■日本のキャッシュレス化は世界で比べても早いのに・・・
私が企画とコメンテーターを務めているBayFMの「金つぶ」というラジオ番組では、約1年前の2018年3月16日に「キャッシュレス決済」について特集をしました。
そのときは、中国からの観光客の増加で、中国で普及しているスマホ決済の「アリペイ(Alipay)」が、日本でも使えるようになって来たことから、我々日本人もスマホ決済を使うようになってくるのではないかという話から始まりました。
そして当時、海外からの上陸組として「ApplePay」や「AndroidPay(GooglePay)」、日本独自のサービスとしては「楽天Pay」や「LinePay」などのスマホ決済が始まったところで、まだセキュリティの面などに不安は残るけれど、普及することは間違いなさそうとも紹介していました。
ただこうした購買におけるキャッシュレスサービスは、世界の中でもけっこう早くから導入されていて、日本ではこの10年で利用者も2倍にはなっているものの、利用率としては消費全体の20%を越えたばかり。そのほとんどはアマゾンなどのオンラインショッピングが一般化したことによる「クレジットカードの利用率」の増加が原因でした。つまりスマホや電子マネーなどによる決済はまだまだ雲行きが怪しいという感じだったんです。
ところがこの半年で劇的な変化が起きました。きっかけは昨年末の「PayPay」による「100億円キャンペーン」です。「PayPay」の「100億円キャッシュバック」は予定期間を大幅に短縮されて、わずか10日間で終わってしまうなど大騒ぎにもなりましたが「スマホ決済」の存在感を強烈に印象づけました。その後の新規参入も目まぐるしい状況。そこで改めて「スマホ決済」を中心とした日本のキャッシュレス化について現状をまとめて見たいと思います。
■1年前はキャッシュレス、いまやスマホ決済・・・
「キャッシュレス化」に関しては、2016年の調査で諸外国と比較しても、韓国はすでに90%を越え、次いでイギリス70%、オーストラリア60%と続き、アメリカやフランスでも40%を越えています。また中国はクレジットカードの普及では出遅れたものの、過去3ヶ月にスマホ決済した人がなんとスマホ利用者の98%を占めたということで、一気にキャッシュレス化が浸透してしまいました。
ちなみに日本では、今年の1月初旬にある調査会社が20歳~69歳のスマホを所有する男女887人を対象に調査した「スマホ決済の利用率」を見てみると、以前はスマホ利用者の5%未満だったのが、なんと21%(887人中188人)にまで伸びています。
現在利用しているスマホ決済サービスの順位としても、1位は「楽天Pay」の9.4%(利用したことあるも含めて13%)でしたが、2位に「PayPay」は8.1%(12.4%)が急浮上。3位は「LinePay」7.9%(9.6%)という結果だったそうです。
スマホ利用者の98%がスマホ決済を使っているという中国にはまだまだ及びませんが、あれで一気にスマホ決済への関心が深まったことは確かで、その後、昨年春から徐々に増えてきていた「各種スマホ決済サービス」も動きが活発になり始めています。
だとするならこれらの「スマホ決済」の中から、これからも広く使われるようになる「便利」で「安心・安全」なサービスはどれなのか、そして「スマホ決済」はこれからどうなっていくのでしょうか。
■キャッシュレス決済の基礎知識「クレカ=磁気カード」<「非接触=スマホ決済」
改めてスマホ決済も含めたいわゆる「キャッスレス決済」についてどんなものがあるか考えてみたいと思います。それには、お金の「支払い手段」と「決済方法」の組み合わせを考えてみれば良いでしょう。
まず「支払手段」ですが、一部のクレジットカードで使われている「磁気カード」、そしてキャッシュカードなどの「接触ICカード」、さらにSUICAなどの「非接触ICカード」、そしてスマホ決済で使われる「バーコード」と「QRコード」の5つがあります。
そして「決済方法」は、SUICAなどにチャージする「前払い」とデビッドカードの「即時払い」、そしてクレジットカードのように後日請求が来る「後払い」の3つになります。「キャッシュレス決済」の分類としてはこの5x3の組み合わせを考えれば良いでしょう。
これらの組み合わせの中から「使いやすさ」と「安心・安全」の視点で、どのサービスが良いかを考えてみます。
まず「磁気カード」は読み取られる心配があるので「ICカード」のほうを選択したいです。また接触するよりタッチするだけで良い「非接触」のほうがさらに安全です。スマホ決済はすべて「非接触」なので、クレジットカードよりスマホ決済のほうが圧倒的に「安全」ということになりますね。ちなみに一部のクレジットカードでは、読み取りの必要なく「タッチ決済」できるサービスも始まっています。世の中は「非接触」の方向にあることを覚えておきましょう。
ただここで問題は「非接触」すなわち「タッチ決済」のためには、タッチするための専用端末をお店側が用意する必要があります。その分お店がひと手間必要になる(お金がかかる)ということです。
その点「バーコードやQRコードによる支払い」では、お店側に用意するものがタブレットなどの汎用機器とQRコードだけで済んでしまうためとても便利です。ただしこれも購入者が専用のアプリを立ち上げるひと手間はかかることは覚えておきましょう。
ちなみに「QRコード」による支払いの場合は、購入者が専用アプリでQRコードを生成して、お店に読んでももらう「利用者提示、店舗読み取り型」と、店舗に表示されたQRコードを購入者がカメラ起動で読むだけの「店舗提示、利用者読み取り型」の2種類があるんですが、最初の「利用者提示、店舗読み取り型」では、店舗側がQRコード読み取り端末(タブレットなどの汎用機器でOK)を用意する必要があり、「店舗提示、利用者読み取り型」では、利用者が購入金額を打ち込んで、店員に金額確認などをしてもらう手間があります。
どちらもセキュリティの面では一定時間でしか使えないQRコードを発行して使いますので、再利用やスキミングなどの心配はクレジットカードやキャッシュカードに比べても極めて少ないということです。さらには最近では登録する際の個人認証に「3Dセキュア」認証など最新技術を導入しているサービスも登場して、なりすましなどにもさらなるセキュリティ対策がされています。
また決済方法では、クレジットカードに代表される「後払い」は知らぬ間に支払い金額が高額になっているなどの不安もあるので、チャージからの「前払い」もしくは銀行口座からの「即時払い」が安全・安心と考えられます。
ということから便利で安心安全なのは「非接触」で「お店の負担があまりないもの」ということになります。つまりSUICAなどの「非接触ICカード」か「スマホ決済」が一番安全で便利だということです。ですがICカードは店舗に専用端末を置くための出費が課せられます。つまり何らかの料金が上乗せされる可能性があるわけです。ということで結論が出ました。利用者がアプリを立ち上げるくらいの手間は受け入れて、改めて「スマホ決済」があらゆる決済サービスの中でもダントツに「便利で安心安全」。これすなわち我々利用者にとってもお店などの販売側にとっても良いことづくめのサービスだということが改めて理解できたと思います。
■スマホ決済の現状 >>使える場所からオートチャージまで
現在サービスが始まっているバーコードやQRコードによる主な決済サービスは「楽天Pay」「PayPay」「LinePay」「オリガミPay」「d払い」などがあります。
これらを「決済方法」から分類すると、このうちクレジットカードによる「後払い」だけの対応なのが「楽天Pay」。「PayPay」「LinePay」「オリガミPay」「d払い」も「後払い(クレジットカード)」はどれも登録できますが、さらに銀行口座からのチャージによる「前払い」もできます。
現在利用できる店舗から分類すれば、ローソン、ファミリーマートで使えるのが「PayPay」「LinePay」「d払い」、さらに「セブンイレブン」でも使えるのが「楽天Pay」。ケンタッキー・フライド・チキンで使えるのが「オリガミPay」。「PayPay」はビックカメラやヤマダ電機など家電量販店で使えて20%キャッシュバックだったので話題にもなりました。
ちなみに「LinePay」は1000円単位で銀行口座から残額が少なくなったらオートチャージする機能もあるということで、チャージを気にする必要がなくなります。
自分にとってどの「スマホ決済」が魅力的かだんだんわかってきましたでしょうか。ただしあくまで現段階でのそれぞれの対応サービスなので、利用者が増えれば、たぶんどのスマホ決済もほとんど変わらなくなっていくと思います。
情報によれば(2019年3月時点)、全国のゆうちょ銀行に対応した「ゆうちょPay」をスタート。さらにみずほフィナンシャルグループも、QRコードの新サービス「J-Coin Pay」を3月1日から始めると発表、ほか三菱UFJはPayB、三井住友はPay-easy(ペイジー)それぞれスタートしています。銀行をよく利用されている方は、こうした銀行発のサービスを利用するのも良いかもしれません。(以前の情報では、今年中には、三菱UFJ、三井住友、みずほの3行が合体して「BankPay」というスマホによるQRコード決済サービスを開始する予定とありました。)
■スマホ決済のさらなる便利機能 >>個人間送金(手数料無料振込)
スマホ決済は、単にお店で何かを買うためのサービスの枠を超えて、更に進化しています。そのひとつは「公共料金」の支払い。封書で来る公共料金の請求書ですが、通常はコンビニに持っていって支払ったりしますが、なんと「LinePay」なら請求書にあるバーコードをスマホのカメラで読み込めばおうちにいても支払えちゃいます。
そしてさらなる便利機能が「個人間送金」。これは「LinePay」と「PayPay」の機能ですが、友達関係になっているひと同士でお金の送金(振込)ができるそうです。それも送金手数料は無料。これは銀行では出来ないサービス。ただし現時点では、受け取ったお金を現金で引き出せるのは「LinePay」のみ。(payPayなども準備中との情報もあり)
ちなみに、前出の「スマホ利用者に関する調査」によれば、これだけ話題になっているにもかかわらず、まだスマホ決済サービスを利用したことがないという約80%の人たちの理由で一番多かったのが「クレジットカードで十分(43%)」、次いで「現金で十分(24%)」そして「セキュリティ面が心配(22%)」だったそうです。ここまで「スマホ決済」について便利で安全だと確信していても、まだクレジットカードや現金にすがりついているのでしょうか?
■スマホがIDになり、そして投資のための与信(信用調査)にも >>中国のゴマ信用
中国最大のオンラインショッピングモール「タオバオ」を運営するアリババグループが提供しているスマホ決済「アリペイ(Alipay)」は日本のお店でも使えるようになってきていますが、中国国内では、スーパー、コンビニやオンラインショッピングの支払いに限らず、公共料金、家賃、税金、保険料などあらゆる支払いに使われているそうです。つまりアリペイの支払状況を見れば、その人の経済状況が浮き彫りになるわけです。このデータに目をつけて、中国では、ある個人が「お金に関してどのくらい信用できるのかという指標」としてスマホ決済データを使えるサービスが始まっているそうなんです。
アリババは、これを政府データベースと連動させて、中国人民銀行が認める個人や企業の「社会的信用の目安」にしてしまいました。資料によれば、個人のさまざまな支払履歴や個人情報の組み合わせから、「学歴」「勤務先」「資産」「返済」「人脈」「行動」の5つの指標をそれぞれ350~950点で採点。550点に満たないものは「劣る」、550点から600点未満は「普通」、600~649点は「良好」、650~699点は「優秀」、700~950点は「極めて優秀」と採点されます。
この結果を見せることで、ホテルやレンタカーなどのデポジット(保証金)が不要になったり、後払いが可能になったり、ローンの金利が優遇されたり、さらには銀行や投資家からお金が借りられたりするようになります。
クレジットカードが殆ど使われていない中国では、個人の信用調査(与信)に関してはこれまで公平なものがありませんでした。ところがこの「スマホ決済」における利用状況で個人の信用を保証することができるようになったというわけです。これは中国に限らず、これからほかの国々でも通用するものになっていくのではないでしょうか。
最新技術を導入してどんどん進化していく「スマホ決済」ですが、間違いなく日本でも日常生活になくてはならないサービスになりそうです。今年の新元号時代への幕開け、来年のオリンピック新時代、さらには2025年の大阪万博に向けてさらに普及が加速される「スマホ決済」にこれからも目が話せません。