昨年後半ころからいわゆる「定額制サービス」が続々と登場しています。これまでモノを所有するためにそのモノの価値と引き換えにお金を支払ってきましたが、モノ自体の価値が下がってきたことから、単に「良いものさえ作っていれば売れる」という時代に変化が起きているのです。
いわゆる「サブスクリプション(定額制)ビジネス」と呼ばれるサービスは、もともと雑誌などの定期購読のことを指していましたが、それが一転してさまざまな分野に応用され始め、我々の生活にあらたな変化をもたらし始めています。
私がレギュラーで出演させていただいているBayFMラジオでも「もし利用するとしたらどんな定額制サービスを利用したいですか?」というテーマで「定額制サービス=サブスクリプションビジネス」を特集したので、これを機にこれからのサブスクリプションビジネスがどうなっていくのか改めて整理しておきたいと思います。
■ものの所有から経験へ・・・
みなさんは、何か欲しいものを手に入れるとき、それを所有する=自分のものにするという満足感と、それを使いこなす=経験することへの満足とどちらに重きをおきますか?
モノが少ない時代、例えばそれは日本で言えば石器時代から江戸時代、そして明治、大正時代くらいまではほとんどモノが少ない時代、モノがあっても一部のお金持ちや偉い人だけしかものの所有ということができなかったわけです。
それが昭和になって自動車やテレビや冷蔵庫などものが一般に解放される時代に突入します。誰でもモノが所有できる時代、これに変化したことで所有欲が一気に高まりました。そんな中から「切手収集」とか「鉄道模型収集」などそういったコレクションする趣味も全世界に広がっていきました。「ステレオが家に届いたからみんな遊びに来いよ」「カラーテレビを見に来ないか?」など所有することが喜びであるかぎり、所有欲をくすぐる価値あるものさえ作ればどんどんモノが売れた時代だったわけです。
ところがそんな時代にもすぐに終わりが来ます。モノは世の中に溢れ出し飽和状態。テレビや車など持っていない人のほうが少ない時代に変わって行きます。そうなるとモノを持っているだけでは価値を見出すことができなくなってきたのです。価値を見出すには、そのモノを利用していかに素晴らしい体験ができるかが勝負になってきました。これをマーケティングの世界では「モノの消費からコトの消費時代へ」「モノからコトへ」と言うそうです。
なぜそんな変化が出てきたのでしょうか。ちなみにGoogle検索で調べると「コト消費」という言葉がよく使われるようになったのが2006年ころからだそうです。つまり約12年前ころから日本では生活必需品について、ほぼすべての家庭に行き渡ってしまったことが大きな原因と言われています。つまり「単なるモノの価値だけなら誰でも持てるようになった」=モノだけでは他の人との差別化ができなくなり、優越感に浸れなくなってきたというわけです。
■コト消費の時代にハマったもの・・・
「コト消費」の時代になって人は、旅行に出たり、テーマパークに行ったり、キャンプしてバーベキューやったり、こういった体験や経験に価値を求めるようになってきています。そんな中、逆にモノ消費のほうはどうなっているんでしょうか。それが今日のテーマでもある「サブスクリプションビジネス=定額制」なんです。
サブスクリプション方式とはモノを買い取るのではなくて、モノの利用権を借りて利用した期間に応じて料金を支払う方式のこと。所有することに価値が見出されなくなったので、機能だけを一時的に使って終わったら返却しても問題なしという時代になってきているというわけです。
みなさんの身近なもので例えるなら、パソコンのアプリ。少し前までワードやエクセルなどのOfficeと呼ばれるビジネスソフトは、所有することで自分の価値を高めていました。「俺はもうOffice持っているぜ、優秀なビジネスマンだからね・・・。」そんな気分もいまや幻想、ワードやエクセルをいかに使いこなせるかが人の価値を高めていることに気づき、発売元のマイクロソフトも買い切りだけではなくて、月払い(月額900円から)の「Office365」というサブスクリプションサービスをスタートさせています。
音楽のネットサービスも同様、これまでitunes(アイチューンズ)のように、一曲いくらでダンロードしていましたが、iCloud Music(アイクラウドミュージック)では、月額払い会員になれば好きなだけ音楽を聞くことができるようになりました。こうしたサービスはSpotify(スポティファイ)やLINE MUSIC(ラインミュージック)などでもどんどん浸透してきていますね。
■とどまることを知らないサブスクリプションビジネス・・・
いったん型にハマるとどんどん新たに同じ型のサービスがどんどん生まれていくのが人情・・・。昨年2017年後半から一気にこうしたサブスクリプション:定額制サービスが生まれているので、その中からいくつかご紹介したいと思います。
◎日本初のワイシャツ宅配サービス「ワイクリン」
https://yclean.co.jp/
まずは日本初のワイシャツ月額宅配サービス「ワイクリン」、ワイクリンは、1カ月分20枚のワイシャツのレンタル&クリーニングをSETで行う、日本初のワイシャツ宅配サービス。10種類の柄より自由にお好みのワイシャツをセレクトして月額定額料金払えば、毎月20枚のアイロンバリバリのワイシャツが届きます。値段は8800円+消費税から。自前のワイシャツでアイロンかけてクリーニング出すのと、ワイクリン使って気軽に新しいワイシャツが着れるのとどっちを選ぶ?ってことです。
◎カミソリの定期購入サービス
http://www.dmm.com/subscription/-/branding/=/plan_id=zext/
ビデオレンタルなどでも有名なDMM.comがなんとひげそりのためのカミソリの月額宅配サービスを昨年11月からはじめました。本体含めて6枚歯のカミソリが月に2個ついて500円+消費税から。いちいち買いに行かなくても定期的に送ってくれるところがミソ。ちなみにアメリカでは同様のカミソリ宅配サービスをもう3年前(2016年)から始まっていて、その老舗でもある「Dollar Shave Club(ダラーシェーブクラブ)」はトイレタリー商品大手のユニリーバに昨年約1000億円で買収されたそうです。
◎車の定額サービス:Norel(ノレル)
https://norel.jp/
あこがれの高級車から便利なミニバンまで約900車種の中からお好きな車をリース。料金は月額12800円からで、レンタカーのように1日とか1時間などの時間貸しではありませんが、最短90日で別の車に乗り換えることが可能。駐車場は自分で用意する必要がありますが、その他自動車税、重量税の支払いは不要。レンタカーではないので「わ」ナンバーでもない!!ちなみに車に関してはボルボやポルシェ、BMW、メルセデスベンツなどもそれぞれ海外で月額乗り放題サービス始めるそうです。
■さらにさらにサブスクリプションビジネス・・・
◎高級時計のサブスクリプション:KARITOKE(カリトケ)
https://karitoke.jp/
月額料金を支払うだけで、ブランド腕時計を返却期限なしで身につけられるサービス。オメガ、グッチ、ハミルトンなどから選べるカジュアルコースなら月額3980円+消費税。ロレックス、フランクミューラー、IWC、ブルガリなどから選べるプレミアムコースでも月額9800円+消費税。購入はできないけど高級時計を身につけてみたい方には夢のようなサービス。
◎ラーメンの月額サービス:1日一杯野郎ラーメン生活
http://fr-h.co.jp/news/subscription
なんとラーメンの月額サービスも登場。ラーメンチェーンの野郎ラーメンは、昨年11月から、毎日1杯「豚骨野郎」780円(税込)、「汁無し野郎」830円(税込)、「味噌野郎」880円(税込)の中から好きなものを食べられて店名(ヤロウ)にひっかけて1ヶ月8600円のサブスクリプションサービスを始めています。
◎来店すればするほどお得:六本木ワインバー「Provision(プロビジョン)」
http://provision-tokyo.com/
1名様 月額15,000円、4名様まで月額30,000円で、一部追加料金のかかるメニューもありますが、お酒や料理を自由にすきなだけ頼めるサービスを昨年10月からスタート。支払いの手間もなく、月に何回来ても値段は変わらないという夢のようなワインバー。
■コト消費ビジネスの注意点・・・
単品払い(単発払い)から月額払い=サブスクリプションに世の中のサービスが変化していくとき、我々が気をつけなければいけないことがあります。それは、そのサービスに「価値を育てる力があるのか」ということと「信頼を維持できるか」になります。
例えば単純にいくらでも食べられるだけだったら飽きてくるかもしれない、なので次に行ったらオリジナルのトッピングができたり、マイ箸がキープ出来たりするなど、ここにも「モノ消費からコト消費」の価値観が生かされて行く必要があるということなんです。
単発で購入するだけなら、家に持ち帰ってしまえば、基本的には販売したお店とは縁が切れますが、サブスクリプションビジネスの場合は、月額でお金を継続的に支払っている以上、サービスを受けている間はつねにお店とのつながりが維持されます。なのでお店側からのさまざまなサポートが期待できるものを選ぶ目利きが必要になるのではないでしょうか。
たとえば、パソコンを購入したらそれで終わりではなくて、パソコン購入と同時にパソコンのシステムのアップデートや使い方や新たなアプリのインストールなどを常に問い合わせサポートしてくれるサブスクリプションサービス=パソコン安心サポートは、いまや少子高齢化社会におけるパソコン販売にはなくてはならないサービスになりつつあります。パソコンの販売をアップさせるにはパソコンを安心して使える「安心サポート」サービスをさらに進化させていく必要があるといえます。
みなさんもこうしたちょっとした生活の一場面から、新たなサブスクリプションサービスを考えてみてはいかがでしょうか。