いよいよ第49回衆議院選挙が公示され、10月31日の投開票に向けて選挙戦が始まっています。各党の公約はいづれも「新型コロナ対策」「経済・エネルギー」「外交・安全保障」「教育・子育て・多様性」などが主な論点となっていますが、世界に通じる技術力の開発を目指しているのは、自民党の「核融合開発を国を挙げて推進」くらいで、ほかはみんな消費税の引き下げとか暮らし応援給付金の配布とかだけで終わってしまっています。「ジャパンアズナンバーワン」を再び取り戻すことはできるのでしょうか。これからの日本が豊かになるには「ジャパンアズナンバーワン」しかありえないと思っています。
ところでキーワードにもなっている「成長と分配」ですが経済を成長させ賃金を引き上げて消費を上げることで経済を活性化させるとしていますが、日本のような高齢化社会まっしぐらの国でいくら賃金が上がっても年寄りの年金は上がらないのですから消費は上がらない。若者には申し訳ないが我々にとって成長はしてほしくないわけです。かえって多少お金があって海外OKの人達はもっと安く豊かに暮らせる国に移住していってしまうかもしれない。ここも苦しいところです。
そんな中、前回と今回に分けて紹介しているのはまさに「ジャパンアズナンバーワン」の要素たっぷりの「メタバース」です。前編ではいまや「メタバース」がビジネスの一分野に君臨しようとしている、あらゆる技術発展は、普及が進み「ある臨界点を超えると社会変革を起こす」と言われており、VRもいよいよ社会的臨界点を超え、社会変革を引き起こすと企業各社が注目を始めている、というところまででした。今回はその具体例をご紹介したいと思います。
■メタバースの可能性、名だたる企業がぞくぞく出資・進出
「メタバース」によって変革が起きると期待されている分野についていくつかご紹介したいと思います。
◎クラスター(cluster):エンタメ:
もっとも期待される分野はエンターテインメント業界です。特に新型コロナ感染拡大のよる外出自粛の状況で、会場でライブを見ることが実質できなくなっています。今後も何らかの制約が加わっていくであろうライブエンターテイメント業界では「メタバース」化することが急務となっています。
ライブコンサートをまるごと映像化して自分の好きな角度から見られるようにしたり、観客の臨場感を味わったりするこころみも各社が行っている中、こうしたヴァーチャルライブコンサートやイベントをパッケージ化するためのVRプラットフォームビジネスをてがける日本の「クラスター(cluster)」に注目が集まっています。
京都大学理学部で宇宙論と量子コンピュータを研究していた加藤 直人さんが大学中退して引きこもり生活をする間に思いついて2015年に始めたVR型のSNSがこの「クラスター(cluster)」。これが進化していまやヴァーチャルライブを開催するためのプラットフォームとして様々な企業がイベントを開催しています。昨年10月には6日間で40万人が「ヴァーチャル渋谷」のハロウィーンフェスに参加。期間中にはきゃりーぱみゅぱみゅさんのライブパフォーマンスやケント・モリ(KentMori)さんのダンスパフォーマンスなども披露されました。現在までに「ヴァーチャル渋谷」や「ヴァーチャル六本木」など1000件以上のイベントが開催されています。
◎サードバース(Thirdverse):ゲームコミュニティ:
「ブレイブ フロンティア」などのオンラインゲームの開発で有名な我らが株式会社gumiの創設者の國光宏尚(ひろなお)氏が株式会社gumiを退任して新たに立ち上げた会社がこの「サードバース(Thirdverse)」。
メタバース時代が到来したと感じた國光氏は、VRゲームに特化した開発会社を立ち上げることで、ゲームの質の向上だけでなく、コミュニケーションの多様性にも対応できるプラットフォームを作ろうと思ったそうです。ゲームをやりながら自分がキャラクターになりきって友達や対戦相手とコミュニケーションを取っていける、また、ゲーム内でさまざまなアイテムの創作がいま大流行していますが、そんなオリジナルアイテムを販売できるような「NFTマーケット」の創設なども予定しているということです。
◎インフィニットオフィス(Infinite Office):ビジネス:
Facebookが年内に公開を予定しているビジネスツールとしてのメタバースがこれ。これまではスマホでメールを読んだりパソコンで書類を作ったり、検索したり、リモートワークで会社の会議に参加したり、書斎や仕事場の机上で実務をこなしてきましたが、これらをすべて「VRヘッドマウントディスプレイ」でやってしまおうというのが「インフィニットオフィス(Infinite Office)」。すでにビジネスに必要なツールや書類をすべて仮想空間にセットしてしまい、場所にとらわれずに「VRヘッドマウントディスプレイ」とワイヤレスキーボードがあればどこでも仕事をこなすことができるというイメージ。スマートフォンが「VRヘッドマウントディスプレイ」に取って代わるという感じですね。Facebookは10月17日、このメタバース構築のために、欧州圏で1万人を雇用すると発表しています。
そのほかの注目企業では、教育分野では(ラブスター:Labster)が教育のメタバース化を実現させようとしていますし、医療現場では(プロキシマー:Proximer)が医療のメタバース化を推進、イスラエルでは「テタビ(TetaVi)」という企業がリアルタイムでVR表示させる3Dレンダリングエンジンの開発に本格的に乗り出しており、日本ではモバイルゲーム大手のグリーも2024年までにメタバース事業に100億円規模の事業投資をすると発表しています。
■メタバースの課題、、、
いま現在は少々ごつごつしたヘッドマウントディスプレイですが、次期に簡単なサングラスになり、果てはコンタクトレンズになってしまうかもしれません。そうなったときにどんな未来が待っているのか、想像してみてください。パーソナルコンピュータというものが、1980年代にモニターとキーボードという組み合わせで登場してから約40年。2000年にスマートフォンに変化してから約20年。それぞれをパーソナルコンピューティング、モバイルコンピューティングと進化してきたと考えると、今回の進化は「メタバースコンピューティング」ということになります。
ただ本格的な「メタバース」運用となるとまだまだ課題も山積しています。5Gの登場でリアルタイムでのデータ送受信が高速になる一方、その速さに対応した画像描画エンジンの開発もさらにしていかなければなりません。また同じプラットフォーム上でさまざまなコンテンツを扱うことになるので、互換性なども考えて行く必要があります。
特にこれまでそれぞれ別々のプラットフォーム上で運用されてきたゲームコンテンツが同じメタバース上のプラットフォームで統一されるようになったとき、以前のNFT(ノンファンジブルトークン)のときにも書いたように、ファイナルファンタジーで使ったり創作した武器やアイテムをウルティマオンラインでも使えるようにすることで、その武器やアイテムの価値が上げていくことが急務。ゲームエンターテインメントにおいて、こうしたアイテムや武器などの統一性は必須の課題になります。
また、当然のことながら創作の自由度を上げれば上げるほど著作権侵害の問題はついて回ります。有名キャラクターの画像を貼り付けたアイテムや洋服を着たキャラクターなどが出回らないようにしなければなりません。コミュニティですから現在もtwitterなどで問題視される「ヘイトクライム」や「無差別な誹謗中傷」などもどう取り締まっていくかも重要な課題となります。メタバースの社会性が強くなればなるほど現実に起きているさまざまな問題がメタバースの世界の中でも起きていくことになります。
■今後のメタバース、、、
現在メタバースに最も近い存在としてアメリカの「ブイアールチャット(VRChat)」というサービスがあります。VRChat内には無数の「ワールド」と呼ばれるバーチャル空間が用意されており、好きな場所で他の世界中からログインするユーザーとの交流を楽しむことができます。マインクラフトのように自分で創作したものや画像を世界に置くことができたり、簡単なプログラミングの知識があればさらに複雑なこともできます。物を売ったりして稼ぐこともできますし、会社によってはこのVRChat内でリモートワークを実施しているところもあるようです。
このままでいけば、仮に「VRヘッドセット」がさらに誰でも使うようになったり、またはサングラスのような簡単なものになったりして普及していけば、いま現在インスタグラムやツイッター、フェイスブックで行っている行為はこうした「メタバース」コミュニケーションに取って代わると思いませんか。
コンビニでキャッシュレスでものを購入し、重いものはアマゾンや楽天でデリバリー、お店に行かなくても様々なサイズや色合わせなどで洋服やファッションを試すこともでき、仕事も自宅でリモートの日々。こんな環境がもはやあたりまえの状況になってきましたが、これからはこんな生活がさらに進化していくかもしれません。「メタバース=超越した空間」に注目していきたいと思います。メタバースがなぜ注目されているかを書いた<前編>をご覧頂いていない方はぜひ御覧いただければ幸いです。
(出典)
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■cluster
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Thirdverse
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Infinite Office
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vrchat
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【cnetJapan】Facebook、メタバースを欧州で構築へ--5年で1万人を雇用(2021年10月19日)