■ドローンビジネスに注目・・・
私が解説を担当しているラジオ番組「金つぶ」(毎週金曜19時〜20時50分:BayFM78MHz)で「ドローン」について最初に特集したのは、もう3年前の2016年11月4日でした。
そのころは、2015年4月に首相官邸屋上に発煙筒やメッセージがついた「自立式無人航空機=ドローン」が墜落して注目されるようになり、その後2015年末には航空法が改正されて、アマゾンの配達に「ドローン」を使ったテストが始まったりして、これから目が離せなくなると、ドローンビジネスの始まりを予期していたんです。
その予想は見事的中し、いまやドローンの利用範囲は、通販の配達どころか農業にも使われるようになったり、ドローンの教習所が出来たり、テレビ映像ではほぼ毎日ドローン映像が見られるようになり、はたまた人間が乗れるドローンまで登場するようになってきました。この進化はAI人工知能や自動運転Maasなどと並んですさまじい状況にあります。そしていよいよ来年2020年は東京オリンピック・パラリンピックも開催され、こうしたIT技術もさらなる進化する年を迎えます。
これから「ドローン」はどんな進化を遂げるのか、さらなる我々の生活とのどんな接点が見えてくるのか、今回11月にラジオで紹介したものをまとめてお伝えします。
■ドローンの活用が期待される分野・・・
3年前には、アマゾンなどが集配所から自宅までのラストワンマイルをドローンに置き換えて人材不足を解消させようとしているくらいでしたが、いまやドローンはさまざまな分野で期待されています。インプレス研究所の2018年度の発表によれば、2016年には350億円程度の市場規模だった国内ドローンビジネス市場も、昨年2018年には約3倍の930億円となり、これが来年2020年には1000億円を超え、その4年後の2024年にはその5倍の5000億円にもなると予想されています。
まずは「撮影分野」。風景映像はもとより、サッカーやラグビーなどさまざまなスポーツの実況映像にどんどん使われ始めています。
この撮影を支えるための「ドローンスクール分野」というのも急速に増えています。記録によれば5月現在、一般社団法人日本UAS産業振興協議会(JUIDA)が認定したドローンスクールは195校、一般社団法人ドローン操縦士協会(DPA)が認定したスクールは35校ということで合計230校が存在、団体未所属のスクールも含めると日本にはすでに約300校のドローンスクールがあるということです。ここでドローンの操縦を訓練することで民間資格が取得でき、今後公的な資格となっていくそうです。
つづいてこれまでどおり「流通分野」や「農業分野」はもちろんさらなる導入が続いていますが、現在注目されているのは「防犯分野」。ここでは警備大手のセコムが侵入者を感知すると自動でドローンが起動して侵入者を撮影、追跡してくれるサービスを開始しているそうです。ほかの会社ではビル内のオフィス巡回をドローンで行うサービスなども始まっているようです。
そしてもう一つ注目されているのが「建設分野」と「災害」に対応するドローンの活用。建築物の測量や工事の進捗管理をドローンで正確に撮影していくことはもはや当たり前になりつつあるそうです。そして同様に、何らかの災害が起きたときの状況把握や測量にもとづくシミュレーション、そして救助にもドローンが大活躍を始めているんです。
さらにここ数年で急速に発展し始めたのがドローンの仕組みを応用した「空飛ぶクルマ分野」にも注目が集まっています。先日もお伝えしましたが、記憶に新しいもので、人が乗れるくらいの大きさのドローンだと、ドバイ警察が2020年に「空飛ぶバイク」を導入すると発表していることです。これはロシアのHoversurfが製造し、ホームページによれば時速70kmで25分間の飛行が可能。電動垂直離着陸機(eVTOL)タイプの1人乗りで上空5メートルの高さまで飛行ができる。1台15万ドル(約1700万円)だそうです。
さらにはUberが2023年に向けて「ドローンタクシー」の実用化をすすめているという話題もちょくちょく我々の耳に入ってきますね。こちらもホームページによれば、車内には大人4人が座れるようになっていて、手荷物やスーツケースを置くスペースもあるなどヘリコプターさながらの乗り物になっています。もちろん日本でも今年(2019年)の8月にNECが「空飛ぶクルマ」の実証実験を公開しました。
今年の8月にお披露目されたNECの「空飛ぶクルマ」では、全長約3.9メートル、幅3.7メートル、高さ1.3メートルの中型ドローンで、プロペラが四方に4基付いているもの。今回は無人の自動飛行だったそうですが、将来的には人が乗って地上から空までをシームレスにつなぐ、次世代の移動環境の実現を目指したいということです。
そしてこうしたドローンの活用になくてはならないのが「5G」第5世代移動通信システムになります。現在「4G」ですが、日本でも来年から本格的に「5G」の運用が開始されます。「5G」通信を活用することで、ドローンによる4K映像のリアルタイム配信など、ドローンとの大量データのやりとりや細かな操作が可能となっていくんです。
■ドローンビジネスのいま・・・
実は私の大学の後輩で、私と同じく放送業界で約30年つとめたのちに、2017年に産業用ドローンの開発、設計から製造、販売、保守も手がける「株式会社エンルート」というベンチャーを立ち上げ、いまではドローンスクールも運営されるなど幅広くドローンビジネスに携わっておられる瀧川正靖社長にドローンの魅力についていくつかお聞きしました。
まず、放送業界におられたところから「ドローンビジネス」をやってみようと思ったきっかけについてお聞きしたところ、瀧川さんは、以前、スカパーJSATという衛星通信と衛星放送を手がける会社で働いていて、そこの親しい幹部の方から久しぶりにランチを誘われてレタス炒飯を食べながら旧交を温めていたところ、「ドローン会社に出資したのでやってみないか?」と誘わ、そのときドローンは大変な成長産業だと直感し、新しい挑戦は好きなので思い切ってやってみたということでした。
今や世界中がドローンに注目をしてさまざまなビジネスを始める中、「ドローン」のどこにそんなに魅力を感じるのかについては、自由に空を飛べる、そしてヘリコプターや航空機が何億円もするのに対して、産業用でも数百万円のドローンの活用範囲が広いこと、先進諸国では人手不足や危険な仕事を少なくしたいという要因があり、魅力的だと思ったそうです。そして自動化、自律化という効率が良いドローンがドンドン出てくる可能性が高いところも注目しているとのこと。
そんな「エンルート」に求められているドローンとはどんなものが多いのかを聞いたところ、
1)自律的に衝突回避しながら自動航行できるドローン
2)GPSが受信できないところで飛べるドローン、
3)より長く遠くへ飛べるドローン、
4)より安全に飛べるドローン、
5)より大きい荷物を運べるドローン、
6)消防などで使いやすい耐火ドローン、
といった答えが返ってきました。
実際「エンルート」は「働くドローン®️」を開発製造するメーカーであり、娯楽用、個人用は手がけていません。街の電気量販店で売っている小型の空撮ドローンを自転車やバイクに例えると「エンルート」はクレーン車やトラクターを手がけている、そんな喩えになるそうです。大きさはプロペラの軸から軸の距離で70cmから150cm、そしてプロペラが20cm前後ありますので、1mから2mある大きなものです。重さも10kgから25kgあるそうです。
ちなみに「エンルート」の社員ですが、平均年齢は30代後半、男女比は75%、25%ぐらいだそうで、前職は理系技術系が多いですが、CAやソムリエ、自衛官、商社マンのかたなど色々といらっしゃるそうです。
みなさん、ドローンの自由に空を飛べる、そしてヘリコプターや航空機が何億円もするのに対して、産業用でも数百万円のドローンの活用範囲が広いこと、そして自動化、自律化という効率の良いドローンがドンドン出てくる可能性が高いことなどに魅力を感じて集まってきた方たちだそうです。
現在「エンルート」で開発中のオリジナルドローンとしては、消防で使いやすい耐火ドローンや、新型農薬散布ドローン、新型産業用ドローンなどに力を入れているそうです。そんなドローンの設計、開発する上で意識していることとしては「安全性」。理想は安全で簡単に使える持ち運びやすいドローンだそうです。
そんな状況の中、日本のドローン技術はかなり中国や欧州に遅れを取っていますが、世界でトップクラスになれるのかとお聞きしたところ、ホビー用では中国やアメリカ、フランスなどが先行していますが、産業用ドローンは始まったばかりの市場、日本はこれから「産業用ドローン」でトップクラスを狙っていけるとおっしゃっていました。
■これからのドローンビジネス・・・
ドローンビジネスの規模は年々増え続け、来年2020年には1000億円を超え、2024年に日本の産業用ドローン市場全体では5000億円を超えるとの調査結果があります。
ホビー用ドローンから始まって、産業用ドローン、そして空飛ぶクルマに至るまで、2020年の東京オリンピックをきっかけに、1964年の東京オリンピックから始まった日本のモータリゼーションのように、ドローンが大ブームを巻き起こすのか、起こせるのか、期待してみたいところです。
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■株式会社エンルート
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■インプレス発行 ドローンビジネス調査報告書2019