■チリ落盤事故全員救出!その報道やいかに・・
今週は史上類を見ない大きなニュース、南米チリのサンホセ鉱山落盤事故の「閉じ込められた33人が無事救出」(10月14日)で、テレビの前に釘付けかと思いきや、意外や意外、どの局も深夜の中継はされていなかった。長引く恐れもあること、そして日本人は生き埋めになっていないなどの理由からだろうか。そのためtwitterやUStreamがまたまた大活躍したようだ。約4〜50分間隔で1人が救出されるその模様が、USTREAMやtwitterで全世界に配信されていたのだ。
■渋谷スクランブル交差点で大規模デモがあったの知ってますか?
(写真:渋谷デモ:2010.10.03 04:30:02 ガジェット通信より引用)
最近はそんなことが多々あるようだ。先日の尖閣諸島問題のさなかの10月2日にも、渋谷のスクランブル交差点で2000人を越す一般人の抗議デモがあったそうだが、これも放送では唯一CNNが報道しただけで、なんと日本のメディアはなにも報道しなかったそうだ。そしてtwitterやUSTREAMではバンバン生の映像や実況を流していたというのだ。一体日本のメディアはいつから周りを気にしながらの報道になったのだろう?そしてその逆に、twitterやUSTREAMでのわくわくするリアルタイムでの世の中の話題発信の数々・・・
■好奇心は誰でも持っている・・・
金正則著『1万人市場調査から読み解く ツイッター社会進化論』(朝日新書)を拝読させていただいた。twitterを冷静に「情報検索」「仮説立て」「検証」の思考プロセスに則って、1万人規模の市場調査を分析し、twitterが一過性のものなのかどうかを説くなど、ほかのtwitter本とは一線を画したテイストとなっている。これによれば、twitterを利用することで、自分の中の多様性=様々なことに対する好奇心、が意外にまだあることを発見できるツールなのだそうだ。渋谷のデモしかり、サンホセ鉱山の救出劇しかり、テレビや新聞では盛り上がらないわが心の高まりを、twitterで取り戻すのだという。
■好奇心を呼び覚ますオールドメディアでは・・・
そこでラジオの出番だ。前回の「人生・・学んだ(その1)」でご紹介した「芳賀ゆい」は、紛れもなく「心の高まり」を呼び覚ます企画だった。出来合いのアイドルの洪水を受けていた当時の若者たちに、心の中にある、自分だけのアイドル像を見事に「音声メディア」の中で創造させた。そこで第2回目の今回ご紹介したいのは「ラジオアドベンチャー企画」だ。
■ラジオアドベンチャー企画でリスナーの心を掴む・・・
1980年代に話題を幾つも叩き出した伝説のラジオ番組「三宅裕司のヤングパラダイス」がスタートしたばかりの頃、世の中ではファミコンが大ブーム。ドラゴンクエストに代表される謎解きロールプレイングゲームの手法をラジオにも応用しようと、ヤンパラアドベンチャーという企画を立ち上げた。テレビゲームで出会うキャラクターが答える何らかのヒントワードを繋ぎ合わして謎を解いて行くという手法をラジオに応用した。当時、ヤンパラでは「ヒランヤ」という正三角形が2つ組み合わさったカゴメのマークのような模様にピラミッドパワーが宿っていることを番組内で実験し、ブームになっていた。そこで、ヒランヤの模様を象った超パワフルな「黄金のヒランヤ」が都内の何処かに埋まっていることを説明。その在処を、毎日番組で紹介するキーワードを繋ぎ合わせてちリスナーに当ててもらおうという企画を実施した。
■思いもよらぬ大フィーバー・・・
その初日、最初のキーワードが発表された。「飛鳥の空に鳥が舞う…」たぶんこんなキーワードだったように記憶している。リスナーは今から考えると、さぞ心の高まりを覚えたことだろう。しかし番組スタッフは、なんせ番組が始まったばかりの時期だったこともあり、どのくらいの影響力があるかも考えずに、とにかくリスナーの心を掴むのに必死だった…。翌日、会社に来ると1本の電話がかかって来た。どこかの管理事務所の事務員からだった。何十人もの人が彼らが管理する公園の至るところを掘り返しているというのだ。その中の1人に聞いたところ昨晩のおたくの番組でここを掘り返せと言っていたということで、それが本当かどうか電話したという。私はピーンと来た。ヤンパラアドベンチャーだ。実はその時点でまだ、黄金のヒランヤは目的の場所に埋めてはいなかった。これは大変な事になったと確信した。すぐに番組チーフに連絡し現場に急行してもらった。さてその場所は何処だったでしょう?
■音声メディアの真髄を実感することに・・・
現場には番組チーフが1人で行ったため、ここからはチーフからの報告で聞いた話だ。チーフは、1日目のヒントくらいで分かってしまうものなのかと半信半疑だったそうだ。だが、その予測は外れた。正解の場所でもあった、東京都北区のJR王子駅に隣接した「飛鳥山公園」に行って、わが目を疑ったという。公園のほぼ全域に渡り、リスナーがスコップやシャベルで掘っ繰り返していたそうだ。さらにドブ板まで外されていたという。そして既にその時点で、工事用のロードローラーが公園内に入っていて、掘っ繰り返された場所を整地し始めていたそうだ。これにはさすがのチーフも公園管理事務書の方々に合わせる顔がなかったそうだ。またその反面、ラジオはリスナーの心を想像以上に高めることを思い知ったという。事情を話すとともに平謝りをして、企画の中止を伝えることでなんとか事なきを得たのだが、音声メディアの影響力やイマジネーション力の強さを改めて実感することとなった。
■リアルタイムで想像力を掻きたたせるもの・・・
今のtwitterに込められた140文字から伝わってくるイマジネーションも、このラジオアドベンチャー企画と同じように思うのである。書く側の気持ちとしては、自分の身近に起きた出来事を並べているだけでも、その行間から湧き上がる読み手側の心の高まりは、録画されたテレビ映像や、事後にまとめられた新聞などの活字情報とはまるで次元が違うほどの大きさなのだと…。映像がないこと=即ち、想像力を極限まで掻きたたせてくれること、そしてそのイベントがリアルタイムであること。この2つが同時に起きたとき、ユーザーのイマジネーションは爆発する…。ラジオで学んだ、ユーザーの心を掴む技は、twitterの時代になっても生きているのである。