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「まちエネ大学」❷ : 再エネで、地域の中に潜む「壁」を超える (続き)

2013/11/24 00:00
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プロフィール

村上敬亮

長年、官の立場からIT業界に携わり、政策の立案、実行をしてきた経済産業省 資源エネルギー庁の村上敬亮氏が、ITやエネルギー、様々な角度から、日本の発展のための課題や可能性について語ります。
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2.多様性を受け入れ「仕組み化」する

 

(1)三つの地域での経験


まちエネ大学では、これまで5か所でプレイベントをやってきました。立ちはだかっている「壁」にも、地域ごとに個性がある。このことを実感できたのは貴重な体験でした。三つの地域の例でお話しします。


ある地域では、その地域の自然や食べ物に絆された移住者がとても多く、その移住者が「熱く」、色々仕掛けようとされていたのが特徴的でした。まさに地元Lovers。ただし、肝心の地元出身者の方々にとっては、地元の素晴らしい環境がある意味当たり前であることもあり、まだそこまで「熱く」なっていない。金融機関の側から見ると、地元で貸し借りの実績がある地元Originalとのつながりなしには、移住してきた地元Loversの思いだけにファイナンスするのは難しいわけですが、そのつなぎ方が難しい・・・。


別のある地域では、事業力のある、資産も豊富な事業者が潜在的にたくさんいらっしゃました。ただ、いざ、再生可能エネルギーなど新たな社会的取組を始めようとすると、そんなことを地元のコミュニテイの中で言い出しても良いのかなあ、みたいな、地域コミュニテイに対する強い遠慮のようなものがある。力のある人がたくさんいるのに、横につながらず、活動が立ち上がらない・・・。


ところが、また別の地域では、むしろ逆。NPO活動など社会的貢献活動が活発な土壌だったことから、新たな取り組みを提案したり、その提案を絆のネタにして横につながっていくことは、とても得意な方が多い。ただし、主張が純化することに慣れてしまっているだけに、逆に色々な考え方の人と同じ船に乗りながら、反復継続できる「仕組み」にするところに苦手意識が強く、インパクトのある事業になかなか移行できない・・・。


もし、地元Loversと地元Originalがつながれば。。もし、事業力のある地元事業者が新しい旗頭で柔軟に結びつき合うことが出来れば。。もし、既に主張で繋がり合っている人たちが事業力のある人たちと結びつきあうことができれば。。


いずれの地域でも、今すぐに新しいグリーンエネルギービジネスが盛り上がり始めそうな雰囲気を、たっぷりと感じます。でも、何らかの「壁」がその実現を阻んでいる。ここでは敢えて、3地域の特徴をバラバラに書きましたが、ある地域の本講座第1回目で、この特徴をご説明しご自身の地域がどれかを当てていただこうとしたところ、ちょうど1/3づつ手が上がった地域もありました。

いずれの「壁」も、程度の差こそあれ、全ての地域に共通しているのかもしれません。とにかく、これらの「壁」を除いていかなければ、新たなVisionは、具体的な活動にはつながっていかないのではないでしょうか。

 

(2)求大同、存小異


ちょっと古くさいような気もしますが、大同小異という言葉があります。国語辞書的には、「似たり寄ったり」といった意味で使われると思いますが、更にその淵源をたどると、中国の格言、“求大同,存小異”「小異を残して大同につく」にたどり着きます((注)よく「小異を捨て」とわれますが、直訳的には誤訳なのかもしれません。)。


別に小異はあっても良いんです。それを捨てる必要も無い。ただ、大雑把に同じなら、どんどん一緒に取り組めば良いじゃないか。自分たちの個性は消さないまま、もう一段、上の傘の取組として、新たな活動を共有していく。そういう部分が、多分足りないんです。


確かに、政治的活動としてエコやグリーンをセクト化していく必要があるときには、小異に拘る必要があると思います。でも、何かを事業的な取組として実現していくときには、小異に拘る必要は全くありません。


そもそも、お金を貸してくれる人、場所を貸してくれる人、一過性のシンポジウム程度なら何とかなりますが、毎月繰り返し定例化する事業となると、いろいろと意見の違う人に本格的に協力してもらう必要があります。


よくありがちなのは、社会全体からみれば、主張勢力としてほぼ同じことを言っている数%の人たちが、集まると、仲間内で少しづつ違う主張やアプローチの是非を更に議論しあってる。外にいる人からみれば、同じ穴の狢に見えるのに、何故か仲間内で言い合い、何かしら関わりにくい雰囲気になっている。社会的貢献活動には時々見られる光景です。


純化した主張の正当性を主張すること自体が目的なら別ですが、成果を求める「取組」にしたいなら、全く無駄なこと。正しい主張をぶつけ合うことに楽しみを見いだしていたら、みんなが自分の正しさだけを競うことになり、結果として、ずっと一緒に取り組めない。


もし、「仕組み」にしたいなら、取組の中に、互いが自分が正しいと思うことを主張する以外の「楽しさ」がないと、活動は長続きしません。手を動かして何かを作るとか、グループワークをするとか、この人と会えるのが楽しみとか、そういうことが案外大事だと思うのですが、他方で、意識的に行うことを忘れられているケースも多いような気がします。


日本人はどうしても同質性が高い環境に慣れているので、なーんとなく、違う何かを引きずったまま一緒に取り組みを進めるというのは、苦手分野になのかもしれない。でも、今こそ、Visionを上手に共有して、取組のアプローチや考え方の差を乗り越える手法を開発し、地域に定着させていく時期なのではないでしょうか。既存の会社や行政組織にまず最初に頼るのではなく、独自の方向性で「仕組み」を積み上げ、離陸していくことが大切です。


 

3.地域全体をサポーターにする


再生可能エネルギーでビジネスを起こそうとした場合も、同じです。特に、再エネの場合は、最後の「多様性」が大事になる傾向がある。


例えば、地元の温泉業者さんと地熱発電事業者さんの対立、地元の森林業者さんと収益を上げたいバイオマス発電事業者さんとの対立、地域の景観や自然保護が心配な地元の方と風力発電事業さんの対立。こうした、二項対立の構図が、再エネの場合よくあります。


でも、両者の方々が直接向き合ってるだけでは、なかなか「交渉」は前に進まないことも多い。むしろ、全体をサポートするような「空気感」みたいなものを、二項対立の間に上手に醸し出していかないと、交渉もうまく進まないのが特徴です。


こんな時、例えば、地元の町内会が「お祭りついでに、風力の”風”景気づけてもらおうか?」とか、地元の旅館組合の女将さん達が、「再エネって案外良いじゃない?私たちも何かやってみたい~!」なんていう感じで、発電事業の直接の推進してるわけでも、直接的に反対しているわけでも無い人たちが、積極的に考えてくれると、これが案外大きな影響力を持つ。


風力はどうしても風の吹いているところでしか発電できませんし、地熱のないところでは地熱発電のしようもない。再エネの場合、他の事業より勢い立地制約が強いだけに、周りの皆さんにどれだけ再エネを進めようか?!っていう空気感を作っていただけるかどうかが、ものすごく大切にな

るんです。


自分たちの事業と直接関係のない人たちのことには、なかなか目が向かない。加えて、活動への思いが純化されていればされているほど、ちょっと意見が違う仲間に対するのと同じように、外側の人にも厳しく自己主張をぶつけてしてしまう・・・。地元に「理解」を求めようとは、されていると思いますが、一緒に楽しもうという発想はありませんか?だから結果として、地元から見ると、どこかに上から目線を感じてしまうことにはなっていませんか?これでは、再エネは先には進みません。


「地元理解を得る」つもりで、実は、厳密な意味で思いや主張をシェアできてない外部の人たちを、どこかで区別しちゃうことがある。一緒に盛り上がる、再エネの実現を通じて地域を楽しくする。そういう気持ちで取り組めないと、どちらかが一方的に「理解」を求めるということはあり得ないはずなんです。多様性を受け入れる、言葉にすれば簡単なことですが、実に非常に難しい作業ではないかと感じています。

 
   *   *   * 


純化したVisionがあるからこそ、その担い手は、多様性を喜んで受け入れる。でもそれは、決して自分の主張の良さや個性を消せと言うことではありません。みんなで一つの上の傘をともに差すような、みんなが思いを込められるようなVisionを探す。そういう、一緒に何かに取り組んでいくための方法論と人間関係の文法を作り上げる。そうして、多様性を受け入れる。


 まちエネ大学の一つの大きな目標は、このアプローチの重要性に気づいていただくことです。本講座を通じて、このアプローチ自体に慣れていただければ、これまで苦しんできた活動も楽しめるかもしれない。そんな感覚を身につけていただければいいな、と思っています。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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