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世の中は「前衛的」で「セレクタブル」なことを求めている・・・:第11回トンコネJAM

2013/05/28 10:00
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プロフィール

土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■「クールジャパン」戦略に必要な「ものづき力」

IT使いのスペシャリストでラジオパーソナリティの吉田尚記氏、音のQRコード「トーンコネクト(Toneconnect)」を生み出した株式会社トーンコネクト社長CEOの加畑健志氏と共に、最近気になるネットとラジオの近未来をトークセッションする会「トンコネJAM」。ここ数回はネットとラジオの近未来の話題から日本の文化はどうあるべきかまで広がっています。

前回は、みんな世の中の人々のお行儀が良くなって「よくわからないもの」が世の中から少なくなりつつある、それは文化的な成熟期を迎えているからなんだという話でした。

文化的に成熟期を迎えた日本では、ものごとに対する欲求が弱まり、コミュニケーションの必要性が弱まっていくという話も出ました。

政府からはつい先日(27日)「クールジャパン」戦略の「アクションプラン」原案が発表され、世界の文化産業市場で日本の存在感をもっと高めようと動き出しています。ようやくという感じですが、果たしてまだ、日本のポップカルチャーなどに、それだけのパワーが残ってるんでしょうか・・。

現在の「クールジャパン」に取り上げられている、きゃりーぱみゅぱみゅや初音ミクも「よくわからないもの」の一つであったわけですが、今となってはもう「よくわかるもの」になってしまいました。実際はその下あたりにまだまだ有象無象、ぐしゃぐしゃに「わけのわからないもの」は大量にあって、それら全体を改めて掘り起こしてこそ「クールジャパン」の底力が発揮されるのではないかということです。

ということで、その「なんだか良くわからないもの」に本気で取り組み、傍から見ると相当なものづきとしか言いようがない人の力のことを「ものづき力」と名づけ、この「ものづき力」こそがこれからの日本の文化発展には欠かせないと(前回)結論付けました。

さて今回(05/08収録)は、そんな話を受けて、収録の翌週に開催された「Google I/O」(5月14日~17日:米国サンフランシスコ)で発表された「Google Glass」についての議論からスタートです。


トンコネJAMの面々(左/吉田氏、右/加畑氏)

■「Google Glass」に課せられる懸念

「Google Glass」は、まさにアメリカの「ものづき」が徹底して開発した製品です。

(加畑)「Google Glass」(以下「グラス」)はGoogleが開発しているヘッドマウントディスプレイ(HMD)方式の拡張現実ウェアラブルコンピュータのことですね。来週の「Google I/O」でどんな形で紹介されるのが楽しみです。

これを使うことで「いつ、どこで、だれが、何をしているのか」が常にモニターできるようになると言われてます。なので腕時計が普及したころに、腕時計を持ったために、遅刻が許されなくなった、というようなことが「グラス」においても起きるのではと懸念されているんです。

つまり調べようとすれば、遅れてきた人がいまどこで何をしているのかわかってしまうわけで、何故わかってしまうにも拘らず遅れたんだ・・・ということになるわけです。

これらの人の情報は、利用者が蓄積した膨大な情報の共有から成り立ちます。そしてそれらの情報は、今はキーワードなどで検索しなければ表示されませんが、「グラス」になると、検索しなくても、位置情報や方向などの組み合わせから自動的に呼び出せるようになり、情報やモノの価値観が大きく変わるとも言われています。いわゆる「ビッグデータ」と呼ばれるものですね。

ものすごく便利になる反面、ここに個人情報保護(プライバシー侵害)の問題が出てくるわけです。ビッグデータが誰でも容易に利用できるようになると個人情報を悪用される危険性も大きくなるという考え方。果たして「グラス」が普及すると、個人情報が悪用されやすくなるのか・・・?

(吉田)「新しい技術が普及すると、人間の集合意識が顕在化する」ということを思い出します。すなわち、新しい技術を目の前にして我々人間は、個人の自由が集団に脅かされないのかという点に最も敏感であると言うんです。

例えば、携帯電話が普及し、みんなの集合意識はどのように顕在化したのか。携帯電話を持っているだけで、その人がどこにいるのかわかってしまう、個人情報が筒抜けになるのではということが問題になりましたよね。でも実際は、そのような使い方をすることは、淘汰されてしまっています。

グーグルグラスも、最初は知らなくても良い人の情報を見知らぬ人に知られるのが怖いと思う人もいるでしょうが、次第にそのような使い方は誰もしなくなると思うんです。

■人間の集合意識の顕在化とセレクタブル性

吉田さんによれば、ちなみにネクタイをする習慣も、人間の集合意識の顕在化の一つだと言います。なにかの新しい技術(ここでは新しい習慣やルール)が社会に浸透始めた際に、みんながネクタイを締めるようになり、長い年月と共に、何に対するルールだったのかが忘れられ、形式だけが残った・・・。それがネクタイなんだそうです。吉田さんは続けます。

(吉田)ところで「グラス」が今のおばあちゃんたちに普及したらどんな社会になると思いますか?まさに、おばあちゃんの財産目当てで寄ってくる、振り込め詐欺などは、いっぺんで判別できますから、おばあちゃんにとって「グラス」は何よりも大切なものになるわけです。

でもそのためには、詐欺師の情報は公開されていて、見せたくない個人の情報は削除できるなどのコントロールできる「権利」が個人に与えられてなければならないと思うんです。

「グラス」にどんどん自分の情報を載せたほうが便利な人は載せれば良いし、載せたくない人はチェックボックスのチェックを外せば、表示されないようになるとか・・・。

しかしながら、話は脱線しますが、実はコントロールしたい人のほうが、オープンでいいと思っている人の数十倍「変な人だと思われやしないか」と世間体を気にして、内心びくびくしているのだそうです。結果、誰ともお付き合いが出来ず、社会から脱落してしまう。

単身世帯が増え、人と人との関係が希薄となりつつある日本の社会の一面を言いあらわしたものとしてこういった現象を「無縁社会」というそうです。今の時代を象徴している言葉です。

(吉田)戦後の高度成長期時代には、みんなで力をあわせないと誰もやっていけなかった時代だったので「有縁社会」しかあり得なかったわけです。しかし今では、自分自身で「無縁社会」がいいのか「有縁社会」がいいのか選べるんです。即ち「セレクタブル」な社会なんです。

何事においても「セレクタブル」、選択の自由、選択肢を担保してあげられれば、「よくわからないもの」でもどんどん世間に進出していくに違いないんです。

今の日本に必要なのは、前回語られた「よくわからないこと」をひたすらやる続ける「ものづき力」と、その「ものづき力」から生み出される「よくわからないもの」に「セレクタブル」さを与えることなんですよ。

■セレクタブルだったフランシス・ベーコン展

最後に吉田さんは「前衛音楽」の例を挙げました。前衛音楽は「セレクタブル」なものの宝庫。聞きようによってどんな解釈もできる。ある人にはクラッシクに、またある人にはジャズにも聞こえ、そしてある人には心の叫びとなりまたある人にとっては悲しみの癒しにもなる・・・。

先日まで東京で公開されて大絶賛されていた「フランシス・ベーコン展」(6月から9月は豊田市美術館)を思い出しました。彼の絵画のすべてはセレクタブルでした。

ミリオンヒットは、多くの人の心を癒していると思われがちですが、実は多くの人の心を一つに統一させてしまっているように思います。心が弱ければ弱いほど、そういった大きな力に負けて、不覚にもその統一の心にならざるを得ないわけです。それが現代の心の病を引き起こす最大の原因にもなっている・・・。

物事が多種多様になったことと同じで、日本人も多種多様な考え方や生き方が許される時代になって来ています。それは文化が成熟したからとも言えます。今求められることは、多種多様な考えを受け入れられるだけの「文化の隙間」=「セレクタブル性」だと結論付けます。

成熟した日本文化を改めて、再び70年代や80年代の大騒ぎの時代に戻れるとしたら、様々な人々の心が入り込めるだけの幾重にも渡る「文化のスキマ」が必要なのではないかと思いました。スキマがたくさんあればあるほど、セレクタブルであり、そしてそれは一方向から見れば、なんと滑稽で奇妙なわけのわからないものでも、様々な人が、その隙間に入り込める、安心できる、感動できるんです。


(参考資料)

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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