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「IPTV Service Architecture(FG IPTV-ID-0094)」に対するフィードバック

2007/01/04 06:21
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中島聡

Microsoftでチーフアーキテクトを務めた経験を持つUIEvolution CEOの中島聡氏が、「Web 2.0」と呼ばれる新しいネット時代のサービスのあり方や、ライフスタイルの変化について考察します。
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 日経エレの記事で、NTT、KDDI、シャープ、ソニー、東芝、日立製作所、三菱電機の7社が国内で検討しているIP放送の形態をまとめた「IPTV Service Architecture」(FG IPTV-ID-0094)という文書を連盟で提出したとのことを知り、さっそく目を通してみた。

http://www.itu.int/ITU-T/IPTV/events/072006/docs/ID/FGIPTV-ID-0094e.doc

 Encoding、QoS、DRMなどの基礎部分に関しては、それなりの考慮がされているように思えるが、EPG(electronic program guide)、ECG(electronic content guide)あたりのアーキテクチャがいかにも「こちら側」的な設計で、下の図のようなアーキテクチャになってしまっている。

 せっかく、ネットワーク・オペレーターやサービス・プロバイダーの壁を乗り越えてIPTVを実現しようとしているのに、「EPG・ECGはメタデータとして端末(IP セットトップボックス)に渡し、それをどんなUIを使って表示するのも端末しだい」というアーキテクチャは明らかに今の「サービス指向な時代」に思いっきり逆行している。

 端末に表示されるUIは、セブンイレブンで言えば「店構え、商品の陳列のしかた、客への対応マニュアル」にも相当する、とても重要な「サービスの顔」である。それを、「UIは端末側のプログラムで端末独自のものを提供するので、サービス・プロバイダーはメタデータだけ端末に渡してください」と言うのは、セブンイレブン本社からは商品だけを届けてもらい、店構え、商品の陳列のしかた、客への対応のしかたなどすべてを、それぞれの店舗のオーナーにまかせてしまうようなものである。これでは、サービス・プロバイダーが「おもてなし(User Experience)」に責任を持つことが出来ず、良いサービスを提供することがものすごく難しくなる。

 より「サービス指向」なアーキテクチャは、端末側には「User Agent」というソフトウェアだけを置いておき、実際のユーザーインターフェイスそのものはサーバー側から送る、というアーキテクチャである(ちなみに、オンデマンド・TV社の端末はUIEngineを「User Agent」として採用したこのアーキテクチャで作られている)。

 こうしておけば、ユーザーがどんな端末を使っていてもサービス・プロバイダー独自のUIを表示することができるし、ユーザーの反応を観察して徐々に使い勝手を良くしたり、新しいサービスを後から追加したりと、より柔軟な顧客サービスを展開することが可能になる。サービス・プロバイダー間の戦いも、単なる品揃えと値段だけの消耗戦ではなく、「使い勝手」や「おもてなし」での差別化が可能になる点が、単にメタデータだけを送る場合と大きく異なる。

 ウェブ・サービス・ビジネスでリーダーシップをとっているAmazonやGoogleが何をしているかを注意深く観察すれば、デバイスがネットに繋がってくると、ユーザー・インターフェイスはデバイスの顔ではなく、サービスの顔になってくることは、火を見るよりも明らかだ。「EPG・ECGのデータをメタデータとして取得して端末独自のUIでそれを表示させる」というアーキテクチャがいかにこれからの時代にふさわしくないかを認識した上で、ぜひとももう一度考え直していただきたい。こんなアーキテクチャのままでは、IPTV市場そのものの立ち上がりが危うくなるし、end-to-endでサービスからUIまでのすべてをコントロールできるAppleやMicrosoftとは戦えない。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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