■建設業界にもバイオ技術であらたな時代に突入・・・
町にそびえたつビルを支えるコンクリート。一見頑丈な建材と思いがちですが、拡大して見ると内部は隙間だらけなんだそうでうです。コンクリート(concrete=混凝土)は、砂や砂利・水などをセメントで凝固させた硬化物で、内部には「毛細管空隙」と呼ばれる非常に細かい空隙が多数あり、そこから水、酸素、二酸化炭素、塩化物イオンなどが入り込むことでコンクリートを劣化させてしまいます。
通常のコンクリートは30年もするとこうした劣化が始まり、ヒビ割れが始まることで見栄えも悪くなりますが、それ以上に内部に水が入るようになり、コンクリート内部にある鉄筋が水や空気に触れることで錆び始めます。すると鉄筋が膨張してコンクリートのひび割れは更にひどくなるというわけです。そうなると、頑丈そうなビルでもひび割れなどの修復をこまめにしていかないと、ボロボロになって倒壊する危険度がどんどん増してきます。特に海岸沿いなどのビルは塩分や風などによってさらに老朽化が進むんだそうです。
■バクテリアがコンクリの老朽化を感知して目覚める・・・
そんなところに目をつけた、オランダのデルフト工科大学のヘンドリック・ヨンカース准教授のチームは、こうしたコンクリートの老朽化を自分自身で防ぐことができる「自己治癒コンクリート(Self Healing Concrete)」を開発してしまいました。
これは、コンクリートにある特殊なバクテリア(バシラス属のバクテリア)を乾燥状態にしてそのバクテリアのエサとなる乳酸カルシウムと共に特殊なペット状マイクロカプセル(直径1ミリ、長さ2ミリ)に封入して事前にコンクリート混ぜ込みます。コンクリートが雨や空気で老朽化がすすむと、水が染み込むことでカプセルが割れバクテリアが目覚めるんだそうです。生き返ったバクテリアはエサを食べることで「炭酸カルシウム(石灰石)」を排出するんだそうです。この炭酸カルシウムが自動的にひび割れを閉塞し、内部の鉄筋腐食を防止することとなります。
また、ヒビ割れが埋まって全体が乾燥されると、バクテリアは再び休眠状態になるんだそうです。バクテリアは乾燥状態に入ると、胞子状の殻をまとって身を守り、200年もの間休眠状態で生き続けることができるそうなんです。要するに、人間の寿命より長い耐久年数を持つコンクリートが誕生したというわけなんです。
■日本でも取り扱いを開始・・・
こうした技術はコンクリート構造物の長寿命化およびメンテナンスフリー、修復費用の大幅軽減等の特長を有することが高く評価され、2015年には欧州特許庁の欧州発明家賞にノミネートもされたそうです。
その噂を聞きつけた北海道の會澤(あいざわ)高圧コンクリートという会社は、デルフト工科大発のバイオベンチャー企業「バジリスク・コントラクティングBV」に16年4月に訪問。その翌年の2017年(昨年)には日本国内独占販売契約を結ぶことに成功し、今年6月より製品名「バジリスク(Basilisk)」として販売が始まるということで再び話題になっているというわけなんです。
會澤高圧コンクリートとしては、まずは補修材としての販売から開始して、その後バクテリア入りの生コンクリートの販売も順次はじめていくということで、人間よりも長寿の長いコンクリートはきっと世の中の都市開発のあり方をも変えていくのではないでしょうか。
(出典)
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■バジリスク
https://www.aizawa-group.co.jp/home/wp-content/uploads/2018/05/180404_basilisk.pdf
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■自己修復コンクリートがついに市場に
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■微生物がひび割れを補修!?