毎週末の金曜に千葉のBayFMでIT系の情報コーナーを担当しているのだが、先週26日は「ペンの日」(日本ペンクラブが創立した)にちなんで「読書」が題材だったので、最近の電子書籍について紹介しようと思って調べ始めたところ、思わぬ報酬があったのでご紹介したいと思う。それは・・・「オーディオブック」だ。
電子書籍と言えば、iPhoneやiPad、最近ではandroid携帯やタブレットなどで本をダウンロードしてもうすでに読んだことがある方も多いと思う。先日のドコモのgalaxy sが発売になったときは、作家の村上龍さんの「歌うクジラ」が無料ダウンロードにまでなった。12月10日には期待のソニー電子書籍端末「Reader」の発売も決定した。でも電子書籍の陰に隠れて、意外に密かな人気を博しているのが「オーディオブック」なのだ。
itunesミュージックストアを開いてみると「ミュージック」「映画」「APPストア」「PodCast」の次に「オーディオブック」というタブが鎮座する。「オーディオブック」内のジャンルたるや、「語学教材」から始まって「名作」「コメディー」「キッズ」「SF」「ノンフィクション」など、なんと20ものジャンルが出てくる。その中には、現在、1万冊以上もの数のオーディオブックがitunesストアだけでも売られているそうだ。(ことのは出版サイト調べ)
ざっと見ただけでも、ベストセラーにもなった「ウェブ進化論」とか「さおだけ屋はなぜつぶれないか」とか「電車男」なんていうのもオーディオブックになっている!(一部はAPPストアでアプリとして販売しているオーディオブックもある) また、日本の名作を人気のアニメ声優に朗読させた「朗読少女」で話題のオーディオブック専門サイト「febe(フィービー)」によれば、50歳以上のユーザーを対象に調査した結果、2008年から2010年の2年間で利用者が6倍にもなっているそうだ。そして今年の年間1位は、あの「もし高校野球の女子マネージャーがドラッカーの『マネジメント』を読んだら」のオーディオブックで、なんとAKB48の仲谷明香(なかや さやか)が朗読をしている!
itunesミュージックストアで配信を手がけるオーディオブック大手のPamlink社代表松木氏によれば、米国ではitunesのダウンロード売上のおよそ30%はオーディオブックなのだそうだ。多人種国家である米国では、文字が読めないまま米国に移り住んで来て、まず最初の職業は長距離トラックの運転手。トラック野郎なら、英語での会話ができなくても、なんとかやってゆける。その旅の間に利用するのがオーディオブック。何度も同じフレーズを聞き返すうちに全米を横断したころには一通りの英語会話は身に付くというのである。
オーディオブックは読まなくても、どんどん声や音で耳に入ってくるからとても便利なのだが、日本では、語学研修用だったり、お年寄りのものという感じがあって、一般的にはまだなじみが薄いかもしれない。また、これまでの携帯電話用公式サイトにも存在はしたが、電子書籍時代になってなにか忘れ去られたような気がしていた。
私は前職がラジオ局だったので、目の不自由な方のための様々なキャンペーンを行って来た。その中でも、毎年、局のアナウンサーで人気の書籍や名作を朗読する吹き込み作業は忘れられない。制作している自分が、吹き込んでいる名作に、真っ先にのめり込んでしまうからである。自分で文字を目で追って読書するのとは比べ物にならないくらい、音声による朗読は、頭の中に物語の情景やキャラクターのイメージがビビッドに伝わってくる。
前出のPamlink社はitunesミュージックストアで「iJockey」(アイジョッキー)(正式には「iJockeyアイジョッキー文庫オーディオブック」)というオーディオブックブランドを立ち上げて好評を博している。ラジオはディスクジョッキー(DJ)、インターネットだから「iJockey」ということで始まった。これを発案したのはなんと元大手ラジオ局に勤めていた中島誠一氏、ラジオマンならではの発想。彼曰く、iPodを最初にみたときは、「これはラジオの敵だ!」という直感を受けた。が、それなら「敵を味方にしてしまおう」というビジネスの定石を思い出して考えたのがiPodをラジオにしてしまうアイデア、即ち「iJockey」だったそうだ。
いまおすすめのiJockey文庫をご紹介しよう。
![]() (1話:18分:300円:全4話) ←左をクリックするとitunesミュージックストアが立ち上がります |
![]() (1時間28分:900円) ←左をクリックするとitunesミュージックストアが立ち上がります |
![]() (1話:20分:300円:全12話) ←左をクリックするとitunesミュージックストアが立ち上がります |
現在「iJockey文庫オーディオブック」だけでも約160タイトルが出版されている。電子書籍ブームで、紙の書籍をブックリーダーで読むというのも、確かに様々なメリットがあろうかと思うが、「音で読める」オーディオブックというジャンルも忘れてはならないと感じた。