今、世界は、Sustainabilityという問いかけを前に、改めて、都市の再設計・再構築を迫られています。
例えば、インドネシアのジャカルタやフィリピンのマニラでは、人口増に伴う環境問題や交通渋滞の深刻化により、街の機能がパンクの危機に瀕しています。中国では、増えすぎた北京の人口分散も含め、湿地帯で何もなかった雄安で、「国家級新区」の建設作業が急ピッチで進んでいます。政情が安定してきたアフリカの国々では、これから新たな首都建設がどんどん進んでいくでしょう。ドバイでは、スマート・ドバイ。シンガポールでは、スマート・ネーション。国家級のプロジェクトが動き出しています。今後は、東京ですら、コロナに対応するための街の機能の再設計が、重要な課題となってくるでしょう。
世界の金融は、こうした流れを確実に捉えています。何故なら、更にニッチ化し、隙間を探す形になってきたニュービジネスを追いかけるより、これから発展する街づくり産業の方が、大きな未来が見えるからです。ただし、これからの都市整備は、データやIT(情報技術)の活用が前提となります。この先「IT都市産業」が巨大産業へと成長していくことになるでしょう。
そこで課題は、技術の国籍がどこになるかです。日本にも認証技術など要素技術はあります。むしろ、世界にあって日本にない技術を探す方が難しい。しかし、中国のような現実の暮らしや街への実装は進んでいない。暮らしの技術には、使い込みが必要です。実証実験で止まっていては、実際に暮らす人達がそれを求めるようになった頃には、日本の産業の参入余地はなくなってしまいます。
ここでの鍵は何か。プロフィットシェア型のビジネスモデルです。人口減少によって国内マーケットは嫌でも縮小均衡に向かいます。例えば自動走行車両。宅配事業者、旅客運送事業者などが、それぞれバラバラの自動走行車両に投資をしていては、回収が覚束ないのは当然です。協調して投資を行うプロフィットシェア型のビジネスモデル。また、それを叶える、事業者間あるいは地域社会との良好な協力関係が作れなければ、暮らしへの技術の実装の場は、作れません。そこに、日本がまだ逆転できるチャンスも残る。そう考えています。
海外では、悪戦苦闘がどんどん進んでいます。従来型の街づくりに満足しているのは、治安の良さに安住している日本だけかもしれません。交通や医療、教育など複数分野のサービスを住民目線で同時に実装した都市はまだ乏しい。であれば、もし日本が最初に、プロフィットシェア型のビジネスモデルの合意に成功すれば、日本発のビジネスモデルを世界に売り込むチャンスも生まれる。街づくりほど、今、チャレンジングで面白い場はありません。
まちのDX(デジタルトランスフォーメーション)を一気に進める「スーパーシティ」。地域課題を解決するだけでなく、日本の産業の将来にとっても重要な取り組みとなると思います。
ご関心をお持ち頂いたら、こちらも併せて、ご笑覧くださいませ。