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人工知能は本当に世界を破滅させるのか::「人工知能は知識」「人間は知恵」

2016/01/29 09:30
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プロフィール

土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■今年はドローン元年!?

先日cnetジャパンのある方に、今年のITトレンドについて伺ったところ、2016年は「ドローンビジネス元年」、狙い目は「AI・人工知能」「機械学習・深層学習」そして個人的には『Pokémon GO』だと伺いました。

ホーキング博士が「人工知能の進化は人類の終焉を意味する」と言ったのが2014年の暮れ。それからちょうど1年。ある意味あのメッセージが世の中に人工知能の開発を促進させたとも言えます。

ということで、先日ラジオで特集を組ませていただいたときの資料を元に「人工知能AI」について、現状をまとめておきたいと思います。

■そもそも人工知能が話題になってきた背景・・・

人工知能(Artificial Intelligence ; AI)のアーティフィシャルは「ナチュラル」の反対語、人造の、人工的に作ったという意味。インテリジェンスは「知能」つまり、「人工的にコンピュータ上などで人間と同様の知能を実現させた試み、或いはそのための一連の基礎技術のこと」。

調べてみると、人工知能というものが世の中に現れたのは、1956年の米国ダートマス大学のジョン・マッカーシー教授らが「人間の脳の回路を人工的に作れないか」という議論から始まったと言われています。そこでマッカーシー教授が「AI(アーティフィシャル・インテリジェンス)」という言葉も使いました。

その後60年の間では、まず人間の脳の構造「ニューラルネット」を模して人工知能を作る方法で始まりました。ところが思うように行かず研究が頓挫。そこで考えだされたのが「人間のさまざまな知的行動を分析してコンピュータ上に実装するアプローチ」。つまり人間の行動をいろいろ分析して、こういうときは30%はこうするとか、統計学・確率論的にものごとを作り上げた「ベイジアンネット」というものが開発されました。これがある意味現在の人工知能のベースになっています。

「ベイジアンネット」のような確率論的な人間行動分析の考えは、1990年代からあったようなんですが、ここに来てコンピュータの進化がめざましくなり、ビッグデータ分析を手軽にパーソナルコンピュータレベルで出来るようになったことで、一気に開発が進んでいったわけです。

特に一般の人たちにまで「人工知能」という言葉が話題になっていったきっかけは、、IBMが開発した質疑応答人工知能システム「Watson(ワトソン)」が全米の人気クイズ番組「ジョパディ」に挑戦し、2011年、2回に渡る人間対ワトソンの戦いの末、ワトソンが優勝したことだと言われています。

さらには最初に書いた、一年前の2014年12月の、天才物理学者のスティーブン・ホーキング博士が、「完全な人工知能を開発できたら、それは人類の終焉を意味するかもしれない」との発言。これは大きな反響を巻き起こしましたよね。

現在ではほぼ毎日のように、Apple、Google、Microsoft、Facebookなど名だたるIT企業が次々と「人工知能開発会社」を買収の記事。例えば、Googleは「ディープマインド社」を買収して「Googleディープマインド」を開発。フェイスブックは「Wit・ai(ウィットアイ)社」を買収して日常会話を認識させるサービスを開発中。Appleは10月になんと「VocalIQ(ボーカルアイ・キュー)」という音声認識技術の会社と「Perceptio(パーセプシオ)」という画像認識の会社を立て続けに買収、AppleCarの技術に役立てるのではないかと言われています。

そんな中「野村総研」は12月に、今後10年ー20年の労働環境予測では、国内労働人口の49%に当たる職業について、人工知能やロボットで代替される可能性が高いという発表をしました。

もはや我々は「人工知能」を意識せずに生活出来ないところまで来ています。

■人工知能に関するキーワード

ここで「人工知能」の話題を読んでいくときに知っておかなければならない3つのキーワードを紹介したいと思います。

>「2045年問題」:

コンピューターチップの性能が18ヶ月(1.5年)毎に2倍になると予測した「ムーアの法則」に基づくと、2045年にコンピューターの性能が人間の脳を超えるというシミュレーションから、2045年に人間を超えるコンピュータが登場したとき、我々はどんな準備をしておかなければならないかという問題。

>「シンギュラリティ」:

「技術的特異点」と翻訳されていますが、コンピューターの知能などテクノロジーが人間を超える現象、その瞬間のことを表すことば。人工知能は「シンギュラリティ」を実現させるための最も可能性の高い方法だね・・・とか使います。ロボットの人工知能が人間の能力を超えてシンギュラリティが実現するのと、バイオテクノロジーで人間の脳を進化させてIQ100万とかにしてシンギュラリティを実現させるか、シンギュラリティに至るにはいろいろな道があります。今後50年以内に訪れると言っている「シンギュラリタリアン」もいます。

>「ディープラーニング」:

深層学習と呼ばれる、脳神経細胞のネットワークを参考にした機械学習のテクニック。80年以上前から考え方自体はあったようなんですが、ここ数年のビッグデータの処理システムの飛躍的進化で、使い物になる「ディープラーニングシステム」が次々と誕生しているんです。

特に画像認識の技術で成果が出ていて、現在では人間の認識を超えるレベルのものが、すでにGoogleなどで開発されています。実際に我々も使っている「写真検索機能」はでディープラーニングの技術が使われていると言われています。この技術によって、写真を読み込むと瞬時にそこにどんな物が写っているかを認識できるようになります。

例えば「顔が丸い」「耳がある」「ひげがある」「顔が毛で覆われている」これで4層深くなりましたよね。これをどんどん深くしていくと「ネコがベッドで座っている」ということがわかるようになるというわけです。

画像認識が完璧にできるようになることで、ロボットの目が完璧になって、自分で考えてものを掴んだり考えたりできるようになる・・・。ある意味、人工知能の実現は「画像認識」の実現とも言えるんです。

■日本では人工知能はどうなっているか・・・

ここで、人工知能の開発について、我が国日本の事例をピックアップしてみました。

>国立情報学研究所の「東ロボくん」:

国立情報学研究所が2021年までに東大の入試を突破することを目標に開発された人工知能。11月に大学入試センター試験模試で偏差値57.8、数学と世界史の計3科目で偏差値60を超える成績を記録したと発表しました。

>ソフトバンクのヒト型ロボット「ペッパー」:

人型ロボットと言えば、以前はホンダの「ASIMO(アシモ)」だったり、その昔は、Sonyの「AIBO(アイボ)」だったり「QRIO(キュリオ)」という製品化はされませんでしたが2足歩行ロボットもいました。

ところが、今では人型ロボットと言えば、昨年6月からソフトバンクが発売しているこのヒト型ロボット。毎月26日ころに1000台づつ発売しているが、12月まで7ヶ月すべて完売。今月の1月28日分も完売。

公式ページによれば、「ペッパー」は、人間とのふれあいの中で自律的に反応しながら行動する自立型ロボット。表情と声からその人の感情を察する「感情認識機能」や、自主的にネットから最新ニュースや天気などを取り込んで会話する機能などが備わっていて、すべてクラウドコンピューターでつながったAI(人工知能)上の「感情生成エンジン」でコントロールされるとあります。

>三井住友銀行:人工知能「ワトソン」を活用したコールセンター業務:

一方、企業での人工知能の活用としては、「三井住友銀行」が9月から、IBMの人工知能「ワトソン」を活用してお問い合わせ対応の効率化の実用検証を始めています。

ワトソンに銀行の専門用語約5000語とQ&Aの例を1500件、業務マニュアル1500件などを登録し、音声認識で得た問い合わせに対して、瞬時に5つの解答例を表示できるようにしたそうです。

>新宿伊勢丹:人工知能接客プロジェクト「SENSY(センシー)」:

新宿伊勢丹は、9月に人工知能「SENSY(センシー)」による接客サービスを実施しました。まず、人工知能「SENSY(センシー)」をインストールしたタブレット端末を持って接客します。お客様にタブレットでどちらの商品が好みかを選択していってもらうことで、その人の好みを学習し、オススメの商品を紹介するというもの。12月には、好みの学習をすると、トータルコーデまで考えてくれるアプリも公開して誰でもダウンロードできるようになっています。「SENSY×ISETAN MEN’S」

■世界の人工知能市場の注目分野

アメリカの市場調査会社「トラクティカ」の予測によれば、世界の人工知能市場は、2015年が約2億ドル、これが約10年後の2024年までに111億ドル(1兆円)にまで増加すると発表。さらに現在主流の機械学習による人工知能技術以外の技術発展も加味すれば、この10倍(10兆円以上)と予想されています。

では、そんな巨大市場に我々は、どう向き合っていけばよいのでしょうか。そのためには、人工知能市場が注目している分野を知っておく必要があります。それを私なりにピックアップしてみました。

まず「医療」の分野。ここではさまざまま形で「人工知能」の活用が模索されています。例えば、高度な画像認識による、手術ロボットや健康診断ロボットの開発。また、膨大な臨床データによるビッグデータ分析からIBMの人工知能システム「Watson(ワトソン)」の活用が始まっていて、がんの治療などに威力を発揮始めています。今後は、人工知能医療診断の設備のない病院には人も行かなくなるかもしれません。

つづいてもうひとつ注目したいのは「自動運転」。これはすでにどんどん実用化も始まっています。もともと自動車などの運転は、機械的な作業がほとんどの行為なので、機械化されるのも時間の問題。道路を行き交う自動車や乗り物がどんどん自動運転になることによって、交通事故が激減し、渋滞も緩和されていきます。エコカーが標準化されると共に、人工知能カーもこの10年であっという間に標準化されるのではないかと言われていて、そこにトヨタやAppleなどが名乗りを上げているわけです。

そして「農業」の分野にも注目。植物や動物を育てるということは、これまで人間の経験や勘でやってきました。これからは、先人たちが経験した膨大なデータを活用することで、効率的な育成方法などが誰でもできるようになる。それによって人間が生きていくための環境がさらに整備されていく。特にディープラーニングなどの画像認識技術は、田畑の育ち具合や害虫駆除などに大いに力を発揮してくれることでしょう。

■我々はどう「人工知能」と向き合っていけばよいのか・・・

ということで、このままでいくと、10年後、20年後には、世の中は便利になるけれど、我々の仕事の約半分は人工知能ロボットに取られて、ある意味、ターミネーターの人工知能「スカイネット」が世界を支配してしまたかのように、我々も人工知能に支配されてしまうのではないか、と思われがちなんですが、そうはならないと思うんです。

つまりすべてが置き換わるわけではないということ。「知識」は人工知能にかなわない時代が来るかもしれないが「知恵」までは人工知能には置き換えられない。主導権はあくまで人間が持っているということなんです。良くするも悪くするも結局人間次第だと思うんです。

ものごとを人工知能で置き換えることを、雑誌ワイヤードの設立者ケビン・ケリー氏は「コグニファイ(認知化)」と名付けました。(cognition=認知)

例えば「音楽」をコグニファイしても楽しいものができるとは思えないというんです。自分がよく聞く音楽を分析して、もっとも自分が好きなメロディの楽曲を人工知能が作曲してくれる・・・とか、そんな自分だけしか知らない曲を聞いてもおもしろくもなんともないわけです。

つまり「コグニファイ」する(人工知能をどう活用する)のは、結局人間の知恵に懸かっているわけです。いかがでしょうか。人工知能で「コグニファイ」することは、本当に世界を破滅させるんでしょうか。いや「コグニファイ」しないほうが破滅する恐れが大きいと思えてきました。みなさんはいかがでしょう?


(参考リンク)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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