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Makersと日本  ~知恵の余剰をネットで集める【前編】

2014/03/24 03:30
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プロフィール

村上敬亮

長年、官の立場からIT業界に携わり、政策の立案、実行をしてきた経済産業省 資源エネルギー庁の村上敬亮氏が、ITやエネルギー、様々な角度から、日本の発展のための課題や可能性について語ります。
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Ⅱ.三つの法則 【本論・前編】

 Refernce KitがアジアのIT業界に広がっていったプロセス。それが今度は、Makersという形で、普通の消費社会に普及しようとしている。この流れを活用して逆に事業を上手に起こそうとすると、次の三つのポイントが、大事な特徴として見えてくる。

■ 伸びる市場にはLiteracy Gapが無い

■ ファイナンスは需要側他に着く

■ 知恵の余剰をネットで集める 

 

 やや唐突な組み合わせだが、お許しをいただいて、一つ一つの論点を見ていきたい。まずはMakers的な動き(元祖の教えはこちら、元祖の本はこちら)に戻ってみよう。 

 

1.伸びる市場にはLiteracy Gapが無い

(1)  自作工房とMakers

 その基本の一つは、様々なものの自作だ。 

 日本でも、ファブラボ的な動きがずいぶんと広がってきた。渋谷、鎌倉など全国に7か所にある元祖ファブラボLoftや無印良品と組んだ”&Fab、渋谷のファブカフェ、神田のはんだづけカフェなど。アメリカに行くと、これが更に深化し工学系になったTechShop(次の写真を参照。例えばこんな記事も、)が、本格的にうねりを上げている。

 

 ここでは、みんなが、もの作りを楽しんでいる。作り手と使い手が一つの目線になって、ものが作られている。行くととてもみんな、楽しそうである。ここでは、作り手が使い手であり、使い手が作り手だ。当たり前だが、需要と供給という関係が無い。


DIYは、本来、楽しい。


たぶん、(自分には語る資格無しだが(苦笑)、) 料理と同じだ(家めしについてはこちらを。。)。

ものは、使いこなさなければカッコ悪い。消費は、疾うに、足りない機能を買う時代から、良いと思うものを探す・作る時代に変わっている。どうしても必要な機能ものといえば、携帯とネット環境くらいなものだ。

今や、トイレ・浴室だって共同で良いと思えば、一人暮らしの部屋にとって必要なものは、「蒲団」くらいなものだろう。それ以上のものは、欲しい思ったものを欲しいと思ったときに買う。機能では無く、「可愛いと思った」から、「話題に乗るために必要だと思った」から、様々な動機付けでものを手に入れる。

部屋にはカッコ良いものだけあるのが理想だ。ものがたりの無い消費は、起こらない。加えて、若い人たちの多くは、通信費に生活資金の多くを吸い上げられ、ものに対する可処分所得は減る傾向にある。だから、勢い、消費は、自分が良いと思うものに限定される。40歳代以上の世代や子育て世代が従来型の消費を続ける一方で、若者を中心に消費のスタイルは確実に変わりつつある。

 

時代を作る新しい消費は、こういう所から発生する。

 

 品ものラボ乙女電芸部ヤミ研ワールドカフェ、こうした自作工房や自作製品を支えるコミュニティは確実に始動を始めている。最初から世界を向いて市場展開を図り実績を上げつつあるスマホ分野のcocoppa、携帯デコのGLAM BABY/などは、ビジネスとしても成功しつつある。メーカーベースでも、レゴと科学の融合を目指したNYLittle Bits モトローラの新しい携帯Philipsが展開するiPhone電源ベースの照明”hue” など、枚挙にいとまが無い。

LittleBitsの例

 

(2)  鍵はユーザのクオリテイ

 これらの市場の立ち上がりを支えるのが、各分野のハイエンドユーザ=作り手である。ユーザ=作り手の集団の形成がこうしたビジネスの大前提だ。だから必ず、ビジネスのスタートにはコミュニティがある。こういった活動に参加するだけの高いモチベーションと高いリテラシーを持った特異なユーザ集団。そのモチベーションとリテラシーを、形成されたコミュニティを通じて拡散できるかどうかが、コミュニテイごと大きくしていけるかどうかが、次の段階の成功に向けた勝負だ。

 その点、cocoppaなどは、既に一定の閾値を確実に超えたと言えるだろう。

ただし、そこで成長を焦ってはいけない。なぜなら、そこを焦って、作り手と使い手の間にリテラシーギャップが生じたら、作り手と使い手の分離を生んでしまうからだ。その隙間にこそ、二番煎じの競合会社や悪徳模倣業者に参入の隙が生まれる。”coccapa”でも良いし、”GLAM ADULT”でも良い。劣悪な模倣事業なら簡単にできる。

 大切なのは作り手となるユーザのクオリテイだ。

 ユーザのクオリテイ作りへのこだわりから逃避し、その結果二番煎じによるフォローを許すと、市場自体が一挙にカッコ悪くなる。自分自身も先行投資を回収する機会を失う。

新しい市場を作り、独占的地位を手にするための最大の敵は、Literacy Gapだ。Gapを作らずに、どうコミュニティごと大きくなっていくか。今、ここに、大きな「成長の壁」がある。マス・スケールの販促活動を急ぎすぎてGapを生めば、競合も容易に参入するし、オリジナル・ユーザが市場にとどまるモチベーションも低下する。市場の質の成長がそこで止まり、つまりは、そこで潜在的な市場の成長限界も規定されてしまう。

他方で、オリジナルユーザの居心地よさばかりにとどまっていては、今度は逆に、市場が全く成長しない。広告・販促活動ではなく、ユーザコミュニティ自体が自走・拡大していくような市場の成長のさせ方が必要だ。

そのためには、例えば、仕掛けるメーカー側のメンバーがユーザに混じって、そのコミュニティを育てる側に回るようなことも必要だろうし、その中では、旧来型の自分の会社のダサさを、メーカー側のメンバー自身が思い切って正面から批判できなければいけない。これは、当たり前のやるべきことだと思うが、組織忠誠心の高い日本企業の社員にとっては、案外、高い壁になるのが実情だ。

 

(3)  敵はLiteracy Gap

繰り返しとなるが、市場における急激なLiteracy Gapは、とても危険だ。偽物サプライヤーに隙を与え、怪しい代理店や、先行投資をしない流通業者に利益を横から吸い上げられる構図を生む。自分自身の先行投資が回収できない構図にはまる。

正直、恥ずかしい話だが、自分が担当している今の太陽光発電市場の一部が、そのパターンに典型的にはまり込んでしまった。今、その将来の成長性のポテンシャルが試されている。わかりやすいので、ちょっと触れてみたい。

太陽光発電の場合、日照、屋根の荷重強度などの設置条件はもとより、電力会社との接続協議が絶望的に難しい。そこには本来的なLiteracy Gapが最初から存在している。でも、市場は制度により急激に成長した。3年前に買取制度が始まり補助金も復活した住宅用太陽光には訪問販売がついて回ったが、今回、固定価格買取制度で本格的買い取りの始まったメガソーラー市場でも、似たようなことが起きている。

急激な市場拡大を支える新規参入者、すなわち太陽光発電所のオーナーになろうとする事業者の方の多くは、電気事業とは全く関係の無いところから参入している。故に電気リテラシーが圧倒的に低い。「無効電力」や、「SVC」などと電力会社に言われただけで、「???」となってしまう。素人なら、当たり前だ。電線は何故三本一組なのか。「三相交流」一つとっても、説明はとても難しい。

しかし、そのままではプロの発電事業者とは、本来、とても言えない。でも、そこをしっかりと学ぼうとする気力のある事業者が少ないのも、また現実だ。だから、市場が荒れる。安易な流通業者のいい加減な説明に過剰利益を許す。そして、太陽光発電市場の競争全体が、外部からは緩く見えるし、批判にも晒される。

実際、流通業者の現場で活躍してきた人材の中には、数年前、それこそ、「蒲団」を売っていた人も少なくない(苦笑)。このLiteracy Gapを埋めきらないことには、市場は健全には成長しない。ユーザにとってはとっつきにくい市場のままとなるし、その取っつきにくさを解消しようと思うと、間に入った悪徳業者に過分に利益を吸い上げられることとなって、だんだん嫌気がさしてくる。

この構図を、買取価格を決めなければならない政府の立場から見ると、Literacy対策を考えずに買取価格だけ引き下げれば、悪徳流通業者ばかりでなく大切にしたいユーザ自身を苦しめてしまい、一部の力のある事業者だけに利益が集中する市場を生む。かといって買取価格を引き下げなければ、悪徳流通業者が元気に生き残ってしまい、やる気のあるプレーヤーが市場から出て行ってしまう。そういう矛盾をはらんだGAPにはまっている。当たり前のことだが、問題の本質は、注目を浴びがちな価格の上げ下げだけでは解決しない。LOOOPさん (例えば、MY発電キット http://looop.co.jp/product/ground_type/index.html)の密かな人気の秘密も、この辺にあるのだろう。

話が、ずれた。。(苦笑

 

2. ファイナンスは需要側に着く

(1) 再び太陽光を例に

 わかりやすいので、こちらの事例も再び、太陽光発電を例に説明したい。

 太陽光発電の世界では、今、ABL(動産・売掛金担保融資、金融庁も現在積極的に推奨中。)が話題だ。個人的な経験で恐縮だが、固定価格買取制度を設計した際には、実は、これらの動きなども念頭に置き、例えば電力債権に担保設定を行えるようようにするなど、ファイナンス事情との整合性に苦心惨憺したのは、記憶に新しい。

 しかし、この動き、本当にABLなのかといわれると、ちょっと怪しい。インフラと呼んでも差し支えの無い大型のメガソーラー発電所なら、もちろん大いにアリだが、中小規模のメガソーラーでいちいち、本格的なABLやプロジェクトファイナンスを組んでいるだけのファイナンスコストは、かけられないはずだからだ。

名目はともかく、本来、起きるはずのことは、保証人や担保など、信用力の範囲内での貸金。でも発電事業者への参入を目論む地元の事業者の信用力は、そんなに大きくない。だから、放置しておくと、中小規模の太陽光発電所へのファイナンスに空白が生まれる、少なくとも、はずであった。

 しかし、現実には、それでもファイナンスはついてきている。金融機関の皆さんには、プロファイに似せて、色々な理由を付けていただき、精力的に対応をしてもらっている。地銀さん、信金さんといった地域の金融機関の方々もだ。さて、それが出来るのは何故か?というのが、ここで問いかけたいお題だ。

 

おそらくだ。

 

起きていることは、発電所に融資しているというより、パネルを購入する購入資金に対してクレジットローンを組んでいるような、そういう感覚で融資している、ということではないだろうか。しかも、そのパネルは確実にキャッシュを生み出す動産だ(ま、それこそABLと言うことなのだが・・・)。ある種のトレンド消費に対するクレジットローン。そのデフォルトリスクは、個々の案件自体に対しては審査していない。市場に対し貸し出す資金量全体に対してデフォルトリスクを見ていると言っても良いのではないか。


(2)  個々のサプライヤではなく、ユーザ市場全体に与信する

改めて、申し上げたいことは何かというと、金融機関の側から見ると、太陽光発電事業者は、事業のサプライヤとしてではなく、パネルという設備の消費者としてみられている、ということだ。一件、一件のサプライヤの信用力は補完的にしか見ていない。もともと、そこだけでは、何千万円も、何億円ものお金を地域の中堅・中小事業者に貸しだすのは難しいはずだからだ。

しかし、個々の電力供給事業に対して審査すれば審査不能に陥る話も、市場全体を一つの消費トレンドとしてみれば、審査可能になってくる。一件一件が危なっかしくても、パネル市場全体としてある確率で成功することが見えていれば、とにかくたくさん貸し出してしまうことで、全体として回収できる見通しが高まる。パネルという商品がトレンドに乗っかった消費分野であるかどうか、すなわち、融資した資金量全体に対して、一定のデフォルトリスク内に納められる見通しがあるかどうかがはっきりすれば、ファイナンスは可能だ。

まさに、ファイナンスは、どちらかと言えば、サプライサイドの信用力ではなく、需要側のトレンド自体に対して付いてきているのではないだろうか。

 

このパターンは、日本の製造業も経験しているはずだ。僕には、フェアレデイZを米国で名車に育てた片山豊さんが、その自著の中で語るクレジット付与の苦労話が、思い出される。クレジットが付与されるには、その消費がトレンドになるという見通しが必要なのだ。

ファイナンスは、供給側に着いているのではない。ファイナンスは、需要側に付いてきている。消費トレンドに対して一定の計算が建つからこそ、需要者自身に実質的なファイナンスがつき、場合によっては、その間接的効果として、その需要者に商品・サービスを提供する供給者への融資が行われている。そう見ることは出来ないだろうか。

ユーザコミュニティを自ら作らせ、トレンドを生み出し、そのトレンドを独占可能なミニ・サプライヤーを育て、そこで生まれる過剰レントをファイナンスコストとして回収する。この組み合わせをクラウドで量産する。そういった企みが本当に成立するのかどうか、そういうゲームに挑んでいるように見えなくもない。それが、ビックデータという名前の裏に潜んだ、本当のゲームだ。

 やや難解なことを短く書こうとしたので、不正確かつ消化不良かも知れないが、ここで申し上げたいことは、金融は、本来サプライサイドでは無く、ディマンドサイドを見ている。そういうことである。

では、それがどう、次の産業論につながっていくのか。チエの余剰をネットで集める行為が、ファイナンスと結びついたときのパワーと可能性について、次に見てみたい。

 

次(後編)

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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