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震災でのソーシャルパワー、京大入試問題流出事件からその正体を推察する

2011/04/12 13:30
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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■震災後のメディア情勢の変化

3月11日の東日本大震災以降、メディアの情勢は大きく変貌した。

テレビは、連日震災被害のレポートを主に流すとともに、一般広告となるCMはほぼすべて自粛。一部ACジャパン(旧公共広告機構)のキャンペーンCMのみが目立ったため、苦情が寄せられる反面、金子みすゞらの詩集がベストセラーになるという現象も起きた。

ラジオは、被災地の方々の声を中心にレポートするとともに、やはり一般CMは自粛。電気などのライフラインが絶たれた地区では、唯一の情報源として効果を発揮し、かかる音楽の効果が大いに心の支えになった。オリコンなどの音楽情報筋によれば、「震災後の一週間、全国のラジオでよく流された邦楽」として

  • ◎「何度でも」・・・・・・・・ DREAMS COME TRUE
  • ◎「Jupiter(ジュピター)」・・平原綾香
  • ◎「Hey和」・・・・・・・・・・ゆず

などがあげられている。(4/11現在)

そんな中、ツイッターやフェイスブックなどのソーシャルパワーの威力も改めて再認識されたわけだが、ニュースソースとしては古くなってしまうが、あの京大入試の際に携帯電話でカンニングしていたという例の事件。私はあの事件でインターネットいおけるソーシャルパワーの正体を見破ったと思った。

■入試問題のネット流出事件

京都大学の2月25~26日に行った平成23年度入学試験で、数学と英語の試験時間中に、それぞれの問題がインターネットの質問サイト・yahoo知恵袋に流出していた事件。これはまさに「ソーシャルネットワーク」のパワーを試すような事件だったと思う。偽計業務妨害の疑いで、仙台市の男子予備校生(19)が逮捕されたが、ある意味、カンニングの手法をIT化した程度のことであり、逮捕までしたのは少々行き過ぎだったとの声も多い。

一方、昨年11月の、尖閣諸島沖で中国漁船と海上自衛隊の船が衝突した、その一部始終を撮影したビデオがインターネット動画共有サイト「ユーチューブ」にアップされていた事件。これは明らかに、機密情報の漏洩であるため、逮捕されても仕方のないことだが、私は、この2つの事件に共通した「意味」を感じざるを得ない。

あの漁船衝突の動画をユーチューブにアップしてしまった海上自衛隊員の並々ならぬ思いを、あえて代弁するならば「動画を社会の人々に見てもらって意見を問いたい・・・」だったのではないか。

そして、今回の入試問題がヤフー知恵袋にアップされた事件についても「試験問題を社会の人々に解いてもらって、問題の難易度を世に問いたい・・・」

少々想像しすぎかもしれないが、この2つの事件に共通する意味とは「インターネットを日常で利用している者にとって、ネットで自分の判断が正しいのか否かを問うことは、ごく当たり前の行為だと思っている」ということなのだ。ソーシャルパワーは日常の我々の生活レベルにまで引き下がってきていることを示している。

■既存メディアとソーシャルサービス

私がラジオディレクター時代にヒットさせたもののひとつに「10回クイズ ~違うね」というのがある。

ピザと10回言わせてから、間一髪で(腕の肘を差して)さてここは何と言う?と問うと、思わず「ピザ」という語感に引きづられて「ひざ」と言ってしまう、いわゆる「引っかけクイズ」だ。

10回クイズは、1980年代のラジオ業界はもとより、出版業界やマスコミ全体で一世を風靡した。元祖「10回クイズ」の本は約60万部のベストセラー、類似本も合わせれば数百万部の「ひっかけクイズ本」ブームになった。

ラジオを制作している側の醍醐味は、まさに「ソーシャルパワー」。元はと言えば、リスナーから、こんなクイズ作りました、とハガキの投稿から始まるのだが、これを読んだディレクターは、思わずこう思いを巡らすのだ。「俺は相当面白いと思うけど、リスナーはどのくらい受けてくれるんだろう・・・?」

ディレクターはリスナー反応を知りたくて、番組ですぐに取り上げることになる。そして翌週、ものすごい反応のハガキの山を見た瞬間、「我やったり!」と二ヤッとするのである。せっかくなので当時の10回クイズのネタを少々披露してみよう。

  • ◎『ニシン』と10回言って・・・赤ちゃんが生まれることを何と言うか? ・・・・妊娠? ちがうね!
  • ◎『不死身なネコ』と10回言って・・ルパン三世の恋人は?・・・ふじ・みねこ? ちがうね!
  • ◎『キンカン』と10回言って・・・アメリカ初代大統領は?・・・・リンカーン? ちがうね!
  • ◎『シャンデリア』と10回言って・・・毒りんごを食べた童話の主人公は?・シンデレラ? ちがうね!

※答え:(出産)(峰不二子)(ワシントン)(白雪姫)

これぞソーシャルパワー!!・・・ラジオがリスナーの投稿で成り立っていることの証しなのだ。

■ツイッターやフェイスブックの時代



これが、いまのツイッターやフェイスブックの時代にどう変わったか・・・。

単刀直入に言おう。ラジオやテレビを作っている特別な役職者だけではなくて、ごく一般の人たちでも簡単に「社会一般」に「投げかけ」ができるようになったのだ。それを投げかけることで、社会にどういう影響を及ぼそうが、個人の好奇心ひとつで、いつでもどこでも「ソーシャル」に「投げかけ」ができるようになったのだ。

フェイスブックの創始者・マーク・ザッカーバーグだって「ハーバードの女子大生の人気投票を写真でやったら、どのくらい参加してくれるんだろう・・・」という思いから、フェイスブックの前身である「フェイスマッシュ」を作ってしまったではないか。当時、女子大生の顔写真を大学のサーバーからハッキングして作ったわけだから、個人情報の漏洩もはなはだしいわけだが、教育委員会からのお咎め程度で終わり、かくして彼はインターネットのヒーローとなった・・・。ハーバード側も個人情報のハッキング対策を強化したことは言うまでもないが・・・。

■果たしてソーシャルパワーは世界をどう変えるのか?

インターネットが2000年代の普及期から2010年代の転換期に入り、インターネットに社会的な価値が生じてきた・・・。そこで利用者一人ひとりの社会常識力が重要になる・・・。それと同時に、学校の先生や、会社の上司、父兄、親、試験監督などなどサービスする側も、重い監督責任が生じてきているのだ。

おとなりの韓国では2004年に、日本の大学入試センター試験に当たる大学修学能力試験で、携帯電話を使った組織的なカンニングが発覚。300人以上の受験生が「無効」扱いとなるなど、社会問題化したことがあったそうだ。その時から、監督する側の対応も変えてゆくことになったそうだ。

公開することや、様々な問題を世に問うことに、誰の許可もいらないインターネット。これは20世紀の大いなる発明であり、グーテンベルクの印刷機、ベルの電話機、マルコーニの無線機以来の、最大の情報革命と言われる。

印刷機が出来たことで聖書は書籍となって急速に普及。これまでのように口コミだけで伝わっていた様々な思想が、印刷物で目からも入ってくることでより強い影響力を持つことになる。また、その行為は、印刷機さえ持てれば、誰でもたやすくできるようになり、譜面を書き写すだけの「複製権」は、誰にどのようにして複製物を取り扱うかについても考えなくてはならなくなった・・・。

かなり大げさな話になってしまったが、いまこそ、インターネットという歴史始まって以来の情報革命を、利用者と監督者がお互いに、社会常識や倫理観念を持って、上手に利用してゆく必要がある。試験中に問題を不特定多数に解いてもらうことが、いいのか悪いのか・・・。ラジオやテレビのディレクターが試験問題を生放送したらどうなるのか・・・。一般のソーシャルメディアを利用する一人ひとりが、そのような責任を負う時代になったということだと思う。

つまり、インターネットによって世界がどう変わるのかではなくて、インターネットの利用者自体が変わってゆく必要があると思う。偽計業務妨害でカンニング者を摘発する前に、入試を実施することそのもののルールを見直す必要がある。

■ソーシャルメディアの効果的な利用を準備

今回の震災においても、ツイッターなどでの「誤報」や「うそのチェーンメール」なども多発したが、誤報を流したりリツイートしてしまったとわかったら、陳謝して訂正する。そういった浄化作用をみんなで心がけてゆけば、これほど便利なものはない。

ソーシャルメディアの発展を停滞させないよう、この機会に大いに利用して、練習しておくことも必要だと思う。

ところで、入試問題は、様々な書籍や創作物から引用されて構成されているため、著作物が各所に点在する。入試の出題そのものには許諾は不要(著作権法36条)(出所の明示は必要)、ただし、入試後の、入試問題集発行などは許諾が必要(使用料がかかる)ということだ。

ということは、入試問題としてネットで公表する場合も許諾不要と思いきや、ネットでの配信権(公衆送信権)が著作者にあるため、問題集の発行と同じ扱いとなり、現法律では、著作者にひとつひとつ許諾をもらわない限り、ネット公開試験すらできないということだ。仙台の予備校生は偽計業務妨害の疑いで逮捕されたようだが、「公衆送信権の侵害」というのが正しい容疑。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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