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【シリーズ】日本のバカヂカラベンチャー訪問:株式会社Studio Ousia

2013/11/27 14:00
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プロフィール

土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■日本のデータマイニング技術が世界に羽ばたく!

シリーズ・日本のバカヂカラベンチャー訪問と題して、最近"私が"気になっている、日本のものづくり業界に「バカヂカラ」の息吹を与えてくれている会社をシリーズで紹介。今回は、いわゆるビッグデータを解析する「データマイニング技術」で世界に打って出ようとしている若者を紹介したいと思います。

世界に存在する「モノ」と「情報」を適切に結びつけるプラットフォーム「Phroni」を開発・運営する株式会社Studio Ousiaの代表取締役兼CTOの山田育矢さんです。(「Phroni」をブラウザに組み込むことで、知りたい語句(キーワード)が自動でリンクを貼ってくれます。)


山田育矢氏

山田氏は、中学の頃からプログラマー、オンラインソフトウェア作者として活動する中、1998年、世界最大規模のWebサイトコンテスト「ThinkQuest」に参加し、国内大会で最優秀賞、 国際大会にて銀賞を受賞。

2000年4月、慶應義塾大学環境情報学部入学と同時に、株式会社ニューロンを起業し、代表取締役社長就任。P2P通信の基盤技術を開発する中、学生時代に会社経営から会社売却まで経験。そののち、2007年、現在の株式会社Studio Ousiaを創業、代表取締役 兼 CTO就任という素晴らしい経歴の持ち主。

データマイニングの分野の中でも「モノ」と「情報」を適切に結びつける技術は、アメリカ国立標準技術研究所(NIST)がコンテストを開催するなど、世界的に見てもかなりホットな分野なんだそうです。そこにさっそうと自分たちの「Phroni」エンジンを片手に乗り込もうとしている彼らの「バカヂカラ」を聞いて参りました。今回もインタビュー形式でビビッドにご紹介したいと思います。

■大学入学と同時に会社設立・・・

>高校時代からプログラムをされていた・・・

そうですね、中学の頃からですね。94年に中学に入学して、95年、96年にウインドウズ3.1の使いづらさから、その環境改善ソフトを作ったのが、外に出したソフトとしては一番最初のものです。

それでいろいろやってまして、97年ー98年ころから、慶応大学のSFCでインターネットが盛り上がり始めて、なにかやりたいなと思ったときに、あるコンテストに出会いました。高校生の立場からインターネット教材を作るというコンテスト、これにチャレンジをしたという経緯です。

>このときはまだ慶応高校だったんですね?

そうです。高校時代はそればかりやってましたね。ずっとプログラム書いては寝て、その日々でした。

>今でも会社で開発されているプログラムは中身まで見てらっしゃる・・・

コアの部分はほとんど私が書いています。

>大学時代(2000年)に「ニューロン」という会社を興したということですが、そのきっかけは何だったんですか?プログラムを書いてて、周りから会社にしろとか言われてとか・・・。

コンテストに応募したとことで、ウエブサイトを作る仕事が来るようになったりして、周りに仕事を頼みたい人が増えたんですね。そういうコミュニティなどもあって、友達とかもやってたので、企業からの依頼を個人で受けるのがいろいろめんどうだったので、それらをまとめて仕事にしてしまおうと思って会社組織にしちゃったんです。

>そのときに付けた名前が「ニューロン」ということは、そのころから「つながる」ということに興味があった・・・。

そういう分野は好きでしたね。実はニューロンにはもうひとつ意味があって、New+Wrongで「新しい間違い」を作っていきたいという思いも込めてあります。

>その後、PtoPモジュール「NAT Traversal/SDK」を開発されて・・・

受託仕事をするようになって、端末同士がつながることに興味を持って、いわゆるユビキタスコンピューティングのようなことを意識して、PCや家電や携帯とか、全部つながっていくとか言われ始めたころだったので、そういうなかで、何が問題なんだろうと考えたんです。

実はインターネットって、IPV4というプロトコル(通信手順)で通信をするわけですが、これだとエンドの端末までIP(個体番号)の数を振ろうとすると数が足らなくなると言われてて、プライベートのアドレスだけでは、それら同士が通信が出来なくなるということを調べてたらわかった・・。このままじゃマズくない?と思って開発を始めたわけです。それが「NAT Traversal/SDK」です。

>普通なら見え易いゲームだったり、そういうものを作るじゃないですか。便利なものも含めて。それがもういきなりネットワークのほうの組み込みスクリプト的なものに行ったということは、元々そのあたりに興味があった?

別にそういうわけでもないんですが、最初にプログラムはじめたときはゲーム作っていたんですけど、あまりゲーム作りに興味が持てなくて、だんだんやらなくなっちゃったんですね。あとウエブアプリケーションもページごとにスクリプトを書いていく感じなのですが、もう少し新しくて面白いものを作りたいと思ったとき、(端末同士をつなぐとかの)そんな方向に行ったのかもしれませんね。

■世界に足りないものを作りたい・・・

>そういう山田さんの嗜好から「Phroni(フローニ)」が生まれた?

開発する人間のコンセプトって、世の中がどう変わるとか、こういう世界観を実現していきますとか、なんか目標みたいなものがあって、そのなかで足りない技術っていうんですかね、次のステップにトランスフォームするのに足りないものを作りたいということ。昔からそういう思いがあるわけです。

(でも)「NAT Traversal/SDK」のころは、ユビキタスコンピューティングみたいなものが、コンピュータの中心になってくるという世界観の中で、NAT Traversalという技術が必要だと思って、研究しているものから実装させていく・・・。一段落ついたときに、ネットワークのレイヤーってユーザーに近い視点からだと、進化が弱冠止まるのかなと感じたんです。

例えば、光で100MBPSからそれ以上になっても、普通のユーザーにはわからない・・。だから変化があまり見えなくなってくる・・・。そこでテーマを変えてみようかなと思ったわけです。

テーマを変えてどんなことをやったらいいかなと思ったとき、情報がますます溢れてくる中で、情報をうまく整理する技術を作りたいなと思ったわけです。テキストマイニングに関するさまざまな研究を見ていたときに、(これまでのものは)ざっくり言うと「文法」で(分類)やってたんです。名詞、動詞、形容詞とか・・・。

よく社内でも言ってるのですが、名詞と固有名詞って人間的には前々違うものじゃないですか。(例えば)「山田」と「山田育矢」では全く意味が違う。固有のものに対して情報を整理して結びつけていく(しくみ)ものが必要なのかなと思って開発を始めたわけです。

あとウェブ自体が、テクニカルな言い方になりますが、固有名詞みたいな「もの」に対して制御されていくときに、ちょっと世界が分断されていると感じたんです。なぜかというと、データベースみたいなもの、つまりデータに関するウエブの世界と、普通にテキスト(や画像)を読む(いわゆる通常の)ウエブの世界が分断されている。こっちはツイッター書きますよ(何文字までですよ)、こっちは綺麗にしていきますよ(見やすいですか、デザインはどうですか)。それぞれ重要なんですが、普段はこっち(データベース)の威力が全然感じられない、と思ったわけです。

この2つの橋渡しをもっと便利にしよう(うまく見せられるんじゃないか)と・・・。そこからPhroniが生まれた・・・。「モノ」と「情報」、「固有名詞」と「情報」を結びつけていく橋渡し技術(データマイニング)、そういう発想ですね。

>ところで、「Phroni(フローニ)」という名前の由来は?

フロネシス(phronesis:古代ギリシア哲学、特にアリストテレスによる哲学的な概念であり、「実践的な知」を示す。「智(Sophia)」とは区別される)から名付けたんですが、いい響きだなと思って使いました。

>「Phroni(フローニ)」がリリースされたのは去年?

2012年ですね。もうすぐまた新しいのが出ます(Linkify)。これまでのはキーワード抽出エンジンをブラウザに組み込めるようにしたということなんですが、(Linkifyでは)アプリの開発者が簡単に組み込めるようにAPIの提供が始まるんです。

>海外向けのプロモーションアニメがとても可愛いんですが、対象は海外?

海外の意識が強いですね。モバイルでリンク化という技術が海外にほとんど見られないんですよ。グローバルに見てもそういったことを開発されている会社がないので、そこを狙おうと・・。北米圏でスタンダードになればグローバルスタンダードになりやすいので、そっちから先に始めようと思って、イベントに出展したりしています。


Phroniのプロモーションビデオ(画像をクリック)

>しくみを簡単に説明いただけますか、御社のサービスの根幹を成すのは、やはり(固有名詞と情報を結びつけていく橋渡し技術を形にした)人工知能の部分になると思うのですが、そのエンジン部分に名称はあるんですか?

そういえばないですね笑。フローニエンジンですかね。「Phroni」ってブラウザのプラグイン(アプリケーション)でもあるので、エンジンとして扱っていますね。このエンジンの上にいろんなアプリケーションが乗っていくようなイメージで捉えてますね。


Phroniをブラウザに組み込んでリンクが点線で表示されたところ


>ユーザーの興味ありそうなキーワードはどうやってマイニングできるんですか?

主に3つあります。

(1)そのキーワードがどんな傾向を持っているかをウィキペディアでの出現率から分析
(2)ウエブ上でそのキーワードがどのように出現しているかから分析
(3)そのキーワードが出現する前後の文脈から分析、例えば前後が名詞だと興味度が高いとか・・。

3は伝統的な手法で、これと(我々オリジナルの1や2の)ウエブ上の出現状況などを合わせることで精度をアップさせています。

ユーザーごとにリンクさせるワードを変える(パーソナライズする)必要があるという話はいつも出てくるんですが、いろいろ分析してみると、(老若男女問わずどのキーワードに興味があるかの)傾向は誰でもだいたい一緒のようなんです。なので(誰もが)興味を持ちやすそうなキーワードを抽出するために、人工知能にヒントを入れるわけです。

現在リンク先は固定で、どのキーワードにリンクを貼るかを人工知能に(制御)させています。これからキーワードに対して、どんなところを見に行くの(が多い)かも分析していこうと思っています。


PhroniのリンクをWidget表示させたところ


■いよいよ国産データマイニングエンジンが出動!

>御社ではPhroniエンジンを使ったものでは、ほかに(既出の)LinkifyやLinkplazaなども準備中とのことですね。

Linkifyはアプリ開発者向けの組み込みエンジン、Linkplazaは自分のBlogに組み込んで、関連アフェリエイトリンクが自動で付けられるサービスです。Linkifyはこれからリリース予定。Linkplazaはいまのところ招待制での限定公開です。現在150人くらいに使ってもらっています。

>Linkplazaのアフェリエイト広告と、googleなどのアドワーズなどとはどこが違うんでしょう?

見たときにテキストの中にリンクが貼られているのと、アドワーズのように枠で囲われているのではずいぶん違うのではないでしょうか。

技術的なことを言えば、Linkplazaはアフェリエイト広告に対してリンクを貼るので、購買につながりそうな商品名だけを(Phroniエンジンが)抽出してリンク化するわけです。(名詞全部にリンクが貼られるみたいなことではないので、)違いが出るんじゃないかと思っています。さらには、その(必要なキーワードの)絞り方に重点を置いています。おもしろいキーワードとか、即購買につながるキーワードとか。常にテーマを決めて機械学習を定期向上させています。これが人工知能に蓄積されていくわけです。

Phroni自体はビジネスモデルがないんですが、このエンジンの上に様々なアプリケーションを載せることでビジネスモデルを作っていこうと考えています。Phroniがあって、Linkplazaはそのビジネスモデルの具現化ですね。これからLinkplaza以外にも、来年には、新たに2つのアプリケーションをリリースする予定です。

>当面の目標は?

LinkplazaとLinkifyという2つのサービスがこれから始まるんですが、これらの解析数やクリック数を正確に集計して、向上させていくという目標数値はあります。

Linkplazaではページが表示された際にどれくらいポップアップをクリックしてくれるのか、現在のテストサービスで、思った以上の結果が出ていますので、(目標を高く持つことはもちろん)リンク先に良い商品(買いたくなる商品)が出るようにするとか、現在の楽天のほかのコマースサイトにも繋ぎこんで行くとか考えています。

>リンク先がキーになりますね。

例えば、歌手の名前だったらCDが欲しいと思うじゃないですか。意味がわかるとそのリンク先も特定できるわけです。なのでキーワードとその意味が結びついた別の人工知能を作ってあげることで、精度(クリック率)が上がるのではないかと話しあっています。

>利用者数の目標など・・・

これからphroniエンジンを使ったサービスを出して反応を見てみたいというのが正直な気持ちですね。

>ゴールイメージは?

モバイルのタッチスクリーンで、phroni(を使ったサービス)がないと不便だなと思われるようなスタンダードなサービスになることですね。

>ありがとうございました。

いよいよ山田さん率いる「株式会社Studio Ousia」がビッグデータの荒波を世界に向けて旅立とうとしています。「phroni」が、日本が誇るデータマイニング技術となることを、これからも応援していきたいと思います。


(参考リンク)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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