東京2020オリンピック競技大会が閉幕し、日本は史上最多の金メダル27個を獲得(8/8:13時時点)。夢と感動を大いに授かり気分も一新すると思いきや、未だ新型コロナの感染拡大が続くことへの責任者探しは続いています。さまざまな意見はあると思いますが、記録として私見を残すとすれば、オリンピックがあろうがなかろうがこの感染拡大は必然であって、ワクチン接種の普及や重症化を防ぐための治療薬の開発が進まない限り、これまでどおりの人流縮小(外出自粛)だけではもはや対処できない状態だと感じています。感染者が拡大しようとも少しづつでも経済活動を元通りにしていきながら重症化リスクを減らす時期なのだと、、、。
このとき重要なのは経済活動を元通りにするのは国民だけでもできるかもしれませんが、重症化リスクを減らすのは国民だけでは絶対できないことだということ。なぜなら人流を減らせば重症化リスクが減るというわけではないからです。ここに一番関わっていることは感染者の取り扱い方に尽きるわけです。つまり人流を増やして経済活動を元通りにしても「感染者の取り扱い」さえ間違わなければ乗り切れる、これは台湾第2波をすぐに封じ込めた理由が「徹底した感染者隔離」だったことでも頷けます。このあとパラリンピックもありますが、こうした人流増加に目を向けるのではなく「感染者の取り扱い」にもっと目を向けてほしいものです。
さてcnetニュースウェブでは今回と次回(前編/後編)に渡っていま注目の「これからのデジタル著作管理としてのNFT:ノンファンジブルトークン」をお送りしたいと思います。こちらもさまざまな分野でデジタルトランスフォーメーション(DX)が推進される中、デジタル化されたコンテンツの取り扱いをどう捉えていけばいいのか、そんなところをまとめておきたいと思います。
■「NFT」とは何か、、、
「NFT」とはNon Fungible Token(ノン・ファンジブル・トークン)=代替不可能トークンと名付けられたデジタル時代の著作物管理技術の総称。トークンとは「証拠品」のような意味で、遊園地内のみで使われるコインなどをよく「トークン」と呼んでいます。つまりデジタルデータを「唯一無二」の証拠データにしてしまう技術なんです。
なぜデジタルデータを「唯一無二」にする必要があるかについては、これまでの著作物の管理について振り返る必要があります。著作権=コピーライツはモーツアルトやベートーベンなどが活躍した18世紀のクラシック全盛の時代に考え出されました。それはモーツアルトが書いた楽譜を書き写させてもらう権利、つまりコピーさせてもらう権利なので「コピーライツ」と名付けられました。その後印刷技術革命が起きてさらにこのコピーライツは重要な役割を担うことになります。
そこから約100年の時代が流れデジタル時代。ここで問題が発生。これまでは本物とコピーの違いは歴然としていました。調べれば本人が書いたものだと確認する方法がいろいろあったんです。ところが一番最初に作った創作物、例えばイラストなどが最初からデジタルで作ったものだったら、最初のデータとコピーとの見分けがつかなくなってしまうことになったわけです。それでもなんとかデジタルデータの著作物を保護していくために、透かしを入れたり一度印刷して紙にしたあとデジタルデータを削除するなどさまざまな方法で対処してきたんです。そんな課題を克服する方法がなにかないんだろうかと誰もが考えていたところに出てきたのがこの「NFT」という技術だったわけです。
■NFTの歴史:「ビットコインの技術」とは、、、
もともとNFT(ノン・ファンジブル・トークン)は、2017年にカナダのスタートアップ「AxiomZen(アクシオムゼン)」が公開した「CryptoKitties(クリプトキティ―)」という猫の育成ゲームに採用されたことから始まります。ポケモンカードのようなものなんですが、大きな違いは猫を配合して、売買したりすることができるゲームになっています。
このとき猫のデジタルカードをコピーされないようにする方法はないか考えました。そこでひらめいたのが猫のカード自体をビットコインなどの暗号資産にしてしまえば良いと思ったわけです。ビットコインなどの暗号通貨が価値を持って取引できるのは「ブロックチェーン」という技術を使ってそれぞれのデジタル通貨に誰がいつ何のために取引したかが刻み込まれているからですよね。さらにはその刻み込まれた情報が正しいかどうかを日々世界の人々(マイナー)に検証までされています。猫のカードをブロックチェーンに登録してしまえばコピーできなくなると考えたわけです。ブロックチェーンに登録して唯一無二のトークンにしてしまおうということで「NFT(ノン・ファンジブル・トークン)」という考え方が生まれたんです。(ちなみに元になるビットコインなどの暗号通貨は資産個別の識別情報を無視して現金や他の暗号通貨と交換できるのでFT)
それぞれの猫のデジタルカードはNFT(ノン・ファンジブル・トークン)と紐付いているので、世界に1つしかないことが証明されます。なのでかわいい猫であればあるほどみんながほしいので値段が上がる。記録によれば最も安価な仔猫の価格で0.03 ETH(イーサリアム:約12ドル=1300円)、人気の子猫は50ETH(イーサリアム:約2万3000ドル=約250万円)にもなるそうです。またその子猫を生み出した一番最初の祖先猫はなんと246ETH(約11万3000ドル=1250万円)にもなったそうです。ここからNFTが注目され、さまざまなデジタルデータに活用が始まったというわけです。
■突然話題になり始めたのはなぜか、、、
NFTが世を賑わせはじめたのは2021年(今年)の2月のことで、背景には昨年10月から続く「ビットコイン」などに暗号資産の高騰があると言われています。昨年10月には決済大手のPayPal(ペイパル)が暗号資産の採用を始めたことで「ビットコイン」がなんと一時は時価総額が以前の5倍にもなる160兆円まで高騰しました。
ここで登場したのがあのEVメーカー・テスラのCEOイーロンマスクさん。1月に彼がツイッターでビットコインを謳歌するような記載をしたことからさらに暗号通貨は高騰します。そこにTwitter創業者のジャック・ドーシーさんが3月、自分がTwitterに投稿した最初のツイートを「ビットコインの技術」を使ってオークションサイトに出品したのです。なんとこのツイートデータは約290万ドル(約3億2000万円)で落札されました。ここで使われた「ビットコインの技術」こそがNFT(ノン・ファンジブル・トークン)でした。このことがきっかけで「NFT」に突然注目が集まるようになったというわけです。
■NFTの作り方:マーケットプレイスとは、、、
ここでNFTの作り方を簡単に説明しておきましょう。まず公開して価値を高めたいデジタルデータを決めます。もちろん自分が作ったものであることが条件。公開する場所は世界にたくさんあるNFTマーケットプレイスの中から選びます。日本から使えるマーケットプレイスもすでに複数あります。よく取り上げられているのが「OpenSea(オープンシー)」や「Rarible(ラリブル」」などがあります。サイトを見るとどんなデジタルデータが取引されているか見ることができます。
デジタルデータをマーケットプレイスに登録するためには手数料が必要になります。そのために最低でも手数料分の暗号資産を持つための「ウォレット」を用意します。マーケットプレイスで流通している暗号資産を選ぶ必要があります。現在よく使われているのは「イーサリアム」になります。
設定ができたらデジタルデータをマーケットプレイスにアップロードします。どんなデータなのか、1回だけしか売らないのか何回まで売るのか、最低価格、オークション期間などを決めます。そして最後に「Minting(ミンティング)」という手続きをします。「Minting(ミンティング)」で初めて自分のデジタルデータに「唯一無二」であることを証明するNFT(ノン・ファンジブル・トークン)が課せられます。さてこのあとNFTの性質や効果的な分野、課題などについては(後編)でご紹介したいと思います。
(出典)
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■CryptoKitties
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■OpenSea
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■Rarible