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JASRAC「独占」時代の終焉、どうなる日本の音楽業界、著作権管理・・・

2015/11/12 10:00
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■エイベックスがJASRACを一部離脱!?

10月16日、音楽業界に震撼が走りました。エイベックスが日本音楽著作権協会への委託を解消し、所持する楽曲約10万曲を、子会社化した系列の「イーライセンス」に管理を移すことがわかりました。

現在音楽メーカーでの売上ではエイベックス・グループ・ホールディングスが約490億円(2014年度オリコン調べ)でトップ。売上占有率は17%と市場の6分の1を占めている。そんな会社の楽曲の管理をJASRACから引き上げるというのだからじっとしてはいられない。

今年は音楽配信についても「AWA(アワ)」や「LINE MUSIC」「Apple Music」など本腰を入れる姿勢を見せる音楽業界だが、エイベックスの著作権管理業者の移動は何を意味しているのでしょう。そしてこれからの音楽業界はどこに向かうのでしょう。

先日、私の出演しているラジオで特集を組んだときにかなりの反響をいただいたので、改めて専門家の方のお話も加味してここでご紹介したいと思います。

■音楽著作権の開放を求める動き・・・・

JASRACの創立を調べると1939年(昭和14年)、折しもこの年は、満州とモンゴルの国境にあるノモンハンで満州国軍とモンゴル・ソ連軍の大規模な衝突、すなわち「ノモンハン事件」が勃発した年、つまり第ニ次世界大戦の始まりの年でした。

実は翌年の昭和15年には幻となった「オリンピック東京大会」のNHKでの実験放送が準備される中、日本では海外の音楽が使えないような状態になっていたんです。それは1931年に突然来日したドイツ人教師のウィルヘルム・プラーゲという人がヨーロッパの著作権管理団体より日本での代理権を取得したと主張して、楽曲使用料を求める活動をし、それがあまりに法外な値段だったため、ついに海外楽曲は使えなくなっていたんです。

そこでなんとかしなければということで、JASRACの前身である「大日本音楽著作権協会」が1939年に設立され、日本の音楽著作権管理が始まったというわけです。このとき文化庁が音楽著作権の仲介に他社の参入を認めなかったため、この「大日本音楽著作権協会」のちのJASRACの独占業務となっていったわけです。

ところで、音楽を作った人はJASRACに登録します、すると音楽を聞きたい人も使いたい人も、特に作った人に断らずに自由に聞いたり放送で流したりすることができるようになります。JASRACではこれを「信託業務」としています。良く委託業務という言葉を聞くと思いますが、もしこれが「委託」だったとしたら、音楽を聞いたり放送で流したりするたびに、JASRACを通じていちいち作者に断りを入れる必要があります。ところが「信託契約」だと、JASRACに登録されているということが確認出来ただけで、作者に断る必要もなく自由に聞いたり放送したりできるわけです。これがある意味日本の音楽著作権管理の最大の特徴になってるんです。

こういったことがまかり通ったおかげで、日本の独特な音楽文化が他の国よりも発展したとも言えるわけです。欧米の音楽より自国の音楽がこれほどまでに大きなビジネスとなっている国は、たぶん、日本を置いてほかにはないともいえます。

ところが当然のことながら、これを良しとしない人たちも多くいるわけです。そのため、これまでにももっと著作者が権利を主張できるようにできないかなどの動きも起きていました。

そして2001年(平成13年)、小泉政権時代の「規制緩和政策」の一環で「著作権等管理事業法」が施行され、JASRAC以外の企業でも、登録さえすれば「音楽著作権の管理」をビジネスとしてやって良いことになったわけです。

ここから新たな音楽著作権管理会社が登場します。そのひとつが「イーライセンス」そして「ジャパン・ライツ・クリアランス(JRC)」。ちょうどインターネットが普及を始め、インターネットにおける音楽配信や音楽ダウンロードが始まったばかりのころで、こういったデジタル音楽に関する著作権処理をどのようにしていくかが問われていた時期でした。そこに新規参入した管理会社は食い込んでいきました。

■大塚愛の「恋愛写真」騒動

そんななか、2006年10月にエイベックスがリリースした大塚愛の新曲「恋愛写真」の著作権管理をイーライセンスに委託したところ、大変な騒動が起きました。この楽曲がJASRACの信託楽曲でなくなったため、放送では流すことができないということで、全国の放送局が楽曲のオンエアを拒否したんです。

放送するためには作者の許諾や利用料の支払いが必要になるわけですが、「恋愛写真」を放送するためには、いちいちイーライセンスを通じて作者に許諾を取る必要が出てくる上に、利用料も別途支払わねばならなくなったからです。

ちなみにJASRACは、放送で使用する際には、放送局の年間売上の1.5%を支払えばその都度の支払いは生じないという方式(包括契約)を取っています。つまり放送局にとってみると「恋愛写真」をかけようがかけまいがJASRACに支払う利用料は変わらない。しかし「恋愛写真」をかけると余計に支払わなければならないかもしれない・・・。

この騒動がもとで、「恋愛写真」の放送使用料を無料にして、一旦は放送されるようになりました。しかしエイベックスはその後、イーライセンスとの契約を打ち切ることになったわけです。これを受けてJASRACは独占禁止法に違反しているのではないかという疑惑が生まれ、イーライセンスはJASRACの包括徴収契約は独占禁止法違反だとして公正取引委員会に審査を求める裁判を起こしました。

2009年には、独禁法違反にはならなかったものの、徴収方法を改めるよう求める排除措置命令がくだされましたが、その後2012年に「命令取り消し」という異例の措置が取られ、これはあまりにへんだと、再びイーライセンスが審議取り消し訴訟を起こします。これを受けて審議は最高裁にまで上っていき、ついに2015年4月、最高裁でJASRACの独禁法違反が確定しました。これが今年の春の話です。

これで約80年近くに渡るJASRACの独占的な音楽著作権信託業務の幕が閉じられることとなったわけです。

■エイベックスによって新たな音楽著作権管理の時代の火蓋が切られた・・・

10月に発表になったエイベックスの取り扱う約10万曲がJASRACから離脱するという話題は、この最高裁での判決を受けての措置だったと思われます。

ついに音楽著作権の新しい展開を始められる時代になった、だからわれわれが先人を切って新しい音楽ビジネスの世界を築きあげます、エイベックスはそう世の中にメッセージを発しているんだと思います。

JASRACの独占的な著作権管理業務によって、これまで権利者がなかなか理解できなかったこと、その一つは、ちゃんと利用された分だけ著作者に支払われているのか。

みなさんもご存知のように、音楽作者が主張できる主な権利は、放送権、演奏権のほか、録音権、貸与権、出版権、そしてインタラクティブ配信権と業務用通信カラオケ配信権(この2つをまとめて公衆送信権)、などがあります。

そんなにあるのに、どこでどんなふうに使われたかの正しいレポートが存在するのか。これまではあくまで利用者からの報告をまとめたものがすべてだったのではないか。それぞれで使用したレポートを管理者側から調査することは、膨大にお金がかかることになるためこれまで見送られてきたのではないか。

だったら、この権利は、信用のおける会社にお願いしてちゃんと調査してもらおう。利用料も支払ってもらおう。そういうことを決めるのは作者ではないか・・・。これを「支分権」と言うんですが、列記とした作者の権利なんです。

■これから可能性を秘めるインタラクティブ配信権・・・

現在の音楽著作権収入の主な科目は「放送利用料」と「演奏利用料」だということなんですが、これから可能性を秘めているのが「インタラクティブ配信料」。これはいわゆるインターネットのストリーミング配信やダウンロードで利用されたときに徴収される使用料です。

実は、音楽CDの売上は年々右肩下がりで落ちてきているにもかかわらず、JASRACの売上は上昇中。なぜかというと、放送利用料は利用回数に関係なく放送局の売上の1.5%。放送局の売上もある程度安定している上に、放送局は増え続けている、特に衛星放送など。また演奏利用料も、都心の劇場が激減して問題になっているとはいえ、全国のライブハウスなどはどんどん増え続けている。演奏料はそこから一定の割合で徴収しているわけなので、想像するにJASRACの売上が上がるのは当然かもしれません。

中でもインターネットでの利用料は、先日もアップルミュージックやGooglePlayミュージック、Youtubeレッド、LINEMUSIC、AWAなどなど、これからも増え続けることは間違いない。つまり作者に戻ってくるお金も増えなければならないはずなんです。

そうすれば、また良い音楽が作れる。良い音楽が普及すれば、音楽好きが増える、そうなればまた利用者も増えて作者に戻ってくるお金も増える・・・・。

そのために重要なことは何でしょう・・・。

著作権使用料を正しく徴収して、正しく作者に分配すること。これまでが間違っていたということではないのですが、音楽使用料の収入が増えているなら、音楽業界ももっと潤っていいんじゃないの? ということです。

■われわれは音楽とどう向き合っていけばよいのか?

こうした音楽著作権の活用方法が変わっていく中、我々はどう音楽と向き合っていけばよいのでしょうか。それは、音楽と接したときに、我々一人一人が、その音楽の作者をちゃんとサポートできているかどうかを考えることだと思うんです。

まず、誰かが作った音楽を聞くこと、CDなどで購入したものを個人で聞いたり携帯プレーヤーにコピーして聞く、レンタルショップで借りたものを個人で聞いたりコピーすること、問題ないですね。あなたが支払った代金の一部が著作者に渡っていきます。

続いて、カラオケで好きな曲を歌うこと、これもカラオケで支払ったお金がちゃんと著作者に分配されます。カラオケ屋さんでは、完全コンピュータ化されていますから、それぞれの楽曲が何回歌われたかを随時チェックできているので、今後使用料の徴収方法が(包括契約から回数契約に)変わっても対応できます。

では、ライブハウスで音楽を演奏する場合はどうでしょう。現時点でJASRACに登録されている楽曲については、ライブハウスで演奏した場合、自分の曲だろうが他人の曲だろうが使用料をJASRACに支払わねばなりませんが、JASRAC登録楽曲でない場合、例えばイーライセンスの登録楽曲だった場合、これはJASRACに徴収して貰う必要はないので、イーライセンスがどんな契約をしているかによって、どう支払うか変わってきます。このあたりからこれから変わってくる可能性がありますね。

今回のエイベックスの動きを受けて、さらに新たな参入者も出てくるかもしれませんし、これまでの音楽著作権料に関する構造改革も進んでいくと思います。我々リスナーはこうした動きの中でも、常に音楽の作者をちゃんとサポートできているかどうかを考えること。これが今後の日本の音楽業界を繁栄できるか、衰退させてしまうかにつながっていく・・・。良い音楽が溢れている世界は、我々の手中にあるんです。


(参考リンク)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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