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情報銀行で個人情報を安全に活用する時代・・・

2017/04/08 19:00
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■スマホを落としただけなのに・・・

元同僚が書いた小説「スマホを落としただけなのに」が、宝島社の第15回『このミステリーがすごい! 』大賞・隠し玉作品に採用されて発売になりました。原題は「パスワード」だったそうなのですが、いわゆるスマートフォンのパスワードを破られたことでさまざまな事件が起きていくストーリー。ベッキー&ゲス極不倫騒動の際にも話題となった、LINEでのプライベートなやりとりが第三者の簡単にパスワード解除で筒抜けになってしまうという、まさにいつでも起きそうな出来事を題材に軽快なサスペンス・ミステリー小説に仕上がっています。

我々は日常的に個人情報に囲まれて生活をしています。ネットショッピングや銀行口座、LINEなどのソーシャルネットワークなどなど、それぞれに蓄えられた膨大な情報が世界を飛び回っています。「スマホを落としただけなのに」という小説では、そんなプライベートな情報を盗み見することで悪戯を仕掛けていくのですが、そこまでひどい目に合わずとも、自分の個人情報を第三者が自由に活用していたらあまり気持ちの良いものではないでしょう?

一方アマゾンやGoogleなどのIT産業は、まさにこうした膨大な個人情報を巧みに活用して、それぞれの個人に合った商品レコメンドによって世界を我が物にしようとしているわけです。それを日本はただ指を加えて見ているだけで良いものなんでしょうか?

そんなところに出てきたのが「情報銀行」という構想。国を挙げて個人情報を安全に活用することで、世界に負けないIT産業が創り出そうというものらしいんですが・・・。例によって先日ラジオ番組での「情報銀行」特集を元にここに記録しておこうと思います。

■改めて情報銀行とはなんぞや

昨年(2016年9月)に安倍晋三首相を本部長とするIT総合戦略本部の下に有識者会議「データ流通環境整備検討会」が設置されて議論が本格化した話題があります。それが「情報銀行」というものです。

情報銀行は、購入履歴や金融資産、携帯電話の位置情報といった個人情報やデータを、本人の同意を得て管理し、情報を求める企業に提供するサービスのこと。PDS(Personal Data Store)とも呼ばれています。

そもそも、ここ数年でグーグルやアマゾンといった米国企業が膨大な顧客のビッグデータを活用し、市場で『独り勝ち』となっている中、日本企業は相当な遅れを取っており、このままだと、すべての産業で海外勢に情報収集の手助けをしてもらわねばならなくなる恐れがあります。

日本では、個人情報保護法がある意味非常に良く働いているため、こうした顧客データを取り扱う話題になると、まずプライバシー保護をどうするかから始まってしまいます。そしてとどのつまり「どうしても個人情報を漏洩させたくないならネットに繋がなければいい」という結論に達してしまうのです。結局、顧客データが豊富にあれば、こんな便利なことが出来るといった議論がまったく始まらないんです。

対する海外勢は、どんどん個人情報を活用して、さまざまな便利なサービスを次々と夜に送り出していきます。彼らは漏洩など罰金で払っても元が取れるくらいの発想です。そのため日本はどんどん遅れを取っていってしまいます。

そこで国を挙げてプライバシーを守りながら個人情報を活用できる仕組みづくりに着手しようと始めたのが「情報銀行」なんだと思うんです。

■インターネットで便利になったこと、そして活用されるもの・・・

ここでインターネットが普及したことで何が一番便利になったのかを改めて確認したいと思います。インターネットやスマートフォンが日常となって、生活が便利になったことは大きく3つあります。

(1)日々のニュースや話題(情報)を瞬時にいつでもどこにでも移動できるようになった。
  =>これをインフォメーション・テクノロジー(情報技術革命)

(2)連絡・コミュニケーションを瞬時にいつでもどこにでも取れるようになった。
  =>これをコミュニケーションテクノロジー(意思伝達技術革命)

(3)お金を瞬時にいつでもどこでも移動できるようになった。
  =>これをファイナンシャルテクノロジー(フィンテック)(金融技術革命)

ただ、それぞれの技術を考えたとき、実はそのものが便利になったわけではなくて、自分に合った情報や連絡やお金が選ばれて(レコメンドされて)いるから便利なのではないでしょうか? この人にはこのジャンルのニュースを良く見ているからこういうニュースも配信してあげましょう・・・となっているから便利なんじゃないでしょうか?

もし、そういう自分用に選別された情報だけではなかったら、膨大な情報がただひたすらいっぱい来るだけで、その中から自分が知りたい情報を見つけることは不可能なんです。

すなわち、インターネットが普及して一番進化しなければならないのは、それぞれの人達がどんな情報や連絡やお金のやりとりをしているかの履歴情報=>いわゆるビッグデータを活用して(現在ではAIを導入することでビッグデータすら必要なくなってきていますが)それぞれの人に合った情報を選別する技術ではないでしょうか。

アマゾンやグーグルは、情報を知らず知らずのうちに膨大に蓄積して、それらを分析、活用してきたことで、さらなるお客様の満足度を向上させるサービスが展開できるようになりました。では、こういったサービスに伴った情報の蓄積以外には、どんな情報収集の方法があるんでしょうか? そこで「情報銀行」構想が浮かび上がって来たんです。

■情報銀行のしくみ

情報銀行はまさに銀行ですから、自分の情報を預けるという考え方です。情報銀行は、その預けられた情報を運用して企業から利用料を取る。その収入の一部が、情報を預けた人に還元されるというしくみです。

情報銀行で預かる情報は、個人のネットショッピングでの購入履歴やクレジットカードの利用履歴などだそうです。ストレートに言えば「インセンティブをあげるので、ぜひうちの情報銀行にあなたの情報を下さい」という感じです。こうして、さまざまな個人情報を集めることで、海外のビッグデータに対抗しようということのようです。

一見「またまた何考えてるんだ安倍!?いまさら遅いぞ!」みたいに思われるかもしれませんが、意外とそうでもないことがわかってきます。

まず日本人のビッグデータは、当然、情報銀行で集めたもののほうが、アマゾンやグーグルで自然に集まったものより質が良くなるでしょう。また、いまの日本で考えると、高齢者の情報は、さすがにアマゾンなどでは集めにくいでしょうから、60代、70代の高齢者の情報のシンクタンクとしては十分対抗できるものなりそうです。

ただ、アマゾンやグーグルなどと違って、預ける情報は、あくまで個人が活用してもかまわないと思ったものだけなため、例えば、ある人は「家族構成は預けたが、学歴は預けなかった」とかなって、人によって情報のジャンルがまちまちになる恐れもあります。それを防ぐためには、多くの参加者の深い理解が必要になってくるのかもしれません。

さらに昨年1月からスタートしている「マイナンバー」との連携も検討中とのことです。「マイナンバー」は税と社会保障の連携を簡単にして、災害対策に一役買おうというのが大きな目的でしたが、その役割も果たされつつあるので、さらなる活用方法として情報銀行との連携が考えられています。

ちなみに近日中に公開予定のマイナンバーの活用履歴や行政機関からの通知を閲覧できる個人向けサイト「マイナポータル」があります。まずはこのポータルのデータを情報銀行で活用してみたいという話も出ているようです。

海外では、すでにこうした情報を預けて何らかの最適なサービスを提供してもらうものはいくつもあるようです。例えばイギリスの「midata(ミデータ)」やアメリカの「MyData(マイデータ)」やフランスのMesInfos(メスインフォス)などはどれも同じようなサービスになります。ただどれも生活に大きな役割を果たすところまでは行っていないようです。

■情報銀行に託されたこと

海外での成功例もない中、日本の「情報銀行」は果たしてうまく機能してくれるんでしょうか? まだ議論は始まったばかりなので賛否両論あるようです。

ただ客観的に見ると、政府がTSUTAYAのTカードの運営を始めるような感じとも言えます。TSUTAYAでCDを借りる、本を買う、こうした履歴情報がTカードにたまっていく。それをTSUTAYAはさまざまな企業に売って利益を得、その一部がポイントとなってユーザーに返ってきました。それを今度は政府がやることになります。

いづれにせよ、こうした情報収集を政府主導で行うことは良いことだと思います。高齢者の情報を厚くするなどの日本に特化した情報収集ができることや、セキュリティーの問題を納得できるレベルで解決できることもメリットの一つだと思います。さすがに政府が作る情報銀行のセキュリティが甘いということにはならないでしょう。

ただ、政府主導ゆえに逆のこともあります。いまはそれぞれの企業が勝手に個人情報を収集し、メリットを得ているわけですが、こうしたことをすべて情報銀行が中心になって収集するようになるかもしれません。現在さまざまな形で利用されているポイントカードなどが、情報銀行で統一されてしまうのでは?という疑問も出てきます。

「情報銀行」の実現には、もう少し議論が必要なのかもしれません。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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