■インフルエンザが猛威を振るう・・・
インフルエンザが猛威を奮い、ついに私にまでウン十年ぶりに被害を及ぼしている今日このごろ、明るい話題をご紹介。
古くは人間を縮小して血管に注射して病気を治しに行く「ミクロの決死圏」とか、間違って家族を縮小してしまった博士の話の「ミクロキッズ」とか、最近ではマット・デイモン主演の人口が増えすぎた地球で人体を13センチに縮小して問題解決させようとする「ダウンサイズ」や、コスチュームを纏うとあっという間に縮小するマーベル・コミックでおなじみのスーパーヒーロー「アントマン」など、漫画や映画などのSFでは物体を小さくする技術がたびたび登場してきましたが、なんとついにそれが実現してしまったという話題です!!
■どんなものでも1000分の1に・・・
米マサチューセッツ工科大学(MIT)のチームは、レーザーを使って物体をナノスケールに縮小できる技術を開発したと発表しました。この技術を使えば、どんなものでも元の大きさの1000分の1に縮小できるそうです。
ナノ構造を作製するためのこれまでの技術は、基本的にレーザーなどで物質の表面にパターンをエッチングする2-D(2次元)ナノ構造を生成することはできていたのですが、3-D構造は難しかったようです。 いくつかの方法はあっても、作成に時間がかかり実用に足らないものだったそうです。また、ナノスケールの物体を直接3-Dプリンタで印刷する方法も存在しますが、素材が機能的性質を欠くポリマーおよびプラスチックのような特殊材料に制限され、また、連結チェーンや中空球(真ん中が空洞の球体)は作成できませんでした。
これらの制限を克服するために、MITの神経科のエドワード・ボイデン教授(生物工学および脳と認知科学の准教授も兼任)と彼の研究室の学生は、彼の研究室が数年前に脳組織の高解像度イメージングのために開発した技術を応用してみようと考えました。 拡大顕微鏡法(expansion microscopy)として知られるこの技術は、組織をハイドロゲルに吸着させ、次いでそれを拡大して、通常の顕微鏡による高解像度の画像化を可能にします。
このプロセスを逆転させることによって、研究者らは膨張したハイドロゲルに埋め込まれた大規模な物体を作り出し、それをナノスケールにまで縮小することができることを発見したんです。これを彼らは「インプロージョン・ファブリケーション(Implosion fabrication=爆縮加工)」と名付けました。
■インフルウイルスも一網打尽・・・
つまりハイドロゲルにレーザーをあてて縮小したい素材の分子構造を吸着させ、ハイドロゲルを脱水する過程で縮小させていくことで1000分の1まで縮小できるというのです。
それらはまた、金属、量子ドット(quantum dots)、およびDNAを含む様々な有用な材料を用いて、レーザーでハイドロゲルにパターン化することによってどんな形状や構造も作り出すことができ、それを縮小することであらゆる縮小モデルが作成できるようになったというわけです。
これを応用することで、がんの治療薬に微小ロボット粒子を投入してがん細胞だけを狙い撃ちしたり、インフルエンザウイルスを一網打尽にすることなどもできるようになると、まさに「ミクロの決死圏」さながらの技が実現と、エドワード・ボイデン(Ed Boyden)博士は話しているそうです。
ちなみにGoogle Brainは、人工知能のディープラーニングを用いて、高解像度画像を8×8(64)ピクセルに変換した画像から元の画像を推測する技術「Pixel Recursive Super Resolution」を2017年に発表しています。人工知能(AI)の技術の根幹をつかさどるディープラーニング技術は、2次元データを圧縮したり拡張したりすることでそのデータの持つ特徴をより鮮明にさせ、分類し予測しやすくする技術です。
■AIによる画像解析はさらに進化している・・・
ただこうしたディープラーニングの技術では、あくまで2次元の画像データの縮小・拡大であり、3次元の物体データをディープ・ラーニングするためには、その拡大・縮小する手法はまちまちでしたが、今回のハイドロゲルを使った拡大縮小技術は、ひょっとすると、AIによる物体解析にも応用できるかもしれませんね。
(出典)
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■MITニュース
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■Google Brain「Pixel Recursive Super Resolution」