今年の夏はゲリラ豪雨や強力な台風が全国を襲いさまざまな被害をもたらしました。そんな夏もお彼岸を過ぎて一段落し、秋の気配も感じるようになっています。それでもなおめまぐるしく変化する日々が続き、私が手がけるラジオ番組「金つぶ(BayFM毎週金曜19時〜21時)」で紹介するIT関連のニュースも、連日考えもしない話題が次々と飛び込んできています。
特にここ数年は人工知能の話題が絶え間なく続くとともに、それと同じくらいロボット関連のニュースが多くなってきています。
そんな中、例によって「いまどきのロボットビジネス特集」をラジオで放送したので、ここにまとめておきたいと思います。
■ロボットビジネスの移り変わり
ロボットという言葉は、チェコ語の「ロボタ=強制労働」という意味の言葉から出来たと言われているそうです。1920年当時のチェコスロバキアの劇作家「カレル・チャペック」が演劇で、遺伝子操作によって造られた人工生命体を登場させ、それを「ロボット」と名付けたそうです。
日本でロボットといえば、鉄腕アトム、鉄人28号、ドラえもん、そしてガンダムから始まる一連のロボットアニメ。
何と言ってもSonyが1999年に発売した犬型ロボットAIBO(アイボ)は、定価25万円にもかかわらず、発売開始(1999年6月1日)から僅か20分で3,000台(日本向け)の受注を締め切ったという逸話が残っています。
Sonyは2000年には、AIBOを発展させた形で、二足歩行ヒューマノイドロボットのQRIO (Quest for Curiosity) を発表、一般販売はしなかったものの、さまざまなイベントに登場して話題に。
同時期には、SONYに追いつけ追い越せと、ホンダが開発した二足歩行ロボットASIMOもさまざまなイベントで見かけました。
21世紀はロボットとともに幕開けしたと言っても良い。2001年には「ロボフェスタ神奈川」を開催し、いよいよお茶の間のロボットの時代が到来するか?と盛り上がりを見せていました。
その後AIBOの最新モデルが毎年発売されていくなか、突然!2004年にSONYがロボット事業からの撤退を宣言、2006年には一切のロボット事業を廃止しました。理由は明らかにはなっていませんが、マニアからの人気はあっても、誰もが入手できるほど値段も安くなく、量産するまでには至らなかったことが原因ではないかと噂されています。
ここから、この手のエンターテイメントロボットはあまり大きな話題もなく年が過ぎていきました。
一方、産業用ロボットは人件費の削減を目的に、どんどん世界に普及を始め、IT分野の専門調査会社として知られるIDCが2016年2月に公表したロボット産業の動向予測レポートによると、2015年の世界のロボット関連の市場規模は710億ドル(約8兆円)。
この成長を後押ししているのが、日系メーカーの技術力。産業用ロボットの需要は70%以上が欧米各国や中国の産業メーカーへの輸出が占めており、産業用ロボットは日本国内だけでなく、グローバルに成長している市場に成長しました。
元々の産業用ロボットの主戦場は自動車産業だったのですが、最近ではIoTなどと連携するエレキ業界、さらには医薬品、化粧品業界にまで、ロボットに組み込まれるセンサーやモーターの性能向上や小型軽量化で活用が始まっています。
一方、2011年に東日本大震災が起き、ここで福島原発の事故の安定化および廃炉の推進のために改めてロボットが見直されるようになります。
そんな中2013年12月、Googleがロボット産業に参入、次々と世界の名だたるロボットベンチャー会社を買収、その中には、日本の東京大学情報システム工学研究室稲葉雅之教授のもとでロボットと人工知能を研究をしていた「SCHAFT(シャフト)」なども・・・。
このころから人工知能技術をロボットに応用するようになり、ロボットの性能が向上していきました。
時を同じくして、2014年06月、ソフトバンクがロボット事業参入。そこで家庭向け人型ロボットPepperを発表。2015年6月より一般販売を開始したところ。月産1000台が一瞬で予約完売、それが現在も継続中。
そしてソニーもついに2016年再参入を宣言。そしてつい先日2017年6月に、ソフトバンクがGoogle傘下の「Boston Dynamics」を買収したと発表。これには先程の「SCHAFT(シャフト)」のおまけ付き。
もはや、ロボット産業を牛耳るものが世界産業を牛耳ると言われるだけに、いま最も動きの激しい産業の一つとなっています。
■拍車をかけた安倍政権
こうした世の中の動きに対し、2014年5月、安倍総理が、OECD閣僚理事会で、世界に向けて「ロボットによる新たな産業革命」を表明したことで日本のロボット産業への注目がより高まりました。ここでは、2014年9月、戦略を策定するための有識者会議「ロボット革命実現会議」が発足。
ロボット革命の3本柱は以下のとおり。
1)日本を世界のロボットイノベーション拠点とする「ロボット創出力の抜本強化」
2)世界一のロボット利活用社会を目指し、日本の津々浦々においてロボットがある日常を実現する「ロボットの活用・普及(ロボットショーケース化)」
3)ロボットが相互に接続しデータを自律的に蓄積・活用することを前提としたビジネスを推進するためのルールや国際標準の獲得等に加え、さらに広範な分野への発展を目指す「世界を見据えたロボット革命の展開・発展」
これは、ロボット技術を活用して、製造業、医療、介護、農業、交通などの様々な産業に変革を起こそうという、政府の成長戦略の柱の1つ。産業ロボットの市場規模を現在の6000億円から、東京オリンピックが開催される2020年までに2倍の1兆2000億円へと成長させ、サービスなど非製造分野でではなんと20倍の12兆を見込んでいるもの。また2020年にロボットオリンピック(仮称)を開催させるという動きもあります。
ちなみに現在世界で最も注目されているロボットの祭典と言えば「ロボカップ」。これは「2050年、人型ロボットでワールドカップ・チャンピオンに勝つ」を目的とした国際的ロボット競技大会。1997年ころから競技大会が開催され、昨年2016年は20回目の大会がドイツで開催されました。競技はロボカップサッカーを中心に世界各国のチームが挑戦。現在40カ国以上のチームが参加しています。こうした競技などとも連携していくと思われます。
■近年まれに見るロボットの話題オンパレード
ということで、このところロボットに関係した話題がとにかく多いと感じます。私が最近気になった話題の中だけでも、ロボット関連の記事は、1ヶ月に10記事以上はありました。ざっとこの3ヶ月でのロボット関連の象徴的なニュースをcnetジャパンのニュースから改めてピックアップしてみます。
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■コミュニケーションロボットで高齢者の生活を改善
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■ドバイ警察がロボット警察官「Robocop」を正式雇用
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■ソニーから遊んで学べるロボット玩具「toio」がデビュー
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■ソフトバンクが四本足ロボで有名なボストン・ダイナミクスを買収 ペッパーくんと合体か!?
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■フォルクスワーゲン、自動運転車やEVの支援ロボットをKUKAと開発へ
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■ドバイで自律飛行“空中タクシー”の試験運行を年内に開始と発表
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■タカラトミーが心を持つAIロボット「COZMO」発売
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■韓国の仁川空港でLGのロボットが活躍
これだけ見ただけでもロボットビジネスにおける今後の注目分野が見えてきます。
■ロボットビジネスで注目していく分野はここだ!
まず「新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)」による2010年に発表されたロボット産業の将来市場についてを見ると、2005年に主に産業用ロボットの需要だけで7000億円程度だった市場が、2020年には、(さきほども紹介したように)産業用だけでも2倍の1兆2000億円、これに家庭や社会で出会うエンターテイメントロボットや医療ロボットなどロボット技術の応用も含めると約3兆にまで膨れ上がると予想。さらには、約20年後の2035年には約10兆円産業にまでなると予想しています。これは国内予測。
これを全世界規模で見ると、全米大手調査会社のIDC(International Data Corporation)の発表データによれば、2016年(昨年)に915億ドル(約10兆円)だった市場が、やはり産業ロボット以外の分野が伸びて、2020年にはその倍の1880億ドル(約20兆円)に達すると予測しています。
ちなみに日本は現在、産業用ロボットの世界市場の約50%を供給し、世界第1位を誇っているそうです。実は産業用ロボットの分野では、世界にロボットを供給する会社のベスト3のうち2社が日本の会社。世界シェア1位が「安川電機」という北九州の会社。毎年2万台もの産業ロボットを生産しています。世界シェア2位は「ABB(Asea Brown Boveri、アセア・ブラウン・ボベリ)」というスイスの会社。そして3位には再び「ファナック」という日本の会社が入っています。
こうした状況の中、そこにPepperのようなエンターテイメントロボットなどの分野が伸びてきているわけです。つまり、2020年になっても、世界市場の半分を取れるかどうかは、こうしたエンターテイメントロボットなどの分野でも活躍できるかに懸かっているわけです。
ロボットビジネスの分野というと、産業ロボット、サービスロボット(コミュニケーションロボット、家事代行ロボット、医療代行ロボット、農業用ロボット、ウエアラブルデバイス、セキュリティロボット、危険地帯作業ロボット、ドローン、自動運転)などに分かれます。
そこで我々が応援していきたい、これからのロボットビジネスの分野、この中で、産業ロボット以外で、日本がこれから伸ばすべき分野は(ネットの情報を総合してみると)・・・
◎介護・家事代行・医療代行ロボット
製造業よりもさらに人手不足が深刻な業界が介護業界。世界全体としての老齢化社会に向けて、介護に関するロボットの供給は、日本の繊細な技術力が活かせるもっとも注目の分野。矢野経済研究所の調べによれば、現在10億円程度の国内市場が2020年には150億円にまで拡大すると予想。
その分野を背負っている会社が「サイバーダイン」という筑波大学の研究室から始まったロボットベンチャー会社。HALというロボットスーツは有名。昨年2016年から医療保険摘要も始まっています。
◎農業・漁業・林業ロボット
アメリカがロボットにAIやセンサーを搭載させてドローンや自動運転を伸ばしている中、どうしてもアメリカにはAIで雇用が失われるという危機感があると言われています。それに対して、日本は介護と並んで農業や漁業などの第一次産業に対する少子老齢化による人手不足が激しいわけです。つまり、アメリカではAIを搭載させるロボット分野の開発が制限されている可能性が高い。
そこを日本が国内を中心にいち早くAI搭載の農業・漁業・林業ロボットを開発することで、世界のトップに立てる可能性が高いわけです。注目の会社は佐賀大学などと連携してさまざまなスマート農業の開発大手の「オプティム」。殺虫機能搭載のアグロドローンで夜間での無農薬害虫駆除を目指した実証実験に世界初の成功。
IDCの調べによれば、現在27億ドル(3兆円)の市場が、2020年には120億ドル(13兆円)にも膨らむと予測。第一次産業へのロボットやAIの取組みは、ビッグデータの収集から、それを活用した作業ロボットの開発、高齢者でも取扱いやすい機械の開発、第1次産業に興味のなかった若者たちの招集など、さまざまな効果が得られると期待されています。
ほかにも、ロボットプログラミングを早くから覚えてもらおうとプログラミング教育の分野や、日本のお家芸の元祖である自動車産業には欠かせない「自動運転」の分野なども、もちろん注目されていますが、ソフトウエアの分野ではアメリカが一歩リードしているので、ソフトウエアを使った精密機械製造の分野で、ふたたび世界のなかのものづくり国家日本が証明されることを願っています。
ちなみに今回のラジオ番組では、リスナーのみなさんには「ロボットと言えばアニメ、映画などで何を思い出しますか?」をお聞きしたところ、鉄腕アトム、鉄人28号、ドラえもん、ロボコン、マジンガーZ、ガンダム、エヴァンゲリオンなどのアニメから、ターミネーターや2001年宇宙の旅に登場するHALなどさまざまなロボットについて語られました。いつの時代でもロボットは我々にとっての永遠のロマンなのかもしれません。