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明日のラジオ〜「ラジオ研究会報告書(2010年7月9日)」に見る音声メディアのこれから

2010/07/30 17:32
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土屋夏彦

radikoが有料で全国が聴けるようになり、いよいよ聴き逃しサービス「タイムフリー」も始まるかと思いきや、2016年になってしまいましたが、AMが在京3局も含め順次ワイドFM化を始め、TOKYOFMグループのi-dioもいよいよこの3月から始まるようで、今年の地殻変動はかなり大きいかも!
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7月9日(金)
総務省のホームページにラジオに関する1通の報告書がアップされた。
この総務省の報道資料一覧のページには実に様々な情報通信産業に関する研究資料がアップされているが、ラジオに関してはほとんど見当たらないと言っても良い。そこにこの百数十ページにも及ぶ「ラジオ」に関する資料の登場。「平成22年2月から「ラジオと地域情報メディアの今後に関する研究会」を開催してきましたが、今般、報告書が取りまとめられましたので公表します。」とあった。ラジオに関して5ヶ月に及んで議論することはそう頻繁にあるものではない。放送と通信の地殻変動調査隊としては胸が躍った・・・。


この研究会は、
今年の2月から、総務省の内藤正光副大臣の呼びかけの元、上滝徹也日本大学芸術学部教授を座長に、ラジオ有識者10名が集まり、ラジオの今後に関して少しでもリアリティのある未来を作り上げようというもの。会合は11回にわたり、様々な現状把握の結果、1冊の報告書が出来上がった。報告書だけでも100ページ以上、資料まで入れれば230ページにも及ぶため、ここでは、その中の重要情報をみなさまにダイジェストでお伝えする。詳しく知りたい方はぜひダウンロードしてiPadなどでお読みになることをお薦めする。

報告書を紹介する前に、まずはラジオ関係者に聞いた現状だが、この数十年の環境変化で

(1)都市部の難聴地域がビルの高層化や電磁シールドの強化などによって拡大、

(2)IT機器の増加による雑音の拡大、

(3)隣接外国放送局との混信の拡大、

などでラジオ受信環境が相当悪化しているという。(3)に関しては現在、全国47のAM局のうち36局が外国放送と混信を認めているそうだ。

さらに、ラジオ各局、特にAM局の送信設備の更新時期が10年〜20年後に迫っているという事実。AM局は電波の性質上、送信するための電波塔を共有することができず、1波あたり、一万坪ほどの土地を要するそうで、難聴の緩和などを考慮して立て直すとなれば1局あたり最大で20億円もの投資が必要になるという。これは首都圏の局でも非現実的な数字である。となると、アナログラジオは20年後には、難聴対策などしようがしまいが、今後必ず、続けてゆくべきか否かを問われる時期が来るというのだ。AM局の一部の話だとは言え、このままでは住民の心のよりどころとなっていた放送局が容赦なく1つ消えるという状況も放ってはおけぬ。FM局とて電子機器による雑音やビル影などで、アナログのままでは難聴取がないわけではない。そのような環境の変化の中、報告書の言葉を借りれば「ラジオが培ってきた力を地域社会に向けて発揮し続けるには、ラジオ局自らが何かを変えていかなければならない。」というわけだ。

この報告書を読み解く前に、11回にわたる研究会の議事録も一通り目を通してみたところ、その3回目の会合レポートに、内藤副大臣が「前政権が決めたことについて「ちょっと待て」と言いたくなった」というくだりが残っていた。そんな愚痴も言いたくなるだろう。ラジ研以前の平成19年8月から約1年間に行われた「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」でのデジタルラジオ(「地方ブロック向けマルチメディア放送」という)では、全国を7ブロックに分けて、それぞれのブロックを聴取範囲として放送をするというかなり大枠の決め方だったようだ。(現在の地デジ推進協会HPにはそのままの記述が残っている)例えばラジオ福島が地デジラジオ化(地アナ放送をサイマル放送)すると、このままの仕様で行くとラジオ福島のローカルニュースが東北7県すべてに流れてしまう。いわゆるV-Low帯(現在のアナログテレビのVHF帯の1〜3チャンネル帯)は、地方ブロック向けマルチメディア放送と言うくらいなのだから、地域密着性を考慮すべきで、この地域の分け方がラジオにとって最も重要なのだ。

それでは今回のラジ研の目的。まずは先ほども説明した「携帯端末向けマルチメディア放送サービス等の在り方に関する懇談会」で決めたデジタルラジオのブロック分け、「地域密着メディアなのに放送区域が広いエリアでおおざっぱすぎる。県域あるいはそれより小さくしたい」。そして「受信機としてケータイ端末を考える。V-High帯はケータイで活用するため、デジタルラジオが予定されているV-Low帯でもデータ通信などの付加価値をつければ、ケータイメーカーも考えてくれるのでは」。以上をV-Low帯に特化して議論をしようということになったようだ。

さて、ラジ研の報告書だが、大きく分けて

(1)ラジオ論、(2)ラジオ論からV-Low 論へ、(3)V-Low 論、の3章から構成されている。

その第1章、ラジオ論は「ラジオの弱さ」と「ラジオの強さ」にフォーカスを当てている。現在考えられるラジオの弱い部分は、受信環境、送信設備といったハード面の環境変化もさることながら、ラジオを知らない世代の出現、受信端末の魅力低下など、リスナーの文化やファッションの変化に付いて来れていないことを指摘。またそれに対して、音だけの優位性やコミュニティとの親和性、そして災害対応の威力発揮など、まだまだ文化に食い込む要素は残っていると評価。以上から、シンジケート発信型、地域連携型、地域密着型など、様々なエリアやビジネス連動を念頭に、ラジオは地域情報メディアの担い手として残すべきだと提言されている。

続く第2章は、そもそもラジオという音声メディアを存続させるに当たってはデジタル(V-Low)が必須なのかということを議論。すなわち、V-Lowという周波数帯は使えるけれど、果たしてそこで音声メディア関係者がやりたいことは本当は何なのかということを話し合ったようだ。ここでは、現在のアナログ放送のサイマルをV-Lowでやるべき、そして、放送局(流す場所)と放送事業(ビジネスする人)は分けて考えるべきと提言した。

そして結びの第3章は、2013年9月1日、仮に地デジラジオの本放送が始まって盛り上がっていると仮定したら、どんなイメージのものなんだろうということをシミュレーション。で、その日に発売したと想定して、雑誌「BRUTUS」の紙面を作成した。これは圧巻!単なる議論だけの報告書でないユニークさがここにある。実際、昨年出版したBRUTUS3月号でRADIO特集した「なにしろラジオ好きなもので」は大好評でバックナンバーは品切れになっている。このイメージシミュレーションにより、第1章、第2章での提言がさらに裏付けされ、

(1)V-Lowの放送対象地域は、地域性を考慮し、原則として県域、ただし3大都市圏(東阪名)はブロックで見立て、より周波数利用が見込める都市圏に帯域を多く振り分ける(3大都市圏11セグメント、県域7セグメント)

(2)ハード会社とソフト会社を分離し、ハード会社は全国一社とする。

(3)アナログ放送のサイマルから始める

(4)V-LowのプレイヤーはNHKと既存ラジオ局、新規ラジオ局、そして、交通、教育、福祉、などに関わる事業者にも入ってもらうなどの提言がされた。

テレビが完全地デジ化される
2011年7月24日、ラジオはアナログ放送はそのまま、現在テレビの7チャンネル帯で試験放送されている地デジラジオは終了、残るは、radiko.jpなどインターネットでのIPサイマルラジオなど、少ない選択肢だけで再起できるのだろうか・・・となっていたラジオ業界にも僅かながら(とは失礼かもしれないが)希望の灯りが見え始めたのではないか・・・。

しかしながらまだまだ課題も多いようだ。V-Lowの受信アンテナは現在のアナログテレビの受信アンテナを進化させたものになるため現在の技術ではまだ携帯電話に収まるほど小さくできないらしいし、また、新規で受信端末を普及させねばならないため、何かとの相乗りでの普及を考えねばならず、提言にもある携帯電話とV-Lowの相乗りとなると、すでに通信事業者が参入を表明しているV-High帯のマルチメディア放送よりもメリットを見いださねばならない・・・。

そのような困難な課題もまだまだ
あるが、もはや全世界規模でデジタルに向かっている今日、もうアナログへの後戻りはできないはず。今回の報告書をいかに具現化してデジタル化を実現するか、元ラジオ職員としては、この愛着のある音声だけの世界の存続を待ち望んでいる。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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