■ニューノーマルを継続することが我々に課せられた、、、
6月2日に発令された「東京アラート」もようやく12日には解除され、県をまたぐ移動についても全面解禁となり、新型コロナウイルス感染拡大を抑えるための行動の制限は基本的になにもなくなりました。前回も書きましたがそもそも「東京アラート」は「ニューノーマルを守れているか自問自答しよう」という意味だったので、それが解除されたということは、あとは自己責任で「ニューノーマル」を守り続けてくださいね、ただし経済活動は以前のままに戻してねというわけです。
この「ニューノーマル」ですが、世界が準備を進めている「スマートシティ」とコンセプトがかなり似通っています。どうせ「ニューノーマル」を維持しなければならないなら、この際悪い方向に考えないでもっと前向きに考えてみることにしましょう。
「スマートシティ」を語るためにはまず、日々の我々の生活空間である「街(シティ)」について考えてみたいと思います。そもそも「街」とは何なんでしょうか。漢字で書くと「多くの住宅が密集している地域をあらわす=町」(たんぼとくいを打ち込んだ区画をあらわす丁=英語でタウン)と、「住宅地域も含めた商店などが立ち並ぶ住民たちの生活圏をあらわす=街」(人が行き交う意味のぎょうにんべんが両側についていて真ん中が土2つで道を表している=英語でシティ)がありますが、今回は後者の「街(シティ)」の未来形の話です。
■街(シティ)とはなにか、、、
実は「街」の成り立ちの歴史をひもとくと、我々と「街」との関わりがいろいろ見えてきます。歴史で最も古い「街」の誕生は、紀元前3500年頃から始まった世界最古の都市文明と言われる「メソポタミア文明」で始まります。この文明が生まれたチグリス川とユーフラテス川が交差する地域にそびえたつ神殿「ジグラット」を中心とした街「ウル」が最古の街。
この時代の「街」は神様とコミュニケーションを取るための場所でした。東京都市大学の未来都市研究機構によればこの「ウル」の時代を「都市1.0」(都市の始まり)と定義しています。
ここから神様とコンタクトする人々の代表者として「王様」が現れます。「街」は「王様とのコミュニケーションの場」となり「都市2.0」の時代へと変化していきます。そして「貨幣」が生まれ、記録するための「文字」や「書物」が普及するようになったことで「街」は一気に「商業コミュニケーションの場」=「都市3.0」となります。これが18世紀〜19世紀にかけて石炭などによるいわゆる「産業革命」が起き巨大な市場が誕生、これまでの個人中心の商売だけでは成り立たなくなり個人が共同で投資する「株式会社」が誕生します。これによって都市は「会社同士のコミュニケーションの場」=「都市4.0」に進化していきました。今日の「街」は「都市4.0」の末期に差し掛かっているというわけです。
■スマートシティとは、、、
18世紀〜19世紀の「産業革命」によってもたらされた会社同士のコミュニケーションの場としての「都市4.0」ですが、これがいよいよ「5.0」にアップしようとしている・・・それは2000年過ぎから始まったインターネットによるコミュニケーションの変化が大きく影響しています。
インターネットやスマートフォンの普及によって、まずどこにいても連絡が取れるようになってきました。時間や場所を気にせずコミュニケーションできるのがあたりまえになりました。そしてお店に出向ことなく食べ物や本、洋服などがいつでも買えるようになりました。さらには映画やアニメ、舞台ショーなども手元のスマホやパソコンで見ることができます。公共料金の支払いなどもオンラインで済みます。
仕事においても「リモートワーク」がどんどん普及を始めています。つまり「街」で行われていたさまざまなコミュニケーションがほとんどインターネット(ネットワーク)上で済ませるようになってきている、まさに今回の「新型コロナ禍」でもなんとか持ちこたえた「街」。なぜそれが続けられたかと言えば、それは街に出なくても企業同士のコミュニケーションはスマートフォンやインターネットで足りたからにほかなりません。
ではこれからの「街」にはどんな役割があるんでしょうか。「街」は必要なくなってしまうのでしょうか。
■日本のスマートシティへの取り組み、、、
日本でスマートシティへの取り組みが始まったのは2000年代の初めころからで、当時の内閣府特命担当大臣の片山さつき氏は当時「第4次産業革命(インターネット/ビッグデータ革命)が世界的に進展する中で、データこそが次の時代の成長を生むエンジンであり、これを原動力としたSociety 5.0=スーパーシティの実現を、国際連携のもとでいまこそしっかりと支えていかなければなりません」と語っています。
同様にこのころからアメリカ、ヨーロッパ、中国など世界各国でも情報産業を中心とした都市のスマート化計画が次々と始まっています。とりわけ当時インドは、日本がマイナンバーとか言っている時代に、以前もご紹介したことある国民12億人の生体認証をデジタル化したAadhaar(アドハー)と呼ばれるデジタルIDへの取り組みなどが発表されていました。
こうした準備期間を経て、ついにスマートシティ実現の決定打がくだされます。それが高速大容量の第5世代(5G)移動通信システムのスタートです。2019年4月に韓国とアメリカが世界に先駆けてサービススタート。移動通信会社の世界団体GSMAのレポートによれば、2020年1月時点で世界24市場/46事業者が5Gサービスの提供を開始しているそうです。日本も2020年3月25日からドコモ、au、ソフトバンクが相次いで5Gサービスをスタートしました。
スマートシティを後押しするのがこの5G=第5世代移動通信サービスの実現です。この5Gサービスが普及することによってこれまでの生活や街が劇的変化します。
■5Gによる「街」の驚異的な変化、、、
5G(第5世代移動通信サービス)は現在の4Gとまったく違った快適生活環境をつくることができる特徴が3つあります。1つは「高速・大容量」そして「低遅延」「多接続」。世の中のほとんどのモノやコトがインターネットで常時つながって、それも遅れることなくリアルタイムで動作できる世界がやってきたというわけです。
あらゆる生活インフラがインターネットに繋がり、クラウドで管理することが可能になるということは、ネットに置き換えて便利なものはどんどん置き換えられて(デジタルトランスフォーメーション=DX)、こうした環境を基盤にした「街=究極のスマートシティ」を実現させようという動きが活発になるということです。これをアーバンデジタルトランスフォーメーション=UDXとも言い、まさに「コロナ禍」が拍車をかけたリモートワーク=在宅勤務はそのイントロとも言えるものではないでしょうか。
ただ東京都市大学の未来都市研究機構の「都市5.0」ではそこに大きな落とし穴があると警鐘を鳴らしています。それは置き換えを誤ると「機械に支配された街=機械化人間社会」が出来てしまうというのです。目指さねばならないのは「個人個人が生き生きとコミュニケーションできる街の実現」であって「AIや機械に支配された社会」にしてはいけない、これまでの「街」の役割が変わる、変わらなければならないというわけです。
■個人を共有する時代へ、、、
神様と情報を共有する場としての「街」の時代(都市1.0)から王様との情報共有(都市2.0)、商売での情報共有(都市3.0)、そして企業との情報共有する「街」(都市4.0)へと「街」の役割は日々進化してきました。そしていままさに「街」は個人を情報共有する場(都市5.0)へ進化しようとしています。それも今回の新型コロナウイルス感染拡大による行動の自粛がさらに拍車をかけたのではないでしょうか。
一人ひとりがスマートフォンを持つようになったいま、我々一人一人は街を動かす「センサー」なんです。まさにこの個人情報をどう共有するかが、我々に幸せをもたらす「スマートシティ」にできるのか、「ニューノーマル」時代をポジティブに歩むことができるのか、、、につながっていると思うのです。
参考リンク
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東京都市大学 総合研究所 未来都市研究機構