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韓国テレビメディアが再編、新聞・通信5社が放送事業本格参入の本当の意味とは?

2011/01/21 18:00
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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韓国政府は2010年12月31日、5つのテレビ放送事業者の新規参入を認めた。新規参入を決めたのは、毎日経済新聞、中央日報、朝鮮日報、東亜日報。聯合(れんごう)ニュース社は、報道専門チャンネルを立ち上げる。これで現在の3つのテレビ事業者(KBS、SBS、MBC)を含め、テレビ事業者は8局と、日本と肩を並ぶ多メディア国となる。

年末最後の日にこんな重要な決定を発表するのも、一度に5つの放送事業者を選定したことも、異例のことらしいのだが、もっと驚くことは、すべて大手新聞社と通信社系が資本の会社の参入だったこと。

これまで韓国では、総合編成が認められているのは、地上波放送3局(KBS、SBS、MBC)だけ。それも軍事政権時代の80年代から新聞社の放送事業への進出は禁じられていた。

09年、李明博(イミョンバク)大統領が、メディア市場の活性化を目指し、関連法を改正したことで、昨年、新規のCATV向け総合編成局への参入会社を募集していた。その結果、6社が応募し、朝鮮日報(局名はCSTV)、中央日報(jTBC)、東亜日報(チャンネルA)、毎日経済新聞(MBS=韓国毎日放送)の4新聞社系が選ばれることとなり、韓国経済新聞と財閥の泰光グループ系の2社は脱落。繊維・化学メーカー「泰光産業」を筆頭とする泰光グループは、応募会社の中でも最高レベルの財務力、無借金経営、超高株価と3拍子そろった優良企業とのことで、CATVのMSOとしての実績もあったにもかかわらず、昨秋、創業一族間での相続や贈与を巡る不祥事が続々と明るみに出たことで脱落となった模様。

これら各局は主にCATV向けなどに番組を供給する放送会社となる。韓国ではCATVの世帯普及率が90%前後と高く、CATV向け番組供給会社とはいえ、視聴者へのアクセスという点では、地上波放送と全く変わらないそうだ。

そのCATVの現状の放送基準がそのまま適用されれば、地上波ではまだ禁止されている日本語楽曲や歌番組、ドラマ、バラエティなどの番組が、無修正でこれまで以上に放映できることになり、その辺がキラーコンテンツになるという可能性を狙っているというのだが・・・。

中でも興味深いのは、中央日報のjTBCが、テレビ朝日と資本提携したこと。日テレはSBS、フジはMBC、NHKとKBS、TBSとYTNという既存の提携関係の中で、日本へのコンテンツの売り込みや日本からの買い付けを潤沢に組める相手がテレ朝とテレ東だったということもあったようだが、韓国側以上にテレ朝側にも番組を低コストで作るためのノウハウを学ぼうとしているとの噂もある。今回の新規参入は、それだけの意味なのだろうか。

以前(2006年6月)私は、(財)韓国放送映像産業振興院の誘いで、韓国で年に1度行われている「デジタルコンバーションと放送コンテンツの未来」シンポジウムに招かれ、「日本における放送と通信の融合事情」についての講演をさせていただいたことがある。韓国の放送関連団体は韓国放送協会(KBI)を中心に、韓国文化コンテンツ振興院、韓国放送映像産業振興院、韓国ゲーム産業振興院、文化コンテンツセンター、韓国ソフトウェア振興院デジタルコンテンツ事業団の5つの組織からなっている。その中の映像産業振興院が主催しているシンポジウムだ。全世界から数百名の放送関係・有識者を集めて行っているようだ。

この講演の中で、私は、韓国の地上波以外の映像メディア(CATVや衛星放送など)が全体の54%もあること(5年前でこの数字、現在はさらに増加していると思われる)、それに対し、日本は、地上波が82%もの圧倒的な利用シェアを占めていること、その性で、なかなか放送側から通信へのビジネス参入の理由を見出せなかったことを伝えた。

またその障壁を突破したきっかけは「着うた」「着メロ」だったのだが、なぜ遅れたかといえば、日本におけるコンテンツ利用に関する著作権の問題では、放送と通信が別の次元で考えなければならないことを指摘した。放送はあくまで、地上波の電波で流すこと。通信ではまったく別の法律が適用されることが日本の放送と通信の融合の妨げになっているということは、当時の韓国メディア関係者の間でも驚きを顕にしていた。韓国では当時は、地上波コンテンツのインターネットによる同時配信は当たり前のものだった。

韓国のほうが放送と通信の融合においては日本を一歩先に越していると褒めたつもりだったのだが、この発言がきっかけで、韓国でも、放送でのコンテンツ利用と通信でのコンテンツ利用は別会社に分けて、2倍儲かる仕組みを編み出してしまった。その結果、韓流ドラマブームの日本で、ドラマの購入額が跳ね上がる大打撃を引き起こしたのだった・・(笑)

そんな、大阪商売人的(笑)なビジネスマインド抜群の韓国が、国を挙げて、メディアコンテンツの強化を図ろうとしているのが、今回の放送局拡大である。ご存知のように、既に韓国では日本の数歩先を行くくらい、放送局のネット利用ビジネスも盛んに行われている。特に携帯を利用したビジネスは、日本では考えられないほどのワンセグチャンネル数があるなど、メディアコンテンツの需要は必至なのだ。いまでも、日本を越える多メディア数の韓国が、今回のCATVをターゲットとした、新たな5つのテレビ事業者を追加した狙いは何なのか?

私は、近年の韓流ドラマの世界的なブームなどによる、コンテンツ制作能力への自信がピークに達していること意味していると見る。世界に向けて、ハリウッドに負けないクオリティで、供給量も最大化できるぞという態度を見せるためなのではないか。そのためには、まず国内局を強化すれば、自ずと世界からディーラーが寄ってくることを彼らは知っている。元々韓国国民だけでなくアジア全土から、欧米にまで見せるつもりでドラマや音楽などを制作して来たのだから、海外からも多言語対応の評価も高い。グローバルなのだ!

もちろん、当初は2局のみ採用と言っていたところが、一気に5局も増やすことになったのだから、共倒れの懸念も示唆され、いづれ淘汰されるのも目に見えてはいるが、国を挙げてのコンテンツビジネスのグローバル化への意気込みは十分に感じられる。それに引き換え、このままでは、韓国のコンテンツ制作を資金的に支える日本・・・という位置づけでしか、コンテンツビジネスのグローバル化が見えない日本がどうしても悔しい。まるで湾岸戦争などの支援に、人は出さず、資金だけ出すような話と同じだ。日本が「ものづくり国家」と言われなくならぬよう、国レベルで、日本のクリエイティブな能力を世界に、グローバルに発信する施策はないものだろうか・・・。


参考


メディア界の4大河川事業『どうする総合編成チャンネル』(ニュースエンジョイより)
http://www.newsnjoy.co.kr/news/quickViewArticleView.html?idxno=33532

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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