10月31日からイギリス・スコットランドのグラスゴーで開催されている「国連気候変動枠組条約第26回締約国会議」略称「COP26」に加え、ノーベル物理学賞にアメリカ・プリンストン大学上席研究員の真鍋淑郎さんが受賞されたことやNHKの朝ドラ「おかえりモネ」のテーマが「気象予報」だったりして、改めて「地球温暖化」や「気候変動」それらを食い止める活動としての「SDGs(持続可能な開発目標)」や「カーボンニュートラル(co2の排出量から吸収量と除去量を差し引いた合計をゼロにする)」に注目が集まっています。
かつては「地球温暖化」については専門家ですら半信半疑でしたが、明らかに現在の平均気温がわずか2百年前の産業革命から1度も上がっているという事実を突きつけられ、異常気象や洪水、山火事などが次々起きていることを目の当たりにする中、このまま進めば今世紀中に平均で2.7℃上昇すると国連が発表。もはや待ったなしの状況に追い込まれつつあります。
ここで重要なことは「SDGs」や「カーボンニュートラル」などの目標を掲げるだけでなく、それを実現させる「人材」と「アイデア(技術)」と「資金」がなければ何も出来ません。今月は「SDGs」や「カーボンニュートラル」を実現させるための注目の「技術」や「活動」について最近のニュースからピックアップしてみたいと思います。
■シンガポールで世界初の代替乳飲料「微細藻類ミルク」が開発される、、、
イスラエルのフードテックベンチャー会社の「アレフ・ファームズ(Aleph Farms)」がイスラエル工科大学と共同で、3Dバイオプリンティング技術を用いた「培養リブアイステーキ肉」を世界で初めて開発することに成功したのは今年の2月ころでした。代替肉の技術開発は世界各国で盛んに行われていて、すでに「大豆ミート」などはよく目にするようになってきています。そんな中、5月には牛乳の代替品を開発した企業が現れました。
牛乳の代替品といえば最近では豆乳やアーモンドミルクなどが健康食品としても人気ですが、シンガポールのバイオ食品技術企業ソフィーズ・バイオニュートリエンツ(Sophie's BioNutrients)はなんと、微細藻類でミルクを開発したと発表。微細藻類由来のミルクは世界初だそうです。
微細藻類由来のタンパク質やアミノ酸と水から乳飲料を作り出すことに成功したことで、より牛乳に近いクリーミーさを持ち、それでいて乳糖(ラクトース)を分解できない人でも飲むことが可能な、アレルギー体質の方にも優しい飲み物になりました。
ちなみに微細藻類からは代替ひき肉などの製造も可能ということで、ソフィーズ・バイオニュートリエンツ社のユージーン・ワンCEOによれば「微細藻類由来のミルクやタンパク質は、持続可能で環境に配慮したSDGs時代の食料源となる可能性を秘めている」と話しているそうです。
■まぶしい成果!?世界最高率の人工光合成に成功、、、
「国立環境研究所地球環境研究センター」のホームページによれば、世界の森林や草原など自然環境によるCO2の吸収量は、約500地点での観測値を総合すると1ヘクタール当たり年間1トン、世界では年間約31億トンほどのCO2を吸収しているとあります。それに対して世界のCO2排出量はといえばなんと328億トン(2017年)。何と吸収量の10倍以上もCO2が出続けています。
そんな中CO2を取り込んでほかの有機物やエネルギーに変換する「人工光合成」の研究はこれまでもさまざま行われてきています。今から約10年前(2012年)には植物並みの変換効率0.2%をパナソニックが実現させて話題になりました。そしていま注目なのは自動車関連技術開発を手掛ける「豊田中央研究所」がなんと、太陽光パネルや電極などを組み合わせることで、「人工光合成」の変換効率を一気に「7.2%」にまで高めることに成功。「豊田中央研究所」は2015年にもすでに変換効率「4.6%」と世界記録を実現させていましたが、今回はその倍近い変換効率にまで達したというわけです。
今後はこの技術を活用して工場から排出したCO2などを回収し、資源として再利用するシステムの実現を目指すということで地球温暖化対策への応用が期待されています。アメリカもいよいよCOP26では地球温暖化対策に本格的に参加を始めていますが、こうした日本の技術が世界に通用するCO2削減技術になっていくことを願うばかりです。
■これぞ魔法の杖!?レーザーポインターで雷を誘導できる!?
つづいて気候変動を抑制できるかもしれない画期的な技術の話題。なんとカミナリが落ちる場所を誘導できるようになるかもしれないというニュースです。
オーストラリア・ニューサウスウェールズ大学(University of New South Wales)のアンドレイ・ミロシニチェンコ(Andrey Miroshnichenko)教授は、光を引きつける特殊なレーザー光線(トラクタービーム)を使って、カミナリが出そうな嵐の雲からカミナリの放電経路を特定の標的へ誘導することに成功し、その研究成果を英科学誌ネイチャー・コミュニケーションズに発表しました。
これまでは、同様の結果を実現するには高出力のレーザーが必要だったため、この技術は危険性とコストが高く、不正確なものだったそうです。これをミロシニチェンコ教授は小型で手持ち操作が可能なトラクタービームを開発したことで空気中の微小粒子を加熱して特定の場所に送り込み、放電を誘発させカミナリを誘導することが可能になったということです。
オーストラリアやアメリカ西部では、雨を伴わないカミナリが過去1年間で複数の重大な森林火災を引き起こしていることから、カミナリを安全な場所に誘導することが重要課題となっているそうです。そんな地域への早急な実用化が望まれます。この続きは11月後半で、、、。
(出典)
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■Sophie's BioNutrients
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■micro-algae based milk
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■人工光合成で植物の太陽光変換効率を超える:豊田中央研究所
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■New tractor beam has potential to tame lightning:ニューサウスウェールズ大学
https://newsroom.unsw.edu.au/news/science-tech/new-tractor-beam-has-potential-tame-lightning
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■cop26
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■岸田総理大臣によるCOP26出席