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スタートから3ヶ月「i-dio」の生活役立ちメディアとしての道のり

2016/06/14 10:00
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■i-dioスタート3ヶ月・・・

私のテーマである「放送と通信の地殻変動」という意味では、みなさまもご存知のように、今年はいろいろ動きが活発です。「ワイドFM」の名称で昨年12月から在京局もスタートを始めた全国AMラジオ局の「FM補完中継放送」は順調に全国各地に広がっており、いよいよこの10月には北海道でも開始を予定しています。

「ワイドFM」とは一線を画して推進されているのが、テレビの地デジ化に伴って空いたV-Low周波数帯(99MHzから108MHz)を活用しての移動受信用地上基幹放送、通称「i-dio(アイディオ)」です。こちらも3月から東京、大阪、福岡でプレ放送が開始され、受信用のWi-Fiチューナーの希望者への配布も順調で、現在までに8万台程度の配布が終了しているようです。

今回は、このi-dioについて、株)エフエム東京 マルチメディア放送事業本部 藤井大輔さんに、現状と今後の展開などについてお聞きする機会をいただきました。

■放送局が送信と受信の両方を手掛けるとは・・・

>i-dioが東京のほか、大阪、福岡で始まって3ヶ月というタイミングですが、現在どんな反応、どんな変化などがあったかをお聞きするとともに、改めてi-dioとしての存在意義や今後の活動状況などをお聞かせ願えますか?

(藤井)良く「i-dioって何なんですか」と聞かれるんですが「移動受信用地上基幹放送」ですとお応えしています。これは制度上の意味。(位置づけとしては)テレビ、ラジオ、移動受信用地上基幹放送という並びのレイヤーの言葉です。地上デジタルテレビジョン(地デジ)とも並びにある言葉です。

「移動受信用地上基幹放送」は新しくできた放送制度で、これの免許を取ったことがあるのは、NOTTV(ノッティーヴィー)とうちしかいません(NOTTVは6月末で終了)。

移動受信用地上基幹放送の特徴は、(1)主に携帯端末に向けた移動受信のサービス、(2)放送です、(3)IPデータキャスト(IPDC)という通信的な送信手法を使っています、のこの3つのポイントになっています。

IPデータキャスト(IPDC)って何なのかというと「インターネットのプロトコルと同じようなものを放送波で飛ばす」というしくみです。

MPEG-2がそのまま飛んで来るのが地デジなんですが、IPDCは、パケットみたいになっていて(パケットという言い方はしないんですが)その中に何を入れるかは自由な設計になっています。

テレビはテレビの映像を変調したものを送ってくださいという免許、ラジオは音声を変調したものを送って下さいという免許。IPDCを使うと、移動受信用地上基幹放送の免許では、どんな形式のデータを送るかの縛りがあまりない、何でも送れる放送、という言い方をしています。

NOTTVは、最後は移動受信用地上基幹放送の免許と、テレビの免許と両方持っていたんですよね。テレビ局が活用しやすいようにしていたんですが、i-dioは、最初から地上基幹放送の免許だけでやっています。

周波数帯は、いわゆるテレビの地デジ化で空いた、V-Low周波数帯(99MHzから108MHz)を使っています。NOTTVとの違いは、もうひとつ、ブロック別放送をします。NOTTVは全国一律免許で、jモバ(ジャパン・モバイルキャスティング)とNOTTV(エムエムビーアイ)という2つの会社で運営。jモバはNOTTVなどを配信する会社。i-dioで言うとVIP(ハード会社)になります。jモバは全国一律サービスで、参入している放送事業者もNOTTVという1つの会社でした。


V-Lowマルチメディア放送の「位置づけ」(株式会社VIP:電波政策2020懇談会 制度WG ご説明資料より)


V-Lowマルチメディア放送の「事業構造」(株式会社VIP:電波政策2020懇談会 制度WG ご説明資料より)

我々は地域性を重視するジャパンエフエムネットワークが母体の一つになっているので、全国を大きく7つのブロックに分けて、ブロックごとに参入できるように切り分けました。これにあたるのが、地域ごとのマルチメディア放送株式会社になります。

この地域のプラットフォームで放送やりたい、例えば関東甲信越ブロックに参入したいとか九州だけやりたいとかそういうことができます。これが地方の活性化にもつながるのではないかと思っています。

>それぞれの放送事業者に提供するコンテンツがチャンネルとなるわけですね。

どうしても現時点では(エンタメジャンルの)チャンネルで参加する人がいっぱいいるサービスのように見えますが、出資してくださっている会社によっては、そういうところではなくて、データ配信のインフラとして活用したり、自治体向けの防災情報の配信も行われます。

いわゆる「防災無線をデジタル化するときに何を使うか」というところで、いろんな会社が参入を始めています。例えば昔、ポケベルと言っていたのが、今はペイジャーサービスって言ったりしますけど、防災用に使われたりしています。TOKYO FMがやっていた「見えるラジオ」も防災用に使っていた自治体がありました。

今回のV-Low帯の場合も、V-ALERT(ヴィアラート)というサービスを用意していて、それぞれの自治体が送信したい情報を打ち込むと、放送波で一斉に送れるサービスになっています。

きめこまやかな情報配信が出来て、あなたの最寄りの避難所はココです、とか細かい情報をデータでも送れるため、そこが強みになっています。

自治体から住民に配布する専用の受信機をご用意しています、自治体との連携で展開する、新たな防災ソリューションとして、マルチメディア放送会社とVIPが推進しています。

>ちなみに、受信用のWi-Fiチューナーは、ホームページ見ると、2月くらいまでに5万台配布され、それが終わって、現在3万台の配布中とありますが・・・。

(藤井)3万台は先日終わったところで、これからも含めて、全部で10万台を配布する予定です。現在開局しているのが東京、大阪、九州なんですが、夏には中京地域(名古屋)での放送が始まります。ここが中日本マルチメディア放送の管轄。このときに残りの配布をしたいと思っています。

ちなみにWi-Fiチューナーはこれだけで受信できるわけではなくて、これとスマホを組合わせて、受信するアプリが必要になります。このアプリも現在は我々の方で制作しています。

放送局で「送信」と「受信」の両方を手がけているのは珍しいかもしれません笑。

■ハッキングされにくい手段としての放送・・・

>アプリってことは、これからいろいろな発展も可能ってことですか?

ちなみにこのアプリは1個だけではなくて、これを開発するためのモジュール部分をコンテンツプロバイダ各社に提供しています。なのでテレビにはフジテレビ専用受信アプリのようなものはありませんが、i-dioでは可能になっています。

また標準アプリでは、音が出たり絵が出たりする程度なんですが、コンテンツプロバイダ(CP)各社から提供されるアプリでは、もっと高度なことができるようになります。なので地デジだったら、データ放送はどれも同じBMLで送信されていますけど、i-dioの場合は、それぞれのサービスに最適なフォーマットを検討して放送できます。


V-Lowマルチメディア放送の「コンテンツ」(株式会社VIP:電波政策2020懇談会 制度WG ご説明資料より)

今参入してる会社でも、超高音質放送を行っててる「TOKYO SMARTCAST」と、ドライバー向けの放送をしている「Amanek(アマネク)チャンネル」で、異なるデータ放送サービスが出来るようになっています。

>「TS ONE(ティーエス・ワン)」というのが超高音質放送のチャンネルですね。

(藤井)高音質の楽曲を聞けて、その場でも買える放送になってます。

もうひとつの車向けデジタルラジオサービスとテレマチックサービスを一緒にしたサービスを提供するのが「アマネク・テレマティクスデザイン」社です。この2社は、全国ネットで番組を配信しているコンテンツプロバイダです。

「TS ONE」には高音質放送に帯域を大きく割り振っていますので、既存のラジオではチャンネルごとに音質が違うということはなかったわけですが、ほかのチャンネルより高音質になります。コンテンツプロバイダに契約していただいた電波帯域の中で、音声に割り当ててる帯域幅を広くして送るんです。

>一方、ドライバー向けのチャンネルはどんなサービスなんですか?

「Amanekチャンネル」も他のチャンネルより音質も良いのですが、データ放送に帯域をより多く使っています。これで何をするかというと、今はまだ専用アプリを出していないので見られないのですが、いる場所によって天気予報の内容が変わったり、喋る内容を変えたりすることができるようになります。つまり聞いている人がそれぞれの地域ごとに違う内容を聞くようになる放送を実現させています。

どうやってやるかというと、「TEXT TO SPEECH」といって、データをテキストで送り、受信機側で発声させます。つまり受信機側に初音ミクのようなアプリが入っていて、人間がしゃべったあとで、「ここからはそれぞれの地域の天気予報をお知らせします」となって、受信機自体が文字情報を音声変換して喋ります。しゃべり終わるとスタジオに戻る。

これをもっとうまく活用していけば、例えば災害があった時に、あなたのいるところは今危ないとか、そういうピンポイントの情報を送ることも出来るようになります。

自動運転時代に、各車(移動体)に合った必要情報をきめ細やかに送れる放送は、まさにi-dioの目指すところです。いま高速道路を走ってたらちょっと先の地域の天気予報を知りたいとか、そういうことをかなりきめ細やかに対応できるようにしています。

気象協会の中に設置されている「Amanekチャンネル」のスタジオには、ビッグデータをひと目で見られるように、ものすごく大きなモニターがあるんです。道路交通情報センターのトラフィックレポーターが大きな画面を見ながら喋ってるのを見たことがあると思うんですが、現在は気象協会のデータと今走ってる車の走行データと、さらに観光地のデータ、渋滞情報などを、地図上に反映させたモニター画面で見ながら放送していて、今後は、さらにそれが3層、4層にまでなったものを自動で放送されるようにしていきます。僕ら(ラジオマン)の仕事がいらなくなるんじゃないかという笑・・・。

また、いまは人間にわかるように配信していますが、将来的にはこれを車載コンピュータに直接配信して車が自分で判断したりするようになりますね。

Amanekの今井武社長は、もともとHONDAで「インターナビ」を作られていた方です。「インターナビ」は通信でつながるカーナビなので、災害の時、津波警報を発信したのに、輻輳が起こって情報がクルマに届かなかった。だったら輻輳のない放送波で確実に届ければいいと、自分で放送局を作ってしまったというわけです。

最終的にインターネットとリンクして車を走らせることになっていったとき、放送波のほうがハッキングされにくいので(放送局まで来なければハッキングできませんから)、新たな伝送路として使えるのではないかと思っています。

■「ながら聴取」から「バックグラウンド活用」へ・・・


藤井大輔さんとi-dio Wi-Fiチューナー(左手)、i-dioスマートフォン(右手)

>最後にこれからの展開やi-dioとして実現していきたいことなどをお聞かせ願えますか?

(藤井)いまいまのみなさんの感想は、またまたスマホ向け放送局を作って、NOTTVの二の舞いじゃないかと思われているかもしれませんが、実はエンタメを楽しむためのものというより、こうした社会的な用途のほうが大きいサービスになっています。

とは言え、一般の方向けのデバイスも普及させないと認知が広がらないので、i-dio搭載スマホも開発しました。SIMフリースマホとして量販店で普通に販売もしています。

ほかにも組み込み型モジュールとしてのi-dioも提供して、IoT時代のインフラにもしていただけるよう活動中です。このほうが役割としては大きいかもしれません。火災報知機にi-dioを組み込んだらどうかといった、突飛なアイデアもあります。

火災報知機ってセンサーが付いているだけで、火を感知したら鳴るだけ。でもせっかく家にブザーが付いているなら地震や津波で鳴ったらいいじゃないかという話になり、鳴らせるためのデータを送受信するのにi-dioを火災報知機に入れてしまおうと考えました。そうすれば火事でも地震でも鳴るじゃないですか。地震・雷・火事のどれでも鳴るようになって、鳴らないのはオヤジくらいだ笑・・・なんて話でした。これは喜んでもらえそうです。

そういった、情報量は多くないけれども、多数の人に確実に一斉に届ける必要があるデータ配信が、IoT時代にはたくさん必要になります。インフラとして、i-dioはすごく通信速度が早いサービスではないものの、放送の特徴をうまく使うと、使い方によっては高い親和性があるわけです。ラジオ屋なりに、いろんな細かいデータを送ってあげていろんな人に使ってもらうことを目指していくということですね。

現在、東京、大阪、福岡が3月から始まって、次始まるのが名古屋。そのあと静岡。広島も準備中です。2020年までに(2019年4月時点での全国の)世帯カバー率78.3%を目指しています。

これからは、何か一つのメディアで視聴覚を専有する時代ではないと思います。ラジオをはじめとする音声メディアは、「ながら聴取」のメディアとして、これからも存在価値を発揮していくと思います。さらに、聴いていない・見ていない時にも、裏でデータを受信して違う仕事で役に立つのがi-dio。生活のバックグラウンドで活用されるメディアとしては、音声メディアと似ているのではないかと思っています。実現したいのは、生活のバックグラウンドで役に立つ放送サービスです。

>なるほど、期待しています。今日はどうもありがとうございました。


(参考リンク)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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