■2020年から小学校でプログラミング教育が始まる・・・
いよいよ来年2020年から小学校でもいわゆる「プログラミング教育」が必修科目の一つとして導入が始まることを皆さんご存知でしょうか。これは、2020年に文部科学省が定める教育課程を各学校で編成する際の基準である「小学校の学習指導要領」が改定されることを機に、プログラミングの体験を含んだ「情報活用教育の充実」という項目が明記されたからです。
実はこうした「プログラミング教育」が小学校でも義務教育化されると言う話題をききつけて、それなら私の経験も役に立つかもしれないと、自らこどものためのプログラミング教室を立ち上げて、2015年からこどものプログラミング教育の現場に携わってきました。
今回改定される「新学習指導要領」について、文科省のホームページから抜粋すると、国としてどう進めていこうとしているかが見えてきます。まず「今回の改定のポイント」の項目では「外国語教育の充実」や「道徳教育の充実」などと並んで「情報活用能力(プログラミング教育)の充実」が入っていることがはっきり確認できます。つまり、これからの子どもたちは国語や算数や理科・社会などと同様に「情報活用能力」も強化していくということになったわけです。
■2020年から小学校でなにが始まるのか・・・
いろいろわかってきた分、問題点も見えてきました。生涯のライフワークとしてのプログラミング教育の現場に携わっていきたいと考えている私としては、この4年間の教育現場の経験などもご紹介しながら、具体化された小学校での「プログラミング教育」の義務教育化は何のためにあるのか、良い方向に向くのか、これはだめなのか、このタイミングで思うところをまとめておきたいと思います。前編と後編に分けてご紹介したいと思います。今回は前編です。
ちなみに「情報活用能力の充実」については、学習指導要領の改定に合わせて、2020年:来年から小学校で「プログラミング教育」が必修化されますが、これに続いて2021年には中学校の学習指導要領、2022年には高校の学習指導要領が順次改定されるのを期に、中学や高校でも強化されて行くことが決まっています。
なぜこうしたプログラミングの体験を含んだ「情報活用教育の充実」が必要と考えられるようになったのか、これも、昨年11月に発表された「小学校プログラミング教育の手引(第二版)」を読むとその理由がわかります。抜粋すると、
「今日、人々のあらゆる活動において、コンピュータなどの情報機器そのものやそれによってもたらされる情報を適切に選択・活用して問題を解決していくことが不可欠になっています」「コンピュータをより適切、効果的に活用していくためには、その仕組みを知ることが重要です」「もはや魔法の箱ではありません」
つまり「コンピュータを理解し上手に活用していく力が極めて重要になっている」ことから小・中・高等学校を通じてプログラミング教育を充実させることが必須であるということなんです。
まったくもって同感だったので、誰でもコンピュータプログラミングができるようになる時代がついに来たかと楽しみにしていたのですが、先日、都内の学校サポートセンターに来年の新教科書が閲覧できるようになっているというので、プログラミング教育のための教科書も並んでいると思って伺ってみたんです。すると残念ながらプログラミングや情報に関する教科書(テキスト)はありませんでした。
そのあと区の教育課に問い合わせたところ、2020年の学習指導要領の改定では、あくまで「情報活用教育の充実」が必修になったもので、プログラミングを誰もが始めるというわけではないことがわかりました。また全国共通のプログラミング教育用の教科書があるわけではなく、学習指導要領に従ってそれぞれの教育現場にあった教科書や学習方法を現場の先生たちが模索していくということでした。
つまり今回の改定ではあくまで「情報活用教育の充実」を目標に、それぞれの学校でまずは、国語や算数や理科などの授業に情報技術=いわゆるパソコンでの検索とか簡単な計算をパソコンにやらせてみるなどの体験から始めようというわけなんです。
■プログラミングを子供のころから学ぶ意味・・・
私はいまから4年前(2015年)に2020年にプログラミングが義務教育化されると聞いて、これはめちゃくちゃ良いことだと思いました。
私が始めたのは小学校から高校1年くらいまでの6歳から15歳の男女のためのプログラミングを教える教室です。どうしてこの子らに教えようと思ったかというと、世間では高校生以上の人を対象にしたプログラミングはあってもこの歳の人のためのプログラミング教室が2015年ころにはなかったからです。またプログラミングを習うには小さければ小さいほど考え方の枠がないので良いとおもいました。
実際親子で来る方にもプログラミングを教えたところ、小学生の子供のほうが親よりも問題を解くのが早かったことがあります。ちなみにどんな問題かと言うと「文章を論理的に理解できるか」みたいなもの。例えば、最初にこのプログラムで作るものの説明がストーリー仕立てで書いてあります。どんなキャラクターが出てくるかとかどんな敵が出てくるか、そこで何が起きるのかなどの物語が理解できれば、頭の中にこの物語のプログラムが組み立てられることになります。
後半は前半で語られた主人公や起きることなどについて問があります。誰が主人公ですかとか>どんな敵が出てきますかとか・・・ある意味前半の文章がしっかり頭にまとまっていれば、簡単に答えられるものばかりです。
それを子供たちは何のてらいもなくすぐに答えられることが多いです。ところが大人はいろいろ裏があるんじゃないかとかすぐには答えません。子供は小さければ小さいほど答えるのが早いです。
こういったことを繰り返していくことで、ストーリーを論理的に組み立て直す力をつけていくのです。このやりかたがヒットしました。この3年間でのべ1000人近くの小中学生が論理的な能力を高め、考えたことをプログラムに置き換えられるようになっていったのです。
一番面白かったのは、教室が始まって半年がすぎたころ、新しく入ってきた子供が質問などがわからないときに、講師の先生よりも先に同年代のこどもに一緒になって教えてくれるようになったことです。子供はすぐに自分のわかったことはみんなに教えてくれる。これがさらに子供の能力を高めると実感しました。現在、この教材は全国の多くのプログラミング教育を手掛ける方々にセット販売を開始しています。もしご興味ある方はご一報を。
こうした経験から「プログラミング教育」は、通常の教科である国語の「読解力」や算数の「論理力」、理科の「推理力」そしてプログラミング言語で使う「英語力」など「総合教育」としての重要な役割を果たすことを実感してきました。
つまり私の経験からすると、パソコンで検索したり簡単な計算をさせたりするだけではなく、パソコンを使って身近なものを作ってみる、たとえば住所録を作ってみるとか目覚まし時計を作ってみるとか、こうした論理的なことをパソコン上で再現してみることこそ「情報技術(IT=プログラミング)へ一歩踏み出す」ことになると思うんです。
今回の学習指導要領の改定による「プログラミングの体験を含んだ情報活用教育の充実」については、少々物足りなさを感じましたが、であるなら、民間の教育現場や家庭も一緒になって「情報技術へのふれあい」を推進していくことが大切だと思い始めました。(後半に続く)