■いま5Gの動きが激しいのを知ってました?
2018年2月、スペイン・バルセロナで2018年2月26日から3月1日に開催された世界最大規模となる携帯電話の総合見本市「Mobile World Congress 2018」では、世界中から注目が集まったのが、新たな通信規格となる「5G」。
また9月12日には、北米最大の携帯電話見本市「MWC(モバイル・ワールド・コングレス)アメリカ」で、ソフトバンクグループ傘下で米携帯4位スプリントが2019年前半をメドに米国の一部で5G通信網を実用化する計画を発表。
さらには、米通信大手Verizonは10月1日からアメリカロサンゼルスなど一部の地域で5G対応の家庭向けブロードバンドサービスの提供を正式に開始したというニュースも飛び込んでききました!!
そして直近では、ソフトバンク株式会社とトヨタ自動車株式会社が、新しいモビリティサービスの構築に向けて戦略的提携に合意し、新会社「MONET Technologies(モネ テクノロジーズ)株式会社」(以下「MONET」)を設立して、2018年度内をめどに共同事業を開始、5Gを活用した新しいモビリティサービスを提供していくと発表。
今回は、1年を締めくくる意味で、今年さまざまな激しい動きがあり、さらに来年から2020年に向けて加速度を増すであろう「5G」についてまとめておきたいとおもいます。
■そもそも「5G」とはなにか?
5Gとは通信規格の「5th Generation」、第5世代移動通信システムとも訳されています。現在我々が使っているスマホなどの通信手段は「4G」第4世代移動通信。初期段階ではLTE(Long Term Evolution)とも呼ばれ、下り最大75Mbpsから始まってその後正式な4Gになってからは100Mbps、150Mbpsとどんどん加速化され、現在では800Mbpsまで出せるようになってきています。
こうした通信速度を出すためには、使う周波数をいくつか束ねるような技術を使っています。例えて言うなら、車の渋滞を緩和するために、何本かハイウエイを並列で用意して、それぞれの地域で空いているハイウエイに流していくことで速度を保ち渋滞をなくすような方式になっているわけです。
日本の場合、急激な携帯電話利用者の増加などによって、これまで使ってきた周波数帯はどれもかなりの満杯状態になってきています。なのでいくつもの周波数帯を束ねて渋滞緩和を行おうとしてきたんです。つまりこうしたやり方だと、通信速度を高めるためには利用する周波数帯を増やしていくことになり、それに応じてさまざまな周波数帯に合う送受信機の開発も必要になります。これが海外とは使う周波数が違う携帯電話になってしまう原因のひとつになっているわけです。
5Gになると、一度に10G〜20Gbpsもの通信速度を出せるようするために、広い周波数帯を用意する必要があります。そこで現在、これまでの周波数帯に加えて「6GHz帯」以上の帯域幅が広く取れる高い周波数帯を全世界統一で使えるようにしようとしているわけです。そのため5Gの実用化に向けては、世界(米国、欧州、日本、中国、韓国)で統一された通信規格も整備しようとしているんです。(実際は3.7GHz帯、4.5GHz帯、28GHz帯を予定)
ちなみに通信速度が10G〜20Gbpsとなると、20Gbps=2万メガbps、これはLTE時代の100メガbpsからすれば約100倍の速度になります。
ところでご存知かもしれませんが、電波は高い周波数になればなるほど「直進性」が強くなり「遠くへ飛ばなくなる」という性質を持っています。これまでは技術的な問題で、高い周波数はこうした公衆通信にあまり向かなかったわけです。それがここ数年の技術革新で一気に高周波を活用した高速通信が可能となってきたということも5Gへの移行が現実のもとのなってきたというわけです。
■「5G」の実現で生活が激変・・・
ここ数年のAI(人工知能)やIoT(モノのインターネット)の進化は目まぐるしいものがあります。しかしこれらに加えて「5G」が実用化されることで初めて「第4次産業革命」が起きると言われています。
その理由は、人工知能やロボットがいくら進化しても、最終的にデバイスに装着されるセンサーから得られたデータを解析・分析してアクションに変えるためのAI(人工知能)部分は、本体にあるわけではなく、インターネットを経由した先のクラウドサーバーにあるからです。ロボットや自動運転などさまざまな機械とインターネットが数限りなく接続していくためには、通信速度や一度に流せる容量が大きくなっていかないと実現できなかったわけです。
5Gの威力は、例えば、800MBの動画をダウンロードするのにかかる時間は、3Gの場合は7分半、4GやLTEでも43秒ほどがかかっていたものが、5Gになると、1秒もかからなくなるという話からうかがえます。
こうした通信網が、家庭用IoT端末、自動走行車やコネクテッドカー、ドローン、産業用・サービスロボット、施設や都市、インフラに設置されるセンサーなどに活用されていくことが不可欠、5Gの世の中になって初めて本格的な革新的な生活ができるようになるということがおわかりになったでしょうか。
■5Gによって可能となるコネクティッドカー新時代
まず5Gになって大きく変革が起きるのが自動車業界と言われています。それはなぜか? 自動運転車やコネクテッドカーが普及していくと、これまで我々が当たり前と思っていた「車を所有」する時代から「車は共有」する時代に変わるからなんです。
自分の自由な時間に自由な場所に行きたいからこそ車を所有していましたが、自動運転車が普及すれば、自分で持たなくても予約さえ取っておけば、今までと対して変わらない移動手段を確保することができるようになります。それも手元のスマートフォンでの操作だけで、自宅前に車が迎えに来てくれます。
これによって自動車の販売台数は減少し、それに伴った雇用も大きく変わります。自動車産業は製造業から運搬業(サービス業)に変化していくかもしれないというわけです。
Uberなどは、すでに「MaaS(Mobility-as-a-Service:サービスとしてのモビリティ)」と命名してこうしたコネクテッドカーの共有サービスを開始しています。
■5GがAIとロボットを進化させる
また、5Gが普及することで、全世界の監視カメラの目が格段に良くなります。現在はそれぞれの監視カメラの映像を録画して、あとでそれを人間が丹念に見直すことで、犯人を探したり交通違反を取り締まったりしていますが、これが5Gでつながることによって、全世界のどこに誰が何をしているかまで把握できるようになっていきます。こうしたデータを世界で共有することで、犯罪を未然に防ぐことに役立てたり、人探しなども誰でもすぐにできるようになります。
NECが開発したAIを搭載した製品およびソリューションでは、約160万件の画像から、顔を認証して特定対象を見つけ出すのに要する時間はわずか0.3秒、その顔認証の精度は、米国立標準技術研究所から「世界で唯一99%以上」というお墨付きを得ているそうです。先日もこの監視システムを導入したアルゼンチン・ティグレ市では、5年間で車両盗難が80%も減少。また、インド・スートラ市警察に導入されたシステムでは、犯罪発生率を27%低下させ、約150の事件解決に寄与したと報告があったそうです。
■VR、AR、MR分野で5Gが大活躍
使用できるデータ通信量が増えると、ユーザーが動画コンテンツを利用する量が相対的に増えるという統計データがあります。そうすると今度は、動画の制作資金も増え、より優良なコンテンツが生まれるというサイクルがうまく回り始めるわけです。
こうした波に乗ってVRやAR関連の動画の進化が目まぐるしくなると考えられています。VRやARというとまずゲームをイメージしがちですが、職業訓練や遠隔医療、ヘルスケアなどといった産業で大きな需要が見込まれているといいます。これらも通信の進化のなせる技なんですね。
■そしてエンターテインメント産業では・・・・
当然のことながらゲームやエンターテインメントの世界でも、5Gの恩恵はいちぢるしいようです。
まずライブ・コンサートの多数の会場で同時生配信などはあたりまえになる可能性があります。これによって全国規模のコンサートがあたりまえになったり、入場料を安価に押させられるようになったりするかもしれません。
またこうしたクリエイティブの世界では、一人のクリエイターが作り上げる時代から、多数の、それもん別々の地域にいる個々のクリエイターが協力しあっって一緒に作り上げていくような時代に変わるとも言われています。
市場規模としては全世界で70兆円(2026年)、経済効果は約1,230兆円(2035年)との試算もあるようです。日本がその市場にスムーズに進出するだけでなく、さらに世界をリードして広げていくことができるかがポイントになると思います。
5G通信の「低遅延」「多数端末接続」「高速・大容量」という3つの特徴を活かすことで、全く新しいライブパフォーマンスが誕生するかもしれません。
■2020年東京オリンピックにむけて・・・
そんな中、日本では2年後の2020年の東京オリンピックまでに、この5Gを実現させるべく国を挙げて準備が進んでいます。そこには3つの乗り越えなければならない山があるそうです。
第1の山は、さらなる「研究開発」。資料によれば、たとえば警備会社と共同で、東京スカイツリーやビル屋上のカメラと地上をつないで、画像を高速伝送し、警備員のウェアラブルカメラを通じて監視センターに集約する広域の見守りの実証試験など、実現までにいかに経験を積んでいけるか。
2つめの山は、国際連携。「世界各国で使うために国際的に無線の周波数を合わせる」ことがどこまでできるか。そのための国際標準化は、ITU(国際電気通信連合)と3GPP(3G時代から始まった通信仕様の国際標準化プロジェクト)という2つの標準化機関との交渉で日本の要望がどこまで受け入れてもらえるか。
そして最後の山は、5Gの技術的条件の策定と、国内における5Gの周波数割当。現在、5Gについては3.7GHz帯、4.5GHz帯、そして帯域幅が大きく取れる28GHz帯の3つの周波数帯での利用が検討されていますが、こちらも早急な検討が必要になっています。
なんと総務省は5Gの用途の開拓や市場の創出に向けた「5G利活用アイデアコンテスト」を開催しています。地域住民や中小企業、地方自治体など現場のニーズを発掘する狙いで募集を開始。10/9~11/30の一次募集には 計785件の応募があったそうで、そのうち11の優秀なアイデアを選定したようです。この一次選考を経て、2019年1月11日に公開最終審査(現在傍聴者募集中)。優れた案には大手携帯電話会社などと進める実証研究に採用するとのことです。
さあいよいよ5Gの実現に向けてラストスパートが始まりました。皆さんのこれからの生活は5Gの行く末にかかっています。
(出典)
-
■ソフトバンクとトヨタが新会社
https://www.softbank.jp/corp/group/sbm/news/press/2018/20181004_01/
-
■5G利活用アイデアコンテスト