■マイクロソフトのハードが日本でも遂に発売・・・
ついにマイクロソフトが日本でもハードウエアの販売を開始するとの発表が先週28日にあった。「Surface RT (サーフェス RT)」のことだ。米国ではすでに昨年末、Windows8の発売と同時に発売しているが、価格がwindows8搭載モデルとあまり変わらなかったことなどから、最悪のハードデビューを果たしている。
今回発表された日本での値段は32GBモデルで49,800 円(税込)。10インチタブレットとしては、iPad Retinaディスプレイモデルの32GBで50,800円(税込)には対抗できるかもしれないが、windows8搭載のASUS VivoTabが実売価格約49,000円、DELL Latitude 10 も約46,000円程度なので、やっぱり日本でもわざわざサーフェスRTを選択する場面が見当たらない。にも拘らずなぜ発売に至ったのか・・・。
ただ今回の発表に、知り合いの何人かが反応して、フェイスブックで「これは買いだ!」と書き込んでいたのと、個人的には以前から、タブレットとしてのwindowsマシンに興味があったことから、なんとなくモヤモヤ感が漂っていた。
それを解消してもらうべく、モバイル情報ブロガーで、Windows Phone応援団(旧W-ZERO3応援団)の団長・伊藤浩一氏に話を伺ってみることにした。
■モバイルガジェット伝道師は「Surface RT」をどう見る・・・
伊藤氏は今やモバイル系ガジェットマニアの間では伝道師的な存在。最近ではkindle本で「Windows Phone 8 応援ブック」なども発刊させている。そしてニッポン放送元同僚という旧知の仲でもある。
彼とは、ITガジェットを取り扱ったラジオ番組をいくつも一緒に制作してきた思い出がある。忘れられない番組と言えば「秋葉原ヤング電気館」。元祖ITアイドル・チバレイこと千葉麗子と、俳優・声優・ミュージシャンなど多彩な才能人・加藤賢崇(かとう けんそう)の2人がパーソナリティを務めていた。
ウインドウズ95が発売された1995年11月23日、秋葉原のラオックス前に実況席を設置して、そこから彼らによる生中継が行われた。windows95を初めて手にしたユーザーの生の声が次々と紹介された。あの時ほど秋葉原が浮かれていたことはないという印象がある。
まさにITバブル絶頂になるときだった・・・。そんな時代を共に歩んだ伊藤氏に、今回のwindows8や「Surface RT」について聞いてみた。伊藤氏はお気に入りのモバイルガジェットを持って現れた。
伊藤浩一氏とモバイルガジェット一式(左からNOKIA Lumia 820、GALAXY NEXUS、iPhone 4、PORTUS WX02S、レッツノートCF-AX2)、PORTUS WX02Sは僕も大注目の通話できるモバイルルーター、こちらの話もまた別の機会に・・・
昨年10月、米国でWindows8(以下Win8)とRTが同時に発売されました。Win8はMicrosoft社の起死回生を賭けた重要なOSで、これまでのWindowsとはUIが全く変更されています。「Modern UI design」と呼ばれています。
この大胆な変更は、私としては評価しますが、なぜ「8の廉価版的な位置づけ」であるRTを同時に発売してしまったのかナゾですね。価格もあまり変わらなかったし、そのおかげで市場を大混乱させてしまったことは確かです。
私が一番気になることは、マイクロソフトからRTに関して、その使い道がきちんと提示できていないことです。タッチスクリーン端末に特化したタブレット用OSという位置づけのはずなので、電池のもちがWin8よりも良いなどの特徴があるはずなのに何も説明がないわけです。
結果、Win8の良さにまで悪影響を及ぼしてしまい、米国では「Surface RT (サーフェス RT)」(米国名microsoft Surface)が全く売れない上に、画期的な変革を遂げたwin8までも評判を落としてしまいました。
伊藤氏のレッツノートCF-AX2、キーボードを回転させればタブレットにもなって便利! ※写真はあくまでwin8マシンです、SurfaceRTでなくてすみません・・
実はさらに混乱をきたすのは、米国では、Win8プロ搭載のサーフェスもあることです。ちなみに、Win8用アプリもRT用アプリも「Windows ストア」でオンライン購入できますが、全くの別物というさらなる混乱が待っています。
想像するに、彼らは「ウインドウズPCがiPadやAndroidタブレットにやられてしまう!」と悲鳴を上げたのではないだろうか。結局マイクロソフトという会社は、win8やRTという基本ソフトウエアを売ってナンボという感覚から逃れられない・・・。
■Office2013搭載は買いなんだが・・・
伊藤氏の話を聞いていて、タブレットに興味を持つきっかけには2つのパターンがあると思った。
(1)スマートフォンを使ってて、たまに画面がもっと大きいと良いと思ったことがある。
(2)ノートパソコンを持ち歩いていて、なんとかこれをもっと軽量にできないかと思ったことがある。
私はこの(2)のパターンの場合に、win8やRT搭載タブレットなら、Officeソフト(ファイル)がパーフェクトに使える(編集できる)ことで、タブレットの使い道がぐっと変わってくると思っている。
「Surface RT」には、初期設定でOffice 2013 RT(Word、Excel、PowerPoint、OneNoteを含む)日本語版が搭載されている。iPadでもkeynoteなど一連のiWorkソフトが用意されているが、純正Officeがそのまま使えるならそれに越したことはない。ちなみにwin8タブレットにはofficeが標準搭載されているわけではない。ここは「Surface RT」の最大の特徴かもしれない。
さらに伊藤氏の話題は、RTから専門でもあるウインドウズモバイルに及ぶ・・・。
ここまではあくまでPCやタブレットの話ですが、米国での発表時には、同時にスマートフォン用OSもバージョンアップされてました。それが「Windows Phone 8」です。
現在日本では、Windows Phone 7として「Fujitsu Toshiba IS12T」(au)が1機種のみ発売されていますが、まだ「Windows Phone 8」搭載スマホは発売されていません。
伊藤氏のWindows Phone 8搭載のNOKIA Lumia 820(日本未発売)
Windows Phoneでは「Metro UI」という例のタイル模様のデスクトップが採用されていますが、これが結果として、Win8の「Modern UI」になったと思われます。
ちなみに中身は、7まではWindows CEをベースとしていたのに対し、「Windows Phone 8」よりWindows NTベースに変わったため、これによって、以前のモバイルOSとPCのOSの間での移植性が、劇的に近づいたといわれています。
しかし「Metro UI」を「Surface RT」や「win8タブレット」に採用したわけではなく、あくまでマイクロソフトが考えるタブレットは「Modern UI」(PC)だということ。iOSやAndroidはモバイルOSとしてタブレットに採用されています。考え方が全く違うんですね。
■これはOS同士の母屋の取り合い合戦だ・・・
マイクロソフトにとって「Surface RT」はあくまでPCであってモバイルではないのだ。(誤解のないように言えば、もちろんモバイルという分類なのだが、基本ソフトはPCレベルを維持させようとしているということ)
しかし世の中はモバイルの方向に向いている。アップルもiOS(モバイル用)をPCに持って行こうとしている(軽量・簡略化する)ことは明白。Android搭載のノートPCも出現しているではないか。
マイクロソフトも一見モバイル用のWindows Phoneの「Metro UI」をWin8に「modern UI」に採用したようにも見えるが、実質的には、WinCEからWinNTとモバイル用すらもNTに逆行しているわけである。
世の中が軽量で熱発散の少ない安価なCPUを採用してモバイル機器を設計してる中、マイクロソフトは、依然として高性能・高処理なCPUを他社に開発させて、自社の高機能のOS(基本ソフト)を採用させようとしているという構図が見えた。
「Surface RT」はまさにその思想を貫くためにマイクロソフトが自分で折り合いをつけた機器なのだ。それはそれで間違いではないし、技術の発展と言う意味では、何でもかんでも簡略化していくのも良くないかもしれない。Androidみたいな中途半端なものが市場を覆い尽くすのも黙っていられない。
しかし世の中は、Ubuntu Touch、Tizen、Mozilla・Firefox OSなど、新モバイルOS戦国時代に突入、マイクロソフトの悲鳴、「Surface RT 」は果たして日本で日の目を見ることが出来るのだろうか?
(参考資料)
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MS、「Surface」リリース予定を新たに発表--日本でも「Surface RT」を提供へ(2013/03/01 07:57)
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「Surface RT (サーフェス RT)」公式ページ
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伊藤浩一のWindows Phone応援団(旧W-ZERO3応援団)
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Windows Phone 8 応援ブック
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Windows Phone 8 初期設定ブック