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明日のメディア~なぜ日本のメディアが面白くないのかを問いてみる

2011/10/21 16:30
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■「ノッティーヴィー」が猛威を振るう!?

10月4日から8日まで幕張メッセで行われた最先端IT・エレクトロニクス総合展示会「CEATEC JAPAN 2011」で「nottv(ノッティーヴィー)」の勢いが爆発していた。「nottv」はご存知の通り、2012年4月より放送開始を予定している、スマートフォン向け放送局。いわゆる、地デジ化で空いたV-High帯域を利用した全く新しい放送プラットフォームだ。(正式にはV-Highマルチメディア放送と言う)

いつものCEATECの目玉と言えば、パナソニックやシャープ、ソニーなど大手家電メーカーの新商品、最近はDOCOMO、KDDIなど携帯キャリアの新機種となっているのだが、私の感触では、今回の家電メーカーや携帯キャリアはかなり穏やかで、相変わらず3Dテレビや高細密ハイビジョンなどのデモレベルどまり。

気になる動きは、日産の「スマートコミュニティ」と題した、家庭向けエネルギーの自給自足システムといった「エコもの」などもあったが、そんな中にひときわ目立ってプロモーション展開をしていたのが「nottv」。会場のいたるところで「nottv」のロゴ入りキャリーバッグを見かけた。それもバッグがピンクなので目立つこと。

私の古巣の仲間たちが始めているサービスなだけに、応援したいのは山々だが、前回の「BS新時代」でも書いたように、様々な問題が山積している日本のメディアの未来は、本当にピンクのように艶やかなのか・・・?

■米国メディアではコミュニケーションがビジネスの鍵

「明日のテレビ」(朝日新聞出版)や「ネットテレビの衝撃」(東洋経済新報社)の著者、志村一隆氏の最新著書「明日のメディア」(ディスカバー携書)でとても興味深い分析をされていたのでご紹介したい。

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著書によれば、全米では今後4年で4億台のデジタル機器が普及しネットにつながるという。これは、スマートTV、タブレット端末、スマートフォンを合わせた数字だそうだが、驚異的な伸びであることは間違いない。この市場に誰がどのようにビジネスを見出し、何を巡って競争しあうのかがまとめられている。

面白いのは、米国はこの競争で、デジタル機器専用の新しいメディア(nottvのような)の登場は淘汰され始めていること。クアルコム社が始めたモバイル専用放送「FLOTV(フローTV)」は、今年3月末で放送終了、保有していた周波数帯域はAT&T社に売却されたそうだ。

その反面、デジタル機器でつながるための「新しいコミュニケーションサービス」は続々と編み出されている。facebookしかり、Netflixやhuluしかり、ケーブル大手のコムキャストのXfinity(イクスフィニティ)など、デジタル機器を連携させ、さらには、同じコンテンツを友達と共有するなどのことまでできるようになっている。広告枠を株式のように売り買いできる「アドエクスチェンジ」というサービスも興味深い。

■メディアの変遷を紐解くと・・・

メディアの変遷は、次の3段階で進んでいくと書かれている。

(1)コンテンツを提供するメディアの合従連衡(時代に応じた歩み寄り)フェーズ
(2)IT系新規プレーヤーと既存メディアのプラットフォーム主導権争いフェーズ
(3)プラットフォームとコンテンツホルダーのグローバル空間フェーズ

   ※著書を一部私なりの言い方に変えています

志村氏は、米国メディアは(2)にまで達していると言う。つまり米国では、コンテンツ(番組)とメディア(放送局)の組み合わせで乱立する時代を終え、コンテンツビジネスとメディアビジネスが分離された。そして既存のコンテンツを利用したコミュニケーションサービスこそが、今後のビジネス展開が期待されているというわけだ。コミュニケーションプラットフォームの主権争いの中では、その周辺ビジネスも賑わっている。

日本はまだ(1)の時代。コンテンツとメディアが一体化されたまま乱立しているわけだが、米国の影響を強く受ける日本では、(2)に変化するのも時間の問題だと志村氏は言っている。

■メディアとコンテンツ

ここで改めて、メディアとコンテンツの役割について考えてみたい。メディアとコンテンツが一体化されたビジネスの場合、メディアビジネスはコンテンツの特異性で他のメディアと差別化を図りビジネスを組み立てていた。ここでしか見られない番組があるからそのメディアを利用する。人が集まる。広告収入も得られる。しかし、コンテンツに差別化が見いだせなくなってくると、どのメディアも同程度の集客しか見込めなくなってくる。コンテンツ利用料も広告収入も分散される。様々な要因が重なって起きることなので、一概には言えないが、日本はそんな状況下に陥っている。

米国はそれを察知して、早々とメディアはコンテンツでの差別化や集客を放棄した。コンテンツは、作ることに執着するクリエイターに委ねる。プロもアマチュアも。その代わり、コンテンツを配信するサービスの充実で勝負に出た。テレビモニターだけでなく、パソコンやタブレット、スマートフォンにも配信する。ネットを使うことでコンテンツを媒介にしたコミュニケーションサービスでも充実を図ることが出来るようになった。しかし、こういった技術では、既存のメディアでは太刀打ち出来ない、特殊なコミュニケーション技術を持つベンチャー企業が多数現れた。あるメディアはここでは戦えないと街の看板やデジタルサイネージなどの分野に鞍替えした。資産を持つメディアは、技術を持つベンチャー会社を買収した。こうして、いわゆるソーシャルコミュニケーションの技術が発展し、facebookやgoogleなどベンチャー自身がメディアの覇者になるところまで来ている。これが米国だ。

■コミュニケーションとコンテンツ

では、ソーシャルコミュニケーションについてはどうか。電話の時代は、コミュニケーションそのものにお金を払っていた。インターネットも同じだ。ネットに接続することにお金を払わねばならない。コミュニケーション代が嵩むので、なかなかコンテンツ代まで払う余裕がない。だったらコンテンツを無料にしてしまおうとyoutubeは大成功を収めた。しかし、その裏にはyoutubeなどのコンテンツの共有できる「ソーシャルコミュニケーション」技術が大いに関係していた。共有したり、レコメンドしてくれるサービスが充実されれば、コンテンツが有料でもいけるのではないか。志村氏は、コンテンツの時代は、コンテンツにお金を払う代わりにコミュニケーションはいくらやっても無料のような形になると言う。これまでコミュニケーションで稼いでいた通信キャリアなどは、インフラビジネスに特化され、利用料も安くなる。(ネット従量制という動きもあるが)これが現在の状況である。

■iPhone4sを購入時にiPadが無料で付いてくる。

ソフトバンクは、10月に発売したiPhone4sの購入時にiPad2が無料で付いてくる「アレ コレ ソレ」キャンペーンを実施している。もはやキャリアは、コンテンツでは稼げないということを察知し、インフラビジネスに特化しようとしている現れだと理解できる。iPhoneやiPadで利用するアプリビジネスはすべてアップルに独占されている。様々なコミュニケーション手段はほぼ無料だ。日本にも米国の流れには逆らえない。

そう考えてみると「nottv」も、目指すところはメディアとコンテンツが一体化されたビジネスモデルではないのかもしれない。スマートフォンが激増する中、キャリアの帯域も利用者で満杯なのだそうだ。そう言えば、渋谷界隈でスマートフォンのつながらないこと。これじゃあ、また震災が起きたときに3月の時のようにスマートフォンが威力を発揮みたいなことも起きないのではないか。そこで、携帯キャリアの帯域以外で使えるものは全部スマートフォンのコミュニケーションに回そう。というのが今回の「nottv」の存在意義なのではないか。

■日本のメディアをもっと面白く・・・

あくまで「nottv」はキャリアに徹し、docomoのキャリア代をどんどん安くしてくれることを望む。その代わり、世界中のおもしろ番組が自動翻訳で見られるとか、友達と共有できるとか、タブレットやスマートTVでも見られるとか、ソーシャルサービスを充実させてくれれば、コンテンツ代はいくらでも払ってもいい。アルジャジーラのニュースがいつでも見られるとか、先日発表された「24」のジャック・バウアー役で知られるキーファー・サザーランドの新ドラマ「タッチ(原題)」が米国と同時に見られるとなれば嬉しい限りだ。それも、現地の視聴者とコミュニケーションをツイッターしながら見られるとか・・。もちろん自宅の大画面テレビにも映すことができるのがいい。

しかし、ここで重要なのは、そういったサービスをnottv自ら行うのではないということ。nottvがそういったコミュニケーションサービスのインターフェース(API)をオープン化し、外部の会社にどんどんビジネス化してもらうということだ。

どうやら、日本のメディアが面白くないと感じるのは、面白くさせる手段を独り占めしているからなのかもしれない。日本のメディアもコミュニケーション手段の部分を頭の柔らかい若いベンチャーに明け渡す時代に差し掛かっている。できることなら、それがfacebookなどではなく、mobageやgreeなど日本のコミュニケーターになることを祈る。



(リンク)

■CEATEC2011
http://www.ceatec.com/2011/ja/index.html
■CEATEC開幕
http://www.tokyo-np.co.jp/article/economics/news/CK2011100502000047.html
■日産スマートコミュニティ
http://www.nissan-global.com/JP/NEWS/2011/_STORY/111004-01-j.html
■nottv
http://mmbi.co.jp/news/2011/10/04/0118.html
■明日のメディア
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4799310690/
■iPhone4sとiPad2がセットになる「アレ コレ ソレ キャンペーン」
http://mb.softbank.jp/mb/special/are_kore_sore/another_one/

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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