■医学の進歩は人類の救世主・・・
近畿大学生物理工学部ならびに近畿大学先端技術総合研究所などの国際研究チームが、なんと、約2万8千年前のマンモスの化石から取り出した細胞核の「動き」を確認することに成功したと、イギリスのオンライン科学雑誌「サイエンティフィック・リポーツ(Scientific Reports)」に発表されて話題になっています。(cnetジャパン記事:https://japan.cnet.com/release/30302797/)
つまり化石の細胞からDNAを取り出して再生させることが可能になるかもしれないということで、まさしくあの映画「ジュラシックパーク」で琥珀に閉じ込められた蚊の化石からDNAを抽出して恐竜を復活させるというSFものがたりが現実のものとなる日も近いというわけですが、こちらの話題はもっと実用的かつ人類の救世主。
日本の文部科学省では3月1日、より幅広い研究ができるようにと、動物の受精卵が成長した胚(はい)に、ヒトの細胞を注入して成長させる「動物性集合胚」を取り扱えるように法改定をすると発表しました。
■臓器移植を待ち続けなくても良い日が来る・・・
これまでは「動物性集合胚」の人又は動物の胎内への移植は禁止されていたわけですが、今回の解禁によって、今後、動物にヒトの細胞を注入して、動物の体内で臓器を成長させることができるようになるということです。
例えば膵臓ができないようにしたブタの胚に、ヒトのiPS細胞を注入し、胚をブタの子宮に移植すれば、ヒトの膵臓を持つ子どものブタを作ることができるようになるというわけです。
当然ながら規定もあります。発表資料によれば、動物性集合胚を人の胎内に移植しないこと、動物性集合胚を用いない研究によっては得ることができない科学的知見が得られること、動物性集合胚から個体を作り出した場合には、他の個体と交配させないことなどが書かれています。
この研究が実用化されれば、臓器移植などで待ち続けている患者さんにもそれぞれに合った臓器を作って提供することができるようになるかもしれません。
昨年末に中国では、不妊治療の一環であったものの、ゲノム(遺伝子)編集で双子の赤ちゃんを誕生させたとして物議を醸しだすなど、最新医療の分野では法律的倫理的にまだまだ問題が山積している中、日本でも生体肝移植などさまざまな臓器移植においては、臓器を提供する側(ドナー)の死に関する倫理規定が日本ではまだ法整備が完全でないことなどから、移植できなかったり臓器提供ができなかったりする問題が起きているいます。でも今回の「動物性集合胚」の解禁によって、こうした脳死問題から開放され、晴れて臓器移植が胸を張ってできる時代がもう目前になるというわけです。
■角膜だって人からの移植から人工角膜へ・・・
こうした医療へのさらなる進化によって、少しでも人の命を救えるようにすることへの挑戦は、医学の進化の大切なステップには間違いありません。時を同じくして、目の病気の方に、iPS細胞から作った角膜組織を移植することを、厚生労働省が承認したことも話題になりました。
西田幸二大阪大教授らの臨床研究において、iPS細胞(人工多能性幹細胞)から目の角膜の細胞を作り、角膜が濁る病気の患者に移植する計画を、厚生労働省が3月5日承認したことを発表し、6月にも移植を行い、iPS細胞を使った世界初の角膜移植が実現する見通しとなりました。
発表によれば、これまでの角膜移植においては、死亡した人から提供された角膜の移植となり、拒絶反応が起きることが多い上、提供者不足で移植を受けにくいなどの課題があったそうです。今回のiPS細胞の使用によって、さきほどの臓器を「動物性集合胚」で成長させることと同じく、その人にあった角膜を作り出すことができるようになるというわけです。
■救える命がどんどん増えていく・・・
今回の承認では、あくまで角膜の最も外側にある上皮という部分が濁る「角膜上皮幹細胞疲弊症」で、視力を失った20歳以上の患者4人が対象だそうですが、今後は誰でも安全にiPS細胞で成長させた角膜移植ができるようになっていきそうです。
角膜移植や臓器移植が人の命や倫理に囚われず可能になっていくことで、救える命は限りなく増え続けます。医療の世界でもバイオ技術の進化は重要な役割を担っていきます。
(出典)
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■ヒトの臓器もった動物の出産、解禁(文部科学省 発表資料)
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■iPS角膜移植(大阪大学発表資料)
http://www.med.osaka-u.ac.jp/pub/ophthal/www/research/cornea.html