現在世界の感染者は1000万人を超え、死者も50万人を超える状況。そんな中「ニューノーマル」な生活:(1)緊急を要しない外出は控える。(2)3密になりそうな場所に長時間いない、人としゃべらない。(3)マスク、手洗い、うがいを出るたびにする。これらを守りつつ(4)経済活動を正常に保つ。ある意味とんでもなくいびつな環境で我々は経済活動を余儀なくさせられていると思うのです。
でもこの環境のおかげで進化が促進されつつあるものもあります。ITデジタルの世界。今回はここ数ヶ月に何かと話題になった「新型コロナ対策」用ITデジタル系サービスをピックアップしたいとおもいます。ここからこれからの「ニューノーマル」の方向が見えてくるかも・・・。
■人工知能が新型コロナウイルスの治療薬を発見・・・
まずは、新型コロナウイルスの治療薬をAIで見つけ出す取り組みについて。世界各国でさまざまな研究が行われている中、イギリスのAIスタートアップBenevolentAI(ベネボレントAI)のピーター・リチャードソン博士は、今年の1月ころから当時中国で流行中だった新型ウイルスのことを聞きつけ、対抗できる貴重なステロイド(免疫抑制薬)情報ををさまざまな科学研究論文から丹念に集めていました。
このときリチャードソン博士は、新型ウイルスが細胞に侵入しようとするとき、遺伝子を利用して侵入することに注目。この遺伝子の侵入を妨害する抗免疫薬がないかを分子構造レベルでAIに解析させたところ、ある関節リウマチ薬を突き止めたんだそうです。この新型ウイルスこそ後の新型コロナウイルスだったんです。
リチャードソン博士は2月にはいくつかの研究論文を発表し、これに注目した世界的な製薬会社の「イーライリリー・アンド・カンパニー」は、自社で開発した免疫抑制薬の「バリシチニブ」を「オルミエント」がそれにあたると、早速米国立アレルギー感染症研究所と共同で大規模な臨床試験を4月より開始。6月にはその結果が出るということです。
イーライリリーの生体臨床医学部門の責任者・パトリック・ジョンソン氏によれば、AIがこの免疫抑制薬を見つけ出さない限り、誰も「バリシチニブ(baricitinib)=製品名オルミエント(olumiant)」が新型コロナウイルスの侵入を阻止できるという発想すらなかったということです。
現在では、AIによる抗ウイルス薬の発見は、日本のスタートアップであるFRONTEO(フロンテオ)ほかNECなど大手IT企業も鋭意実践中ということですが、AIにしか見えない世界で人類を救う日がついに目の前にあります。
■喉に貼るだけでコロナを追跡できるウェアラブル端末・・・
新型コロナウイルス感染症は、発症したかどうかを見極めるのが難しいわけですが、米ノースウエスタン大学の研究者らは、新型コロナウイルスのの兆候や症状を追跡し、進行を監視するためのウエアラブル端末を開発したと発表しました。
これは切手大の端末を喉に貼っておくだけで、毎日24時間せきの激しさや呼吸音、心拍数、熱などを常時計測・分析し、データは最終的に医療スタッフに送られます。このデータを自動分析してくれるため、病院側も発症しているかどうかをすぐに確認できるというわけです。
現在実地テストが行われており、実用化すれば病気の早期発見や病院崩壊を防ぐのに大きな効果をもたらすと期待されます。ノースウエスタン大のジョン・ロジャーズ医師によれば「この端末は聴診器のようなものです、マイクじゃありません。」つまり言葉で聞くよりもずっと確かなデータで判断できるようになるというわけです。日本でもこれからは病院崩壊を防ぐことが第1となるので、こうしたウエアラブル端末が採用されることは大変良いことだと思います。
■スマートリングで分かる!コロナ無症状感染者を早期発見・・・
ウエストバージニア大学の研究チームが新型コロナウイルス感染の兆候をいち早く警告するシステムを開発したと発表しました。
開発したのは身に付けるウエアラブル端末とそのシステムで、ウエアラブル端末は「指輪」の形をしています。「Oura Ring(オーラリング)」と名付けられたスマートリングを装着することで、本体に内蔵されたセンサーで体温、睡眠パターン、活動量、心拍数など多数のバイオメトリクスデータがリアルタイムでモニターすることができます。
ボランティアによるバイオデータと専門スタッフの情報をもとに、自覚症状が出る3日前からウイルス感染を予測するAIモデルを開発したことで、スマートリングを指にはめているだけで感染症状が出る3日前には感染者の治療を始められるうえに、感染が拡大する危険な期間に感染者を隔離することもできることになります。開発はまだ初期段階だといいますが、すでに精度は90%以上に達しているとのことです。
■ソーシャルディスタンスを保ちながらコミュニケーションが取れるスマートマスク・・・
スマートリングがあるなら、本命は「スマートマスク」でしょう。新型コロナウイルス感染症の拡大で誰もがマスクを余儀なくされていると思いますが、ソーシャルディスタンスを保たないと行けない上にマスクをして話すので、おとなりの人に喋った内容がなかなか伝わりにくかったり、何度も言い直されて感染するのではないかと心配した経験がありませんか。
そんなときにこのスマートマスク「c-mask」があれば、喋った内容を自動的に文字情報に変換して、お相手のスマートフォンに送信してくれるんです。
開発したのはロボットの開発を行う日本のベンチャー企業「ドーナッツ・ロボティクス」。マスクの中に音声を認識するマイクが搭載されていて、スマートフォンにBluetoothで送るしくみになっているということです。なんと8カ国語への自動翻訳機能も搭載予定だそうです。
これがあれば大声で叫んで飛沫を飛ばすこともなくなるので、お友達同士だけでなく、スーパーマーケットでの店員さんとの会話や、お医者さんで診察を受けるときにも感染リスクを防げますね。「ドーナッツ ロボティクス」の小野泰助(おのたいすけ)代表によれば、「c-maskでマスクの再定義をしてみたい」と話しています。
スマートマスク「c-mask」は6月からクラウドファンディングで予約受付を開始中で、早ければ今年の秋には販売を始めたいということです。値段は税抜3980円の予定。
なんとしてもこの「ニューノーマル」を乗り切って安心安全な社会生活を少しでも早く取り戻していきたいですね。
(出典)
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■benevolentai社のbaricitinibに関する発表資料
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■ノースウエスタン大学発表資料
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■Oura Ring(オーラリング)
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■c-mask(シーマスク)