■リチウムイオン電池がノーベル賞なら・・・
先日はあのリチウムイオン電池の発明に貢献された旭化成株式会社名誉フェローの吉野彰さんのノーベル化学賞受賞が決まって喜びに沸きましたが、そんなリチウムイオン電池のおかげで実用化が進んだものといえば携帯電話がありますね。そのほか電気自動車(EV)にもリチウムイオン電池はなくてはならないものになっています。そしてさまざまな分野で実用化が進んでいるのがロボットです。
なんと東北大学のロボット研究室では、なんと「食べられるロボット」の開発を進めているそうです。
「食べられるロボット」を研究開発されているのは、縦横斜め自由自在に移動できるクローラーロボットの開発第一人者であり、日本のロボット界のライト兄弟としても有名な多田隈(ただくま)兄弟の弟さんで東北大学の多田隈建二郎准教授です。
■東日本大震災で体験した人命救助の難しさ・・・
多田隈建二郎准教授は、日本の伝統的な食品加工のノウハウを駆使して、人間が食べられる素材でロボットを作る研究をしているそうです。これは病気や災害時に被害にあって、飲み込むことすらできなくなった人のために、自ら動いて口の中から胃に入って栄養補給をしてくれるロボットなんだそうです。
多田隈准教授は、2011年の東日本大震災がきっかけで、災害現場では救助隊員が助け出すまでの間、被害者にさまざまな形で栄養補給をしなければならないことを実感したそうです。その際こうした状況では、栄養注射や点滴はなかなか使うことが出来ないうえに、気絶していて口から栄養を飲み込めなかったり、または飲み込みもままならないくらい衰弱しているんだそうです。そんなときに食べられるロボットがあれば、口に入れてあげるだけでロボットが自分自身で胃まで移動して栄養になってくれるのではないかと考えていたそうなんです。
ヒントはたまたま参加された座談会で参加された研究者の方からの「グミを使ったアクチュエーター」が出来ないかという発言からだそうです。アクチュエーターとは、入力されたエネルギーもしくはコンピュータが出力した電気信号を、物理的運動に変換する、機械・電気回路を構成する機械要素のことだそうです。つまり、グミのようなやわらかい物質でも電気信号を物理運動に変換させる装置が作れるかもしれないというインスピレーションが湧いたというわけです。
■ソフトロボット分野はまさに革命の震源地・・・
ちなみに口の中に入れられたり障害者に優しく触れることが出来るような「ソフトロボット」という分野は、現在全世界から注目されており、ロボット業界に革新的な貢献をもたらすかもしれないと言われているそうです。これまではロボットといえば鉄やプラスティックなどの壊れにくい素材で組み立てられて来たわけですが、これがやわらかくなることで一気に利用範囲が広がることからやりがいのある分野ということでもあるそうです。
ソフトロボットとしては、以前に2016年ハーバード大学で、生物の筋肉を使って、光を浴びせると魚のエイのように体を波打たせて泳ぐ小型のロボットを開発したことがありました。これはラットの心筋細胞に遺伝子操作を加えて光を当てると収縮するようにしたことで、この心筋細胞に光を当てるたびにヒレを波打たせてソフトロボットが水中を泳がせることに成功したというわけです。
多田隈准教授が食べられる柔軟ロボットに取り組み始めたのは2016年の2月ころからとのこと。多田隈准教授のコア技術は前後左右斜めに動ける全方向移動機構だそうで、この独自のトーラス構造を活用することで柔らかいロボットも自身で移動することを可能にできると考えたそうです。
■サイエンスフィクションが現実となる時代・・・
現在、羊の腸に高野豆腐を小さく刻んだものを詰めたソーセージ型ロボットで実験中。5年以内に実用化を目指しているということです。最近のこれまで経験したことのないような自然災害が頻発している中、少しでも早くこうしたロボットが実用化されることを期待します。