予てから、インターネットラジオの受信機能も搭載されている史上最強のブルーレイHDDレコーダーが発売されたと聞いて、これは「放送と通信の融合」がどこまで進んでいるのか見極めなければと、取材を申し込んでいたところ、震災などの影響で延び延びになっていたのがようやく先日実現したので、ぜひみなさんに私の主観(?)も交えて、この魅力あるマシンをご紹介しようと思う。
■震災でわかったネットラジオの有用性
今回の東日本大震災で、改めて、radiko.jpやLISMOWAVEなどのインターネット回線で聴ける地上波アナログラジオの重要性を体感された方も多いと思う。現状、なかなかアナログラジオチューナーを持って歩いている環境も少なくなり、その一方スマートフォンやPCなど、ネットに繋がる環境は、あたりまえの時代になっている。
そんな中、先日のように、突然の震災に見舞われ、気が動転して慌てた気持ちを鎮めるのに、PCでradikoを聴いたり、スマホでLISMOWAVEを聴くなど、リアルタイムの音声情報を得られたことは、携帯ラジオを常備していない今の時代の、まさに、心の救世主だったと思う。
震災のときは、twitterやFACEBOOKで友人のメッセージを読んだり、質問を投げかけたりできたことも、大いに役立ったが、時間が経過するに従って、もっと広範囲に渡る一般情報も必要になった。そこでインターネットラジオが大活躍したのだ。
今回取材させていただいた、「Ryomax RY-MA1」(日本ビクター製)は、モバイルツールではないが、お茶の間に「放送と通信の融合」を持ち込んで、見事に具現化できたこと、そして、ゆくゆくはモバイルツールとの連携も視野に入れての設計がされていること、そして何といっても(後から知ったのだが)製品のコンセプトを握るのが、元ソニーで、あのエアボード、ロケーションフリーを世に出した、伝説の開発者・前田悟氏だということ。いま、まさに、注目すべきマシンなのだ。
■オーディオとテレビがシームレスに視聴できるマシン「RyomaX」とは一体?
前置きが長くなってしまったが、早速、取材させていただいた内容をご紹介しよう。
取材日・場所:2011年4月19日 :横浜市神奈川区「JVC・ケンウッド・ホールディングス」本社ビル内会議室 お相手 :JVC・ケンウッド・ホールディングス(株)新事業開発センター長 執行役員常務(金沢工業大学虎ノ門大学院 客員教授 コンテンツ&テクノロジー融合研究所) 前田 悟氏 日本ビクター(株)コーポレートコミュニケーショングループ |
■正式名称
「RyomaX(リョーマックス)」RY-MA1 |
■発売日
2月上旬(2月2日ころから店頭にお目見えしたようだ) |
■価格
500GBタイプ:オープン価格:(159800円(実売価格)) |
■最初の発表は2009年ころからのようですが・・・、RyomaXという名称はどこから来ている?
ビクターJVCとKENWOODが経営統合した2008年(10月1日)に新ジャンルの製品を作ろうということで始まったプロジェクト名がRYOMAプロジェクトだった。 開発発表を2009年9月30日に行った。 その後、開発時の社内コードネームとして呼んでいたRYOMAに、今後様々なカテゴリーまたがりラインナップを拡げて行くという思いの「X」に込め「RyomaX」とした。そのプロジェクトの最初の製品がこれである。 |
■そのころからネット(通信)との融合は考えられていた?
当時から、オーディオ、ビデオ、通信の3ジャンルを融合させた製品を企画しようというコンセプトで開発を進めていた。 |
■RyomaXの「売り」を教えてください
まさに既存のAVシステムのカテゴリーを超え、「オーディオ」、「ビデオ(ビジュアル)」、「通信」を一体化させている(1台で全てが簡単に楽しめる)ところが売りである。 機能的には、地デジチューナー、BS/CSデジタルチューナー、AM/FM(アナログ)ラジオチューナー、そして、新ネットワークサービスを楽しめる「MELINK(エムイーリンク)」を搭載。 ユーザーインターフェイスとしてはテレビとラジオがシームレスに使える新しいUI発想の「AVスマートメニュー」、液晶テレビに対応した薄型ラックや、シェルフにも収まる「奥行き22cmという脅威のコンパクトさ」を実現、オーディオ的には高品位デジタルアンプを搭載しているので、外部スピーカーをそのまま(アンプなしに)接続可能、高音質再生機能として、KENWOODのHRS+(ハイリゾリューションサウンド)技術とJVCの3Dフォニック(ヴァーチャルサラウンド)技術を採用している。 ラジオチューナーからの録音は非圧縮のLPCM(WAV)(16bit/44.1KHz)モードか圧縮したMP3XP(320Kbpsサンプリング)モード、MP3SP(128Kbpsサンプリング)モードの3種類から選択できる。radiko(48Kbps)とは比べ物にならない音質で試聴が楽しめる。 たとえば、テレビは途中で終了してしまったナイター中継を、続けてラジオで聞きたいようなときに、リモコンワンタッチでラジオチューナーに移動できるなどの、これまでにはない、テレビ(ビデオ)とオーディオ(ラジオ)のシームレスな環境が実現できている。 さらにはCDリッピング機能(楽曲タイトルもネットから自動入力)も充実。録ったファイルをUSB経由で外部に移すことも、SDメモリに移すこともできる。(=外部機器との連携) |
■前田さんが掲げた“オーディオ、ビデオ、通信の融合”と“ホームオーディオ新時代”というコンセプトで、これまでの製品と何が変わったのか?(前田氏が直接答えてくださった)
一般的に、オーディオとビデオは、事業部が分かれており、TVやビデオ製品の開発で、技術者は皆、TV Tunerを中心に考え、ラジオTunerは入っていないことが当たり前。一方、オーディオ製品の技術者は技術者で、TV Tunerが入っていないことが当たり前と考える。つまり、両方の機能が一体化していないことに、お互い、何ら違和感を感じないで開発してきた経緯がある。 しかし、ユーザー視点から見れば、当然両方があったほうが便利であることは明白。例えば、HDDなどもテレビ内部に取り込まれてきている。VTRの時は大きなメカ部品が必要であったため、薄型テレビとの一体化は難しかったが、HDDになり一体化も可能になった。大容量化してきた固体メモリーの時代になれば更に加速していくだろう。その方がユーザーにとっては便利でもあり、TVもラジオもオーディオも一つで楽しめる方がユーザーにとってのベネフィットは大きい。すなわち、そこを見事に一体化したのがRyomaX 。地デジチューナーとラジオチューナーが搭載された上に、専用ネット接続機能まであるブルーレイハードディスクレコーダー。なんとその上、CDも聞けるしリッピングしてUSBメモリーやSDカードに取り出せるものなどこれまではありえなかった商品だ。 新ネットワークサービス「MELINK(エムイーリンク)」のサポーターには、音楽業界や映像業界の専門家が名を連ねてくれ、新メディアプラットフォーム協議会という組織化までできた。(母体は金沢工業大学) これによって、ニコニコ動画やYOUTUBEのように、自分で動画や音声をアップして広くユーザーに見てもらいたい方々の協議会参加も受け入れられるようになっている。現在はRyomaXでしか見れないが、今後は、様々な機器での視聴なども考えてゆく。(自分の動画をアップする場合は独自のチャンネル登録が必要。そのためには15万円前後の初期投資が課せられる。ただ、これぽっきりで、エンコードから配信まですべてやってくれる) |
前田悟氏
■アクトビラにも対応しているようですが
対応している。これで基本的なオンデマンド映像(映画)は十分満足できる |
■エアチェックの機能がかなり充実しているようですが詳しく教えて欲しい
地デジは番組表対応。ラジオは時間帯予約のみだが、予約番組名は自由に記入できるため、毎週録音する番組などは、一度入力しておけば、タイトルが自動で入る仕様になっている。また、MELINKの番組は、Now on Airが画面に表示できる機能がプラスされたので、予約しただけで番組名が自動に入るようになった。 テレビもラジオも録画(録音)したものをどんどん増やしてゆく設定のほか、前に録ったものを上書きする設定もある。至れり尽くせりのオールインワンAVシステムである。 |
■新ネットワークサービスとの連携でラジオが難聴取地域でもクリアに聞こえるようにした・・
RyomaXのネットラジオは全国FM放送協議会(T-FMのJFNネットワーク各社)の協力の下(全体では新メディア・プラットフォーム協議会という金沢大学が運営する団体が母体)金沢工業大学が実証実験中の「新ネットワークサービス」を利用したものとなっている。 各地域の県域にしたがって、選べる局名が表示される。東京で見るとT-FMのみが表示される。(FM横浜は準備中)金沢工業大学の実証実験サービスのため、ほかにコミュニティーFMのえふえむ・エヌ・ワン(金沢)は全国で受信できる。 ※radiko.jpは民放ラジオ各局が主要株主の(株)ラジコが運営(IPサイマル方式:聴取地域が限定) |
■ラジオのサイマル放送を行なうという部分と、独自の映像放送ができる専門チャンネルがあるそうだが、その映像専門チャンネルとはどんなものか?
現在、映像専門チャンネルは4チャンネル(オーマイキー、ファッションTV、テイチクチャンネル、ビクターチャンネル)これも今後増えてゆく。 |
■現在視聴できる「新ネットワークサービス」は何局?
●ラジオサイマル 5チャンネル(エリアによって視聴できる放送局が違います。) 株式会社 エフエム東京 学術研究実験中 株式会社 エフエム大阪 学術研究実験中 広島エフエム放送 株式会社 学術研究実験中 株式会社 エフエム福岡 学術研究実験中 株式会社 えふえむ・エヌ・ワン 学術研究実験中 横浜エフエム放送 株式会社 準備中 ●専門チャンネル 下記協議会サイトに適時サービスチャンネル情報を告知しています。 |
■ラジオ放送は完全同時再送信? 内容によっては流れないものもある?
□トーク □音楽 □CM □交通情報 □ニュース、天気予報 □スポーツ中継
完全サイマル放送である。(実証実験中につき放送局の判断による) |
■新ネットワークサービスは「放送」?「通信(インターネット配信))?
IPサイマル放送である |
■新ネットワークサービスは実証実験サービスのため、近い将来、終了になる恐れはないのか?
実証実験期間終了後は、本放送となる予定 |
■新メディア・プラットフォーム協議会の座長を務める金沢工業大学の北谷賢司教授は
「CS放送などでチャンネルを持つ場合と比べ、低価格で実現できるのが特徴。地方の観光協会や自治体など、コストが高すぎて映像を家庭に届けられなかった方にも提案できる。」
と言っておられるようですが、視聴者が配信する側になれることも、今後考えておられる?
地域に密着した専門チャンネルを充実させてゆくことが、新メディアプラットフォーム協議会の使命である。 |
■4月2日には“RyomaX”「RY-MA1」の特別試聴会を東京・丸の内ショールームで開催されたようですが、みなさんの興味はラジオにも及んでいたのか?
震災の影響で、丸の内ショールームでのイベントを中止しており、再開第一回のイベントなった。オーディオ評論家の岩井喬(Takashi Iwai)氏がゲストナビゲーターを務めてくださった。 反応としてはラジオの魅力の再認識、オーディオとビデオのシームレスな操作による便利性、それを高音質で楽しめるデジタルアンプなどに興味を持って下さった。特に、ラジオ予約が簡単であること、録音して音源をUSBメモリーやSDカードに持ち出せる機能に注目が集まった。今後も随時行ってゆく予定。 |
■「RyomaX」プロジェクトとして今後、様々なモデルに発展していかれるとのことですが、具体的に、次はどのようなRyomaXを考えているのか、そのあたりをお聞かせ願えますか?
モバイル系の商品を考えている。既にベースについての開発はほぼ終えているが、あとはこれをベースに、事業化に向け、如何にLine up、発展系を拡げていくかが課題である。RyomaXの世界観をもっと拡げるためにも、色々な部門で事業化に向け発展させて行く事を開発部門として期待している。 |
今日はお時間頂き、ありがとうございました。
(参考リンク)
RyomaX MA-1
http://www.victor.co.jp/ryomax/ry-ma1/index.html
新ネットワークサービスポータルサイト
http://www.kanazawa-it.ac.jp/tokyo/ct/newMP/index.html
全国FM連合
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%85%A8%E5%9B%BDFM%E9%80%A3%E5%90%88