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IPTV - 誰がユーザーエクスペリエンスをコントロールするのか?

2006/04/26 10:30
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中島聡

Microsoftでチーフアーキテクトを務めた経験を持つUIEvolution CEOの中島聡氏が、「Web 2.0」と呼ばれる新しいネット時代のサービスのあり方や、ライフスタイルの変化について考察します。
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 先週末に日本からシアトルに戻ったばかりだが、急遽月曜日からラスベガスで開催されているNAB(National Association of Broadcasters)に参加することになった。この手のショーに来ても、普段は講演など聞かずに人に会ってばかりいる私だが、今回は急に来ることが決まったこともあり、少し時間が空いているので、それを利用してIPTVに関するパネルディスカッションを聞く。

 パネラーは、Microsoft(ソフトウェア)、at&t(ネットワーク・サービス)、Alcatel(システム)、Disney(コンテンツ)という組み合わせ。それぞれがIPTVに関する姿勢を表明した後、観客からの質問コーナーが始まるので、とりあえず質問用のマイクの前に並ぶ。この手のものに参加する場合は、(1)積極的に参加するか、(2)全く参加しない(寝る、内職をする、部屋から出る)、の二つに一つしかない、というのが私のポリシーだ。

 私の前にならんだ二人が質問をしている間に、何を質問するか考える。せっかくこれだけのメンバーが揃っているのだから、少しは物議をかもし出す質問をしなければ面白くない。そうだ、得意のユーザーエクスペリエンスの話にしよう。そう考えているうちに、私の私の順番が来る。

 「モバイルの業界では、ESPN mobileのようなMVNOが始まっており、誰がユーザー・エクスペリエンスを提供すべきか、というテーマが話題になっています。IPTVにおいても同じことが言えると思います。IPTVのユーザー・エクスペリエンスをコントロールするのは、at&tのようなサービス・プロバイダーなのでしょうか、ESPNやDisneyといったコンテンツ提供者なのでしょうか?それともMicrosoftなのでしょうか?」

 このテーマに関しては、誰もが結構神経質になっているはず。特に、マイクロソフトのプラットフォームを使った場合、パソコンと同じく、ユーザー・エクスペリエンスをMicrosoftに奪われてしまうのではないか、という危惧は多くの人が持っている。そこをくすぐるためにも、あえて「コントロール」という言葉を使ってみる。

 期待したとおり、Alcatelを除いた三人が、激しく反応する。特に、at&tとMicrosoftの二人は、「何でそんな質問を微妙なするんだ。そこには触れないで欲しかった」という顔をしている。Disneyの人(女性)だけは「良い質問ね」という感じで笑っている。彼女とは名刺交換をしよう。

 まずはat&tの人が率先して答え始めるが、ものすごくDisneyに気を使った返事である。そもそも「ただの土管」になりたく無いからこそ開始するIPTVサービスなので、そこでのat&tとしてのブランディングはとても重要。しかし、コンテンツ提供者をあまりないがしろにも出来ないので、「ブランドはどちらにとっても重要なので…」などと訳の分からないことを言っている。「Disneyのコンテンツは欲しいが、ブランドはこちらが維持したい。でも、あまりそれを強調してDisneyを怒らせても良いことはないので、これはあまり触れて欲しくなかったトピック」というのが本音だろう。

 Disneyの彼女は、「コンテンツ提供側としては、ブランドは大切だけれども、複数のチャンネルを持つこともとても大切なので」とやんわりと受け流す。ブランド戦略を一番重視しているのがDisneyなのは、皆が知っていることだ。富士急ハイランド内にミッキーマウス館を持ったりせずに、ディズニーランドを経営しているのにはそれなりの理由がある。モバイル側で、ESPN、Disney それぞれがMVNOビジネスに参入しているのもまったく同じ理由だ。

 最後にMicrosoftの人が、「Microsoftはユーザーエクスペリエンスをコントロールしようなんて決して考えていませんよ」とあわてて補足したのがなんとも言えずに象徴的であった。Microsoftが家電業界から総スカンを食っているのは、まさにそこが理由なので、IPTVに関してはかなり慎重な動きをせざるをえないのだろう。ただし、Microsoftとしては、ユーザーエクスペリエンスに関しては、100歩譲って相手の顔を立てながら、Microsoft独自のDRM技術をばら撒いて、そこでコンテンツの流通の鍵を握る、という戦略の方が正しいように私には思える。こと家電に関して言えば、WinCEを採用してもらうことなんかよりもMicrosoft独自のDRM技術を採用してもらう方がよっぽど戦略的に重要な意味を持っているはずだ。

 結局、この質問に対する答えだけで結構もりあがったし、観客は喜んでくれたので、私としては質問した甲斐がある。今度は、携帯電話事業のカンファレンスでも、チャンスを見つけて同じ質問をしてみよう考えてしまう私であった。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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