■人は誰もが自分の「好き」を見つけたい・・・
IT使いのスペシャリストでラジオパーソナリティの吉田尚記氏、音のQRコード「トーンコネクト(Tone connect)」を生み出した株式会社トーンコネクト社長CEOの加畑健志氏、そしてスーパー大学生のTehuさんをメンバーに、最近気になるネットとラジオの近未来をトークセッションする月例会「トーンコネクト・トークジャム(略してトンコネ・ジャム)」。Tehuさんの後輩の同じく天才学生の矢倉大夢(やくらひろむ)さんも正式にレギュラーメンバーに加わっていただいています。
世の中に溢れかえる情報をもっと使いこなすことができないのかという疑問から始まった今回のトンコネジャム。前半の議論では、情報を知ることやそこからアイデアを生み出すには、直観やセンスだけではなく、それ相応の技術が必要だということ、そして「知的ラウンドワン」はそれら情報を得る「テクニックを学べる場所」のメタファーであることが判明。
そして「知的ラウンドワン」に行く動機として、人は誰もが自分の「好き」を見つけたいからという結論に至りました。これを受けて吉田さんがまさに次回作はこれをテーマにしようと雄たけびをあげました。
今回は人はなぜ「好き」を見つけたいのか、見つけるためにはどうすれば良いのかに迫ります。
■子供と年寄りは「好き」が見つけられる・・・
(吉田)「好きとは何か」こういう話をすると思い出すのが、作家の倉本美津留さんの話。倉本さんの今の夢ってビートルズになることだって言うんです。
ビートルズになるって言われたら確実に誰も失笑ですよね。何故なら、実現可能かどうかを頭で考えてしまうから。でも実現可能の範囲で「夢」とか語れないと思うんです。だからそんなものさしで測ってしまうことがすごく間違っていると思ったんです。
>実現不可能な夢を追いかけることが「何かを好きになる」ということ・・・。
(吉田)倉本さんは、世の中に存在する「Bなになに」の中で一番テンションが上がるものが「Beatles」だってだけなんです。ビートルズになるためなら何でも頑張れる。これが正しいモチベーションのありかただと思ったわけです。
>みんな子供の心に帰れば「好きになる」ことが思い出せますね・・・。
(吉田)銅像になりたくて生きている子供はいません。故郷に銅像を建てて欲しいというモチベーションは大人だから考えてしまうこと・・・。
>倉本さんは知的ラウンドワンを越えていますよね。知的ラウンドワンの必要がない。
(Tehu)でも(知的ラウンドワンが本当に必要な人を)どうやって呼びこむかが問題。何かが好きであることを気づかせるというか・・・。そう考えると、たぶんそれを唯一うまくできるのが小中学生なんですよ。
小中学生のころは、何が好きなのか気付けと言ってもだめなんだけど、仕事とか大人に対する漠然としたあこがれをダシにすれば自然に好きなものが見つかる・・・。これが「キッザニア」じゃないですか。
キッザニアって職業体験の場と言われますが、そんなところに何故みんな来るかというと、もちろんある特定の職業に憧れてくる人もいると思いますが、ほとんどは漠然とした仕事とか大人に対するあこがれだけで集まって来るんです。その結果、自分の思いもよらぬ体験ができてこれおもしろい=好きとなるわけです。
>小中学生向けの知的ラウンドワンは「キッザニア」なんですね。
(加畑)キッザニアは仕事の中の楽しい部分だけを抽出して体験させることに意味があるわけですが、上司に怒られるとか、嫌な客が来るとか辛いキッザニアもできたら面白いですね。
(吉田)「ツラザニア」ですね笑。
(Tehu)人生の辛さを体験できるテーマパーク笑。
>ところで、子供(小中学生)の段階は、仕事や大人へのあこがれが共通しているのでキッザニアのような形で機能するんですが、それより大きい中学生や高校生、あるいは大人の場合は、何を動機に知的好奇心を掻き立たせるのか・・・。
(Tehu)何なんでしょうね。虚無感に苛まれた老人はカルチャーセンターに行き、虚無感に苛まれた若者は部屋に引きこもる・・・。
(矢倉)老人がカルチャーセンターに行くのは、退職したらそこに行くみたいなモデルがあって、それに対する、小中学生の仕事へのあこがれと同様に、好きが見つかるということなのでは・・・。
(Tehu)リタイヤ後の老人にも老後の楽しみというモデルありますね・・・。
■人は好きになるためのメソッドが必要・・・
>ようやく子供と老人はなんとかクリアしました。
(吉田)老後の楽しみ、大人になる楽しみというフレームは世間も納得、自分も納得できます。
>以前、好きとはっきり言うと突っ込まれる要素がいっぱになるから言えないみたな話してましたね。子供も老人も突っ込まれても気にならないから「好き」を見つけに行ける・・・。
(加畑)だから普通の大人が「知的ラウンドワン」に行って好きなものを見つけるという行為は、わざわざ自らを恥ずかしい場所に突っ込むことなんですよ。あなたはこれが好きなんですねとにこやかに言われると、すげーこっぱずかしくなる。何でお前に言われなきゃなんないんだよ、という気分になる。
(吉田)ちなみに僕は、恥ずかしさを通り越してるから、アニメやアイドル大好きというのをすげー言ってるわけです。それが仕事だし、それを言った瞬間まわりはふわっとなる感じも含めて、僕にとってはそれも(意外性として)プラスになるわけです。でも、それ言えない人がいっぱいいるんだということを今更ですが気づきました・・・。
(加畑)相手の受け取り方にも問題があるんです。自分が好きだということに対して、それを聞いた側がなにかリアクションしなければならないというプレッシャーもある。
「あぁそんなんだ、ふぅーん・・・」みたいに答えると、あんまりこの話題に興味ないのかなと思われてしまう気がするし、「ああそうなんですか、すげー」みたい積極的に行くと、そんなに興味もないんだけど、それに突っ込まれても困るなと思う。
どっちにせよ答えにくいという経験があるから、人に対して「好き」とはっきり言わないほうが、相手に気を使わせないで済むとなっていくわけです。
>相手に気遣って逆に「好き」を言わない・・・
(吉田)「好き」と言うのは、僕はアニメが好きですが、自分で言いつつアニメのここが好きだとか分析的にとらえられているかと言うと、無意識の中では好きなことは分かっても、何故好きなのかは言葉にならない・・・。
先日宇野(常寛)さんと話してて、どうやら僕は「脚本中毒」だということに気づきました。アニメは人が作ってないものがひとつも映り込んでない。そこから得られることは作家的な興味、すなわち人がなにを考えているのかに興味があるということだったんです。
そんなこんなでようやくわかってきたんですが、そこにたどり着くまでに、僕でさえこんなに時間がかかる・・・。常にめんどくさいことばかり考えている僕でさえ・・・。ということは、これをメソッド化することができるんじゃないのか・・・ということですね。
>まさに『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』が人との接し方のメソッドだったのに対して、「好きになるためのメソッド」を吉田さんの経験から作り出せばいいのでは・・・。何かを好きになることは、偶然できることではなくて、スキルなんです。だからメソッドを踏めば、誰でも好きなものをみつけられる。幸せになる。「なぜ、何かを好きになると幸せになれるのか」。次回作はこれじゃないですか?
(吉田)これですね、好きも技法にしたかったんですよ。好きという気持ちのチカラを利用して日常を楽しくする方法・・・。
実は『なぜ、この人と話をすると楽になるのか』の本に対する反応で多いのが「友だちができないんですよどうすればいいですか」とか「あの人と友達になりたいんですけどどうすればいいですか」なんですが、実は、そのことはあの本には書かなかったんです。あれを書いた時点では、それは理論じゃない、その部分は不思議のままでいいと思っていました。
話ができる知り合いが何百人とかできれば、友達がいないことはあり得ない・・・。
>あの本は、誰とでも話ができるようにするためのスキルアップ本ですからね。そこから話し相手をたくさん増やしていけば、次期にその中から友達が生まれるという理屈ですね。でも「友達を作りたい」という欲求を満足させるためには、話が出来る相手を見つけるだけではだめなんですよ。「好きな」話し相手を見つけたい、だということですね。
(吉田)「好き」に関しても、あの本と同じやり方でできますね・・・。
■「好き」が言える日本人・・・
(加畑)それで思い出しましたが、「生理的に嫌い」は言うけど「生理的に好き」とは言わないですね。
(吉田)好きなことは全部「生理的に好き」なんですよね。「好き」とは生理的なことなんですよ。
(加畑)論理的に好きというのは使いませんね・・・。
(加畑)それに対して、嫌いは「論理的に嫌い」もある・・・。
(矢倉)論理的に嫌いになるものが多いからこそ、生理的に嫌いなことと分けて言うんですね。
>「好き」は生理的に好きしかないのが重要・・・。
(吉田)こいつは論理的に嫌いだけど憎めない・・とかありますよね。
(Tehu)本当に好きなことは論理では説明できない・・・。
(吉田)いまわかった、さきほど「生理的に好き」とは言わないと言ってましたが、それは「もの好き」と言うんですよ。もの好きがいいんですよ・・・。
僕は携帯の料金プランとか考えるの超好きなんです。でもそれを考えるために喫茶店で500円払ったらそっちのほうが高かったとか当然なるわけです。これが「もの好き」ですよね。
(加畑)僕の場合はOSのインストールが大好きなんですが、行き詰まるといつもOSの再インストール。絶対時間がかかるんですが、そうしてしまう。これも「もの好き」。
(吉田)僕は人と会って話をすることが仕事だから、好きなことをはっきり言う人に信頼感を得ますね。何かプロフィール的なことを聞くよりも、ちゃんと物事を考えている人なんだなとわかるからでしょうね。なんか結論が出た気がしますね・・・。
>なるほど「好き」をはっきり言える人になるためのメソッドを紡ぎ出せば、みんな幸せになれそうですね。今日はありがとうございました。
なぜ好きなことが見つかると楽しくなるのか、好きなことがある人のほうが信頼されるからなんです。好きになるメソッドを修得すれば、誰もが自信を持て、幸せになれる・・・。まさに「なぜ、何かを好きになると幸せになれるのか」ということがはっきり見えた気がします。
(参考リンク)
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■Tehu
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■Toneconnect
-
■吉田尚記・ミュ~コミ+プラス
-
■吉田尚記Blog
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■吉田さんの新刊本
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■吉田尚記の場外ラジオ #jz2