変異株の急速な広がりで新型コロナウイルスの第4波が日本を襲い始めています。緊急事態宣言は解けたものの同様以上の縛りを感じる「まん延防止等重点措置」通称「マンボウ」が大阪府や兵庫県などに発令され、東京もついに基準値の一日500人を上回り始めた(4/07に555人)ことから外出への恐怖感が漂い始めています。
私も昨日から3日間東京ビックサイトで開催中の「AI・人工知能EXPO」のセミナーを予約して楽しみにしていましたが、ニュースなどで現地の様子などを見れば見るほど、ここで感染して今後の業務に支障が出て多くの方々に迷惑がかかると思ったら、こうした不特定多数が集合する場所には足を運ぶ気にはなれなくなっています。こうした世界的危機が続く中、逆にこういうときだからこそ急速な発展を遂げている分野に注目したいと思います。
中国ではなんと専門サイト「EV Sales」が発表した2020年の年間販売台数で上位独占を続けていた「テスラ」を抜いて2位に躍り出た会社が出現しました。それが上汽通用五菱自動車が昨年7月末に発売した電気自動車「宏光MINI EV(Wuling Hongguang Mini EV)」。わずか5ヶ月間のセールスにも関わらず約12万台(月間平均約2万4千台)も販売し、1位はテスラモデル3(約28万台)だったものの年間ベースだと「宏光MINI EV」が上回る可能性も出てきたと大騒ぎになっているようです。(2021年2月の月間販売台数でも1位テスラ(28千台)2位通用五菱(2万台)と拮抗しています)
その理由は何と言ってもその価格。全長約3メートル(2917mm)幅1.5メートル(1493mm)の超小型EVながら4人乗りで最安グレードで28,800元(約45万円)、高性能バッテリー搭載の最高グレードでも38,800元(約60万円)という破格の値段。果たして日本はこれに太刀打ちできるのでしょうか。
■テスラは価格下げ、サブスクモデルもスタート、、、
そんな中テスラモーターズ・ジャパンは2月17日、モデル3の価格を改定。シングルモーター、デュアルモーターモデルともに80万〜160万円程度の値下げでスタンダード・プラスで429万円、ロングレンジタイプで499万円とかなりのお手頃価格となりました。
テスラは昨年9月にもリチウムイオン電池の自社開発移行によって今後数年以内に25000ドル(約260万円)程度で電気自動車を提供できるようにすると断言。さらには現在の車に完全自動運転(FSD=フルセルフドライビング)モードを追加するのに、これまで1万ドル=約100万円かかるとなっていたものを、今年2021年の早い時期から、月額100ドル=約1万円のサブスクリプションモデルを採用するようだと地元専門サイトが報じました。イーロン・マスク氏もその報道が出る前から「もちろんだ。FSD機能のサブスクリプションを2021年初頭に開始するつもりだ」とツイートしていました。
ただテスラの完全自動運転(FSD=フルセルフドライビング)モードですが、昨年10月からβ版の提供が始まっているものの、自動直線走行や車線キープおよび変更、道路標識の認識による一時停止、自動駐車などの機能を組み合わせたもので、あくまでレベル2程度の自動運転モードで、そもそも100万円が少々お高めだったのではないかという声も出ているようです。
日本ではそれに負けじと、ホンダが昨年末世界に先駆けて一般向け自動車で自動運転レベル3の認可を取得したと発表。今年早々には世界初となる自動運転レベル3のホンダレジェンドハイブリッドEXもお披露目されました。ただ最新記事を読んでいると、レベル3が発揮されるのは高速道路における渋滞時のみに動作するなどいろいろ条件があるようで、中国や欧米のEV戦略に太刀打ちできる日本の姿勢が注目されます。
■アップルがEVを開発したら、、、
ネットショッピング大手のアマゾンは昨年末、買収した子会社のZoox(ゾックス)が自律走行ロボットタクシーを完成させたと発表。全長は約3.6mで、高さは2mで運転席がなくふたりづつ向かい合って座る箱型の乗り物となっているそうです。すでにサンフランシスコ、やラスベガスなどで走行テストも行っており、来年はアマゾンが自動運転タクシー業を始めるのではないかともっぱらの噂です。
そんな中、アップルも2024年に独自の電気自動運転車の生産を開始する計画だと通信会社が米国時間12月21日に報じました。アップルには以前から「Project Titan(チタン)」という名前の極秘プロジェクトがあって、一般市場向けの乗用車の開発をしていると噂されていました。その部署の責任者だった人物は一時テスラに移籍していて最近再びアップルに戻ったそうなんです。さらにアップルは最近既存の自動車を電気自動車に改造するキットを販売している新興企業の「Drive.ai(ドライブエーアイ)」の買収もし、なんと自動運転車に改造した「Lexus」を複数台極秘でシリコンバレーで走らせているところを目撃されているそうなんです。
日本ではご存知ソニーがEVのコンセプトモデル「VISION-S」を昨年発表し3月末には一般公開もされました。あくまでソニーは自社のイメージング/センシング技術や没入型360度オーディオ「360 Reality Audio」などを具現化するためのモデルとしての「VISION-S」ということですが、アップルやアマゾンがEV産業に参入し、中国の複数のIT企業もEVへの関心が高まっていることを見るとはっきりした態度を示してほしいものです。
■EVの充電スタンドに革新的な技術の兆し、、、
最後に日本が頑張っている話題も紹介。金沢工業大学の研究チームは昨年9月、マイクロ波を使ったワイヤレス(無線)の電力伝送で世界最高の電力変換効率を達成したと発表しました。つまり、充電などで電力供給を継続的に必要なときに、これまでは線につないだり、何かに固定しておく必要がありましたが、この無線による電力伝送が実現すると、どこにもつながらなくても永遠に電力を受給できるようになるというわけです。
今回の実験では、受電アンテナの形を変え、これまでの3倍の効率のダイオードを直接接続することでこれまで70%程度だった電力変換効率が92.8%まで上昇。これはインターネットに次ぐ第5次産業革命とも呼ばれており、これが本格的に開発が進めばEVが走行中にも充電できるようになるなど供給スタンドのあり方も激変する可能性があるというわけです。日本でも新型コロナを吹き飛ばす開発や発明に期待したいところです。
(出典)
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■EV Sales 2020年度EV販売ランキング
https://ev-sales.blogspot.com/2021/03/global-top-20-february-2021.html
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■上汽通用五菱自動車「宏光MINI EV」
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■テスラモーターズジャパン
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■金沢工業大学「マイクロ波(5.8GHz)を用いた無線電力伝送で世界最高の電力変換効率を達成。」20/09/23