施設以外にも観光客用のデッキなども設置すると話題になっていますが、一方、日本のJAXAは三菱重工業と共同で昨年10月、H2Aロケット44号機の打ち上げに成功し、2005年の7号機からの連続成功(38機)を更新しました。
これには、純日本版の衛星利用測位システム(GPS)「みちびき」の後継機が搭載され、現在運用中の4機のうち初号機との交換がされるということです。現在世界のGPSはアメリカが打ち上げた30基を中心にサービス運用されていますが、日本上空から米衛星が見えづらく電波が真上から届かないときなどにGPSを補完する働きとしてこの「みちびき」が使われています。今後さらにあと3基追加して全7基体制にすることで、最終的に現在1〜10メートル程度の誤差のところ、6センチの誤差にまで縮めることができるということです。これによってドローンによる無人輸送や農機の自動運転などの操作性も格段に良くなるほか、東南アジアやオセアニア諸国への利用拡大もしていくとのこと。我々の生活になくてはならないGPSも宇宙事業のひとつとして育てて行く必要があります。
■夢の研究!老化した認知機能が若返る!?
昨年JAXAなどのチームが、ISS国際宇宙ステーションでマウスを使った実験を実施し、宇宙に長期滞在すると加齢変化が加速することがわかったそうです。つまり宇宙飛行士は地上で勤務する人にくらべて老化が進むかもしれないというわけです。
こうした宇宙時代にも重要な老化現象の解明について、京都大学の研究グループが昨年12月、老化とともに認知機能の低下や衰えにつながる神経細胞を特定し、遺伝子操作でマウスの老化を食い止めることに成功したと国際学術誌「Genes & Development」に発表しました。
人は胎児の時代から神経細胞を活発的に増殖させ、これらの神経細胞によって記憶や学習に重要な役割を果たすことがわかっています。ところが老化とともに増殖力が落ちその結果認知機能が低下してしまいます。これを食い止めるために、研究チームはマウスの胎児で神経幹細胞を最も活性化する遺伝子を突き止めるとともに老化したマウスからも増殖力を落とす遺伝子を特定。これによって神経細胞を最も活性化する遺伝子の動きを加速化させるとともに老化する遺伝子の動きを制御することで、神経細胞を一定の活性化状態を保たせることに成功。
この手法を用いてマウスの脳に遺伝子操作を施したところなんと、増殖能力を失っていた神経細胞がふたたび活性化を始めるようになったということです。さらに若返った神経幹細胞が3カ月以上増え続けることも確認。学習、記憶能力も改善したことも確かめられたということです。
この手法が霊長類にも適用できるかについてはこれからの確認になるそうですが、研究チームはアルツハイマー病などの脳疾患治療の開発につなげたいと意欲を燃やしているそうです。こうした研究が世界の宇宙事業者を支えていく時代が来ています。
■火星に行った宇宙飛行士は連絡してこなくなる!?
最後にこれからの宇宙事業では日常になってきそうな話題。ロシアの研究者たちは地球上に模擬的な火星植民地を作って、そこで地球外環境と同じ体験を宇宙飛行士候補たちに体験してもらうという実験を行っています。これまでもロシアでは「プロジェクトシリウス(Project SIRIUS)」という140日間に渡る地球外環境シミュレーションや、520日にわたり外部から隔離した擬似宇宙船の中で過ごす有人火星飛行シミュレーション「MARS500」などで成果を得てきたそうで、今回の火星植民地体験ではこれまでの体験を踏まえて、参加者がさらに長期間に渡って隔離された環境で生活したときの行動やコミュニケーションについて調査が行われました。
その結果わかったことは、隔離される期間が長くなればなるほど、参加メンバーは自立を始めコントロールセンターとのやりとりが少なくなっていく傾向が出たそうです。そのためセンター側からすると、火星植民地側の状況がだんだんわからなくなってサポート能力が低下していくことも明らかになりました。とくに男性が報告をしなくなるそうです。
このままでは火星で生活するなどの長期宇宙生活にあっという間の限界が来てしまうかもしれません。宇宙探査事業には火星のような遠く離れた極限の世界でも、気軽に連絡を取り合ったりコミュニケーションができる能力が必要になってくるというわけです。
みなさんはオミクロン株感染拡大で外出自粛を余儀なくされ、まさに火星で生活する宇宙飛行士のような環境に置かれています。いまこそ生きていくために外とのコミュニケーションが重要な役割なんだという認識を持たねばなりません。
(出典)
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■宇宙開発戦略本部(21/12/28)
https://www.kantei.go.jp/jp/101_kishida/actions/202112/28space.html
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■JAXA H2Aロケット 44号機 準天頂衛星 みちびき初号機後継機打ち上げ成功(21/10/26)
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■老化神経幹細胞の若返りによるニューロン産生の復活と認知機能の改善
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■cnet:Mars colony simulations(21/11/15)
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■2022年、宇宙競争はより白熱し、混み合い、危険になる(22/01/19)