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「ソフトウェアの肥大化」と「ムーアの法則」

2006/03/29 03:12
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中島聡

Microsoftでチーフアーキテクトを務めた経験を持つUIEvolution CEOの中島聡氏が、「Web 2.0」と呼ばれる新しいネット時代のサービスのあり方や、ライフスタイルの変化について考察します。
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 一つ前のエントリーで、Javaの失敗の原因が「豊富なAPIでWindowsに対抗する戦略に出たために肥大化しまったことにある」と書いたが、この「ソフトウェアの肥大化」という現象は、実はあらゆる所に見られる。

 Windowsがその典型的な例だ。今のパソコンは、Windows95がリリースされた当時のパソコンと比べると、メモリー容量もCPU能力も何倍にも、何十倍にもなっているが、一向に早くなったとは実感できない。なぜだろう。それは今のWindowsがWindows95と比べてはるかに肥大化しているからだ。

 Windowsに代表されるOS、IEやFirefoxのようなブラウザー、JavaやFlashのようなミドルウェア、そしてMicrosoft Officeのようなアプリケーション、どれもバージョンアップを重ねるごとにどんどん肥大化する。確かに機能が増えてはいるのだが、より多くのメモリーを使い、より高い処理能力をCPUに要求する。

 これはハードウェア業界と持ちつ持たれつの関係にあるソフトウェア業界にとっては当然のことなのかも知れないが、無理やり新しいハードウェアを買わされる消費者にとっては迷惑な話だ。私の知り合いに、使っていたWindows Meパソコンのプリンターが壊れたので新しいプリンターを買ったところ、そのプリンターは最新のOSであるWindows XPでしか使えず、結局パソコンまで買い換えなければならない目に会った人がいるが、それを「当然のこと」と考えるのはパソコンを売る側の論理でしかない。

 この「ソフトウェアの肥大化」を「ムーアの法則」という観点から見ると、今までのソフトウェアは「ムーアの法則のおかげで増大したハードウェア能力をソフトウェアで全て使い切る」という方向で進化してきた、ということが言える。

 しかし、私は、その方向性はソフトウェアを走らせることが出来るデバイスが実質的にパソコンしかなく、それも全ての処理をクライアント側で処理するしかなかった一昔前の時代のものだ、と感じている。携帯電話、カーナビ、テレビ、デジカメ、などのあらゆるデバイスにCPUが入り、それらがネットワークに繋がってきたユビキタス・デバイス、ユビキタス・ネットワークの時代には、この「ムーアの法則のおかげで増大したハードウェア能力をソフトウェアで全て使い切る」方向性が正しいとはどうしても思えないのだ。そんなことを続ける限り、デバイス間でアプリケーションやサービスを共有することは実質的に不可能である。ソフトウェアの開発コストは上昇するばかりだし、ユーザー・エクスペリエンスも向上させることはできない。

 Microsoft、Sun Microsystems、Macromediaといったソフトウェア・プラットフォームを提供する企業が、互換性を犠牲にしながらも、Windows CE、J2ME、Flash liteという「組み込みデバイス向けの別個のプラットフォーム」を出さざるをえないのが、その方向性に根本的な問題があることの証拠である。

 では、これからの時代にふさわしいソフトウェア・プラットフォームとはどんなものなのだろうか?あらゆるデバイスで動くことを前提に、機能を究極にまで切り詰め、移植性を高め、進化とともにどんどん大きくなったりしないソフトウェア・プラットフォームというものが作れないだろうか?

 それが実現できれば、「ムーアの法則」がもたらすものを「プラットフォームにどんどん機能を詰め込む」という方向性の進化に消費してしまうのではなく、「プラットフォームをより多くのデバイスに広げ、アプリケーションやサービスをより多くのデバイスを通してユーザーに届ける」という方向性の進化に活用できるのではないか、というのが私の考えである。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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