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【シリーズ】日本のバカヂカラベンチャー訪問:株式会社JMC

2013/09/12 10:00
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■3Dプリンタ、その無限の夢

シリーズ・日本のバカヂカラベンチャー訪問ということで、最近"私が"気になった「日本のバカヂカラベンチャー」を紹介させてもらってます。今回は最近話題沸騰の3Dプリンタも使ってさまざまなものを作り上げる「鋳造業(ちゅうぞうぎょう)」の会社。

8月6日付け日本版ニューズウィークの「3Dプリンタ、その無限の夢」と題した特集記事には、「この新技術が、製造業と世界経済のあり方を根底から変える・・・」と書いています。グーテンベルクの印刷技術の発明以来の革命的な技術が秘められていると期待されます。

実は3Dプリンタの歴史は、かれこれ15年くらい前からあるようです。今回取材させていただいた株式会社JMCが3Dプリンタを導入したのも2000年ころからと言いますから、実はそんな目新しいものではないんです。

にも拘らず世間を賑わせているのは、3Dプリンタの基本技術の一つである、熱溶解積層方式(FDM)の特許が2007年に切れたため、FDM方式の安価な3Dプリンタの製造が可能になったこと。そしてインターネットの普及で、3Dプリンタを作るためのオープンソースの開発プロジェクトが発足したことがあるようです。


渡邊大知氏

■今回の3Dプリンタブームは本物か!?

株式会社JMCは1992年12月創業。現在代表取締役社長を務める渡邊大知さんは、元植木職人でプロボクサー出身。お父さんがされていた保険の契約代行会社の一部門として、こだわりのものづくりがしたいと思い、懇意にしていた関係会社からヒントを得て「鋳造(ちゅうぞう)」をしてみようと思ったのだといいます。

2000年には、国の「新規開業者への融資政策」に応募し、5000万円の融資を受けられることになり、そのときに盛り込んだのが3Dプリンタ事業だったそうです。当時誰も知らない技術でしたが(当時は「光造形」と言われていた)、これからの時代を開く鍵だと直感したといいます。

渡邊氏のよれば、3Dプリンタ事業を始めてからこれまでに、3回くらい「3Dプリンタ大ヒットの兆し」というブームがあったと言います。しかしこれまでの2回は、あっという間に、その話題は消え去っていったのだそうです。技術として期待され、夢も広がるのですが、いかんせん今何を3Dプリンタで作ればいいのか、そしてそのデータを精密に作る技術はどこにあるのか。毎回この2つが伴わなかったのだそうです。

しかし今回のブームは、インターネットを介しての3Dデータの共有も始まり、また3Dプリンタそのものの性能やコストパフォーマンスも、ネットコミュニティの力で、ものすごい早い速度で向上して行っています。

また、クリス・アンダーソンという元WIREDの編集長が書いた「メイカーズ」という本で「3Dプリンターが未来を変える」という記事が全世界に響き渡ったことも大きな要因だと言います。だから今回の3Dプリンタブームはホンモノになるかもしれないと渡邊氏は言います。

■3Dプリンタに求められる精密性・・

さて3Dプリンタで何をするのかですが、従来はブロックの材料から回転する刃物で削りだす切削加工(せっさくかこう)が主流だったのだそうです。機械も6000万円から1億円もする高価なものだったようです。

それが2007年に熱溶解積層方式(FDM)の特許が切れたため、それに気づいた人たちが、インターネットで熱溶解積層方式の3Dプリンタを安価に作る方法について激論を交わし、そして現在の安価なプリンタが実現することとなります。

JMCで現在使われている3Dプリンタは、光造形方式と呼ばれるものが中心。ご存知の方も多いと思いますが、今一度3Dプリンタで何らかの物体を鋳造するときのイメージを紹介してみましょう。


JMCの3Dプリンタルーム

まず3Dプリンタに作りたい物体のデータを読み込ませます。物体にするものの原料は基本、光造形方式の場合も熱溶解積層方式も「液状」のもの。例えば「エポキシ樹脂」の液体などです。


光造形しているところ

これをセットしてスタートボタンを押すと、物体データに合わせて、原料の液体に、紫外線ビームが当てられていきます(熱溶解積層方式の場合は、インクジェットプリンターの原理を応用し、紫外線に向けて液体原料を吹き付けます)。すると、その紫外線ビームが当たった場所だけ、エポキシ樹脂が数ミリづつ固まっていきます。これを何層にも繰り返すことで物体が出来上がります。

出来上がった時に、エポキシの液体の中からふわっと物体が浮き上がってくる瞬間は、何やらファンタジーやSFの世界で、おとぎの国の池から宝石が浮かび上がったかのような感動を覚えます。

最近では、液体金属や木粉なども利用できるようになったため、金属製品や木工製品なども作れるようになってきているのですが、それらを作るには精密さが要求され、今回のブームで話題になっている数十万円、ものによっては数万円で手に入る3Dプリンタではまだまだ制作はできないと言います。


渡邊氏自身の頭蓋骨モデル

JMCがいま最も力を入れているのが人間の頭蓋骨や様々な骨や臓器の再生なのだそうですが、これには、まだまだ高価な3Dプリンタの精密さや、プリンタを操作する熟練の技が必要になってくるそうです。

■3Dプリンタで何が作りたいのか!?

これまで鋳造物を作るには、必ずそのための鋳型が必要となり、この鋳型を作ることには熟練が伴っていました。3Dプリンタはその「熟練」が必要なくなる、誰でも3Dデータさえあれば全く同じ立体物が作れてしまう夢のマシンだと言われ始めています。でも現実はまだまだそうはなっていないようです。

でも今回のブームで広く3Dプリンタの存在を知らしめたことや、今後もその可能性を追求する気持ちを絶やさないことは大変重要だと渡邊さんは言います。

ドイツでは3Dプリンタで血管の再生に成功したというニュースが舞い込んだり、また他の国では小動物の腎臓の再生に成功したという話題もあり、3Dプリンタには、iPS細胞にも勝るとも劣らない「無限の可能性」を感じざるを得ません。

国家プロジェクトも動いているようですから、ぜひ日本のものづくりにおける「バカヂカラ」を、3Dプリンタの分野でも発揮して欲しいと思います。


複雑な形状の花モデル

渡邊さんは言います。「されど3Dプリンタはあくまで技術、ツールでしかありません。重要なのは、3Dプリンタで何を作りたいか、そして何が作れるのか、そんなイマジネーションを持ち続ける心なんです。」

ちなみにJMCさんでは、近隣の学校や地域などとのものづくりイベントを開催したり、自らレーシングカーの製作に乗り出すなど、ものづくりの精神まっしぐら。そんな素晴らしい会社を今後も応援したいと思います。


(参考資料)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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