お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

家電の未来を想像してみたら「萌(もえ)家電」だった:「Kadecot(カデコ)」が創るスマートハウスの明日・・・

2014/12/11 14:00
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
ブログ管理

最近のエントリー


■スマートハウスの実証実験がもう我が家にも・・・

年末になると暖房を増やそう、新しい炊飯器買おうなど何かと電気を多く使う機会が増える・・。そんな中、「電力の見える化」に興味を持つ機会が増えているのではないでしょうか。

10月のあたまに、私の家に一枚のチラシが舞い込みました。それはある会社からの「省エネ実験参加募集」のお知らせでした。チラシによれば「ご家庭の電力を見える化しませんか」というもの。

いわゆる電力の効率利用としての「スマートグリッド」普及の一環としては、政府が2016年までにスマートメーターを4000万台導入すると発表。それを受けて経産省は、2016年の電力の自由化に向けて「大規模HEMS情報基盤整備事業」を始めるにあたりこの8月にこれからの約2年間の実証実験を運営する事業者を採択。

「NTT」「KDDI」「ソフトバンク」の3キャリアを始め、パナソニック、東急電鉄、凸版印刷、セブン&アイ・ネットメディアなど名だたる事業者が参入を決めました。うちに来たチラシもその一社からのものでした。彼らの支援のもと全国一般家庭約1万4千世帯に「HEMS」を設置しての実証実験が今始まろうとしているわけです。

そんな中、脳科学者の茂木健一郎さんなどが所属する「ソニーコンピュータサイエンス研究所」、通称「Sony CSL」でこれからのホーム家電ネットワーク(スマートハウス)を想定した最新サービスを研究している方がいると聞き取材して参りました。

「Kadecot(カデコ)」という名称のホームサーバーアプリ。チラシには「ホームハッカー向け」と書かれています。「Kadecot(カデコ)」は、研究の始まりが「萌(もえ)家電」だったという経緯から「家電のマスコット=カデンコット」を語源としているそうです。萌家電とかマスコットとかスマートハウスとどんな関係があるのか、このプロジェクトを統括しているソニーコンピュータサイエンス研究所・アソシエイトリサーチャーの大和田茂さんに話を伺いました。

■家電のAPIを作ること・・・

>大和田さんが「Kadecot(カデコ)」を始めたあたりのいきさつからお話しいただけますか?

(大和田)最近ネットワークにつながる家電が増えてきています。それに限らず家電というもの自体も家電の枠からはみ出すものがいっぱい出てきていると思うんです。

その筆頭は「ルンバ」だと思うんですが、全自動で掃除が出来てかつ人間がするより細かいところまでしてくれるというエポックメイキングなものでした。

でもルンバは単なる家電としてだけではなくて、マスコット(ペット)みたいで、人によっては愛でちゃってる人まで現れた・・・。そんなところが特に面白いと思ったんです。

ちょっと扉を開けていると外に脱走してしまったり、ケーブルに引っ掛かってピーピー泣いてたり、給電台に帰れなくて力尽きたり・・・。そういった家電の機能以上のものを求めている人が出てきている。そんなニーズがあると思ったんです。

一方、ルンバのもう一つ面白いところはAPI(アプリケーションプログラミングインタフェース)が付いている(公開されている)こと。一般的には分かりづらいかもしれませんが、自分でプログラムを書けば好きな動きをさせられる。この部分が研究者やモックアップ作成者、ハッカーなどに受けているところもある。私の出身(大学の)研究室ではルンバをジェスチャーで動かせるようにしたりしていました。

APIがあること、これが家電の価値を高めている、APIがあることで(家電を)もっと可愛くすることもできるし、機能も向上させられる。ひいては家電を作った人が想定もしなかった使い方をする可能性まである。家電のAPIに非常に興味をそそられました。

ルンバ以外でも今では「hue(ヒュー)」という色が変えられる照明も有名です。これにもAPIがあって(公開されていて)APIをたたいたときの反応がものすごく良い、すぐに反応してくれるのがうれしい。

いろいろなものにAPIを付けてみる。エアコンだとか電動ブラインド、テレビ、分電盤などに使いやすいAPIを付けてみる、これが現在の私の研究活動になっています。

大和田さん
大和田茂氏

>大和田さんは大学を卒業されてからすぐにSony CSLに入所なさって、ここで研究を始めたということなんですが、大学の研究室でやっていたことと、今やっていることとは別物、それとも延長線上にあるもの?

(大和田)僕は学生時代は、UI(ユーザーインターフェース)はやっていましたが、専門はCG(コンピュータグラフィックス)だったんです。

入所してすぐに当時の所所長から「もうCGは終わったよね」とか言われ、何かほかのことやったほうが絶対いいよという感じだったんです。ただ強制することはなく、アドバイスとして受け止め、結局は自分で研究テーマを決めろということになったわけですが、僕自身も言われてみれば、CGの分野って写真のようにリアルにする技術がすでに10年前から出来ていて、まだ誰も手をつけていないところはどこかと探すほうが大変だった。見つけたもの勝ちのところがあって、研究するには厳しいかなと・・。

入所して最初はふらふらとメディアアートみたいなことをやってくだらないガジェットなんか作ったりしていたんですが、あるときふっと「萌(もえ)家電」と言ってみたところ、かなり受けが良かったので、ひょっとしてこの分野あるんじゃないかと思ったわけです笑。

その反応を見ながらずずず~っと(萌家電)にはまって行ったという感じですね。

>始まりがまさに「萌家電」だったわけですね。

(大和田)「萌家電」と言ってしまってあとには引けなくなってしまった・・。今では楽しんでやっていますが笑。今まで出会ったことのないタイプの方々がたくさんいるジャンルですから・・・。

結局(社内で)萌家電に反応してくれた人は、ネットワークにつながった家電のその先に何があるかを知りたがっている人だということがわかった。特に家電業界の人にとっては、これから家電がどんどんネットワークにつながって行くとは聞いているが、それで何が良くなるのかいまいちピンと来ていなかった。自分たちで開発しているにもかかわらず・・・。

彼らは家電アプリの世界を掘ってくれる人を探していたわけです。それは今も変わりません。

家電を作る人とアプリを作る人をつないでいるのが(まさしく)API。なのでみんなに使いやすいAPIを作る、これが今の私の活動のメインになっていきました。

---------------------------------------------------------------

★★「Kadecot(カデコ)」でこんなものが作れます・・・

---------------------------------------------------------------


現在開発中という三次元版の萌家電では、宅内の機器がカードになってキャラクタの周囲に現れる。


カードにタッチすることで、普通のリモコンとして使うことができ、ボタンを押すとキャラクターが魔法を発動させたりする。その他、宅内の電力使用量をレポートするなどの機能も検討しているそうだ。


現在は公開されていないとのことだが、キャラクター同士が対話して人間にサー ビスを提案するという二次元ベースのコンテンツを3年にわたり配信してきたと のこと。


統合リモコンインターフェース:ネットワーク家電が増えてくるとそれらを一つのスマホからどう操作すべきかと いう問題が生じる。Hexflickという統合リモコンインターフェースでは、一つの 機器が六角形のパネルとして表示され、フリックメニューを選択することで簡単 に機器操作ができる。このアプリは後述Kadecotと共に公開済みとのこと。


ビジュアルプログラミングインターフェース「Kadeckly」
MITのScratchのように、ブロックを組 み合わせることで簡単に家電制御のプログラミングもできる。Googleから公開さ れている「Blockly」 というライブラリを用いている。このアプリは年内に公開されるとのこと。

Sony CSLでは、これらのアプリのバックエンドとして機能するAndroidアプリ「Kadecot」を公開している。このアプリは家電をコントロールするためのAPIを提供するサーバーであり、年内にセキュリティを強化したVersion 3.2が公開される。

以上参考:http://kadecot.net/

---------------------------------------------------------------

■API、萌家電、スマートハウス・・

>ネットで拝見すると「Kadecot(カデコ)」プロジェクトは2011年12月にAndroidアプリがリリースされたとありますが、もうかれこれ3年くらいやってこられたんですね。

(大和田)萌家電のイベントを2011年7月に大和ハウスと共同で実施しまして、それが世の中に認知させた最初になります。そのイベントで秋までにアプリ出しますと言い、APIと萌家電アプリを同時リリースしました。

>Sony CSLのページには大和田さんのプロジェクトは「スマートハウス」に関する研究と書いてありますが「萌家電」もスマートハウスの一環ということなのでしょうか。

(大和田)家電がネットワークにつながるというのは、そのままスマートハウスにまで発展する話なんですよね。ネットワーク家電の市場で一番栄えているところが「節電できる住宅」で、機器同士が連携したり、電力情報を取ることによって消費を抑えることができる。

またその電力情報って、分電盤を家電と見なすのかどうか微妙ですが、分電盤からとれる情報は「生活の足跡(Life Log)」、こんな時間にこんなことしていた、電力情報が全部わかる。それを元にテレビを見るパターンとかエアコン使うパターンとか、そういったサービスにつながる話なので、家電ネットワークの話とスマートハウスの話はほぼイコールなんです。

>今の「Kadecot(カデコ)」の中心となるものはAPIに加えて、センサーとかは関係ありますか?

(大和田)電力量を計測するのはセンサーですよね。一番広まっているセンサーは電力量なんですが、それ以外にも「人感センサー」とか「明りセンサー」とか「扉があいてるかどうかのセンサー」とか、そういったものがスマートハウスを構成する重要な入力系で、そこからいろんなライフログを取って様々なサービスにつなげようといろんな会社がやってます。

近年IT系企業が軒並みスマートハウスとかホームオートメーションの分野に乗り込んできていて、ご存知アップルが「HomeKit」を出したり、グーグルは「Nest Labs」という会社を買収したり、マイクロソフトも密かにスマートホーム市場にアプローチ(「AllSeen Alliance」への参加表明)していますし、やっぱり今までバーチャルな世界だったものが家(というリアル)まで来るという世の中の流れがあると思います。そのコアは「センサー技術」になりますね。グーグルが買収した「Nest Labs」も温度計センサーの会社です。

>Nestは興味ありますね。なんか人工知能的な機能が入ってるとあったんですが、「Kadecot(カデコ)」での機能でも学習能力的な機能は考えてらっしゃるんですか?

(大和田)一番重要な分野だと思います。学習機能を搭載するためにはその前提として、データをたくさん集めるということがあると思うんですが、今のところ我々は家電とハッカー(ユーザー)をつなぐためのブリッジ(アプリ)を作ったというところまでなんですが近い将来進みたいところですね。そう意味でぜひクラウドの体力のある会社と組めれば良いなと思います、パートナー絶賛募集中です。

>スマートハウスはまさにビッグデータサイエンスに一番近いところにある分野だと思うので、大和田さんがやられていることの中に未来のホームコンピューティングの要素がすべてあると感じました。ちなみにこの3年の成果はどんなところだと考えていますか?

(大和田)スマートハウスの分野は、未だアプリで羽ばたけていないと思うんです。インフラを作ってる会社もたくさんあるし、クラウドやってる人もAPIやってる人もいるんですが、アプリの形を提示している人がいない・・・。インフラ系の技術者が考えることはせいぜいUI止まり。そんな中で、アプリの一つの形が提案できたということは成果ではないかと思っています。

今までもいろいろアプリを提案してきましたが、今後もさらに万人に受け入れられる新しいアプリ(サービス)を提案していきたいと思っています。

大和田さんの研究室にある「Kadecot(カデコ)」マシン
大和田さんの研究室にある「Kadecot(カデコ)」マシン

■アプリからのアプローチが次世代家電を担う・・・

>「Kadecot(カデコ)」プロジェクトの当面のゴールはどんなイメージですか?

(大和田)短期的には、事業としてちゃんと回せるよう、クラウドの会社や商品(家電製品)とのタイアップなどのプロジェクトを立ち上げていかなければならないと思っています。そのために「Kadecot(カデコ)」プロジェクト自体の認知を高めることが直近のゴールだと考えています。

とにかく(スマート家電という意味では)デバイスはたくさん出てきています。家のカギもスマート鍵になってスマホで開け閉めできたりしますし、電源タップもスマホでオンオフできます。でもそれらをどう組み合わせてトータルでどう生活が改善するかということが重要だと思うんです。

>そこにアプリが必要だと・・・。

しかしそれを作るにはまだ障害があって、(通信)プロトコルが山ほどあるんです。(我々は)エコーネットライト(ECHONET Lite)をメインで採用していますが、プロトコルの乱立がかなりの障害になります。

エコーネットライト(ECHONET Lite)はコンソーシアムがあって、比較的統一されて推進させています。しかしコンソーシアムすらいくつもある・・、ヨーロッパはKNXだったり、マシン同士の通信ではMQTTという規格が盛んだとか、さらにはこれらをまとめてひとつのグループにしようとしている人もいたり・・・。まったくまとまる気配がないんです笑。

とにかくさまざまな仕様が乱立しているわけです。現時点で出来ることはどれかに決めてアプリの世界をyoutubeのビデオで公開して認知してもらうってことですね。

そういう意味では目指すゴールは、仕様が統一されてもっとアプリが作りやすい環境にしていくことかもしれませんね。

>なるほど、だからこそアプリの側から攻めているということなんですね。

(大和田)このアプリを作るにはこういう(統制がとれた)世界が必要なんですと(ハードメーカーに)わかってもらるといいですね。

>今日はありがとうございました。

ところで最初の「萌家電」の話ですが、「Kadecot(カデコ)」をいろいろいじってみるとわかってくるんですが、どうやら動作を制御したり、オンオフしたりするコントロールすることを擬人化して「萌えキャラクター」がやってくれているという世界観を持たせることのようです。

それってまさに私の現在所属する会社がかつて一世を風靡させた「PostPet(ポストペット)」みたいなことなんじゃないでしょうか。ポストペットはメールという機能を擬人(擬態)化して、動物ペットが運んでくれるかのように演出したものでしたが、大和田さんが手がける「萌家電」は、萌えキャラがお宅の家電に入り込んでいろいろ操作してくれたり悪さしたりする世界なんですね。

最初に戻って、スマートメーターやHEMSが活躍する時代には、こうした遊び心のあるソフトウエアが伴っていくことが必須であることを改めて痛感した取材でした。


(参考リンク)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー