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「まちエネ大学」❷ : 再エネで、地域の中に潜む「壁」を超える

2013/11/23 23:30
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プロフィール

村上敬亮

長年、官の立場からIT業界に携わり、政策の立案、実行をしてきた経済産業省 資源エネルギー庁の村上敬亮氏が、ITやエネルギー、様々な角度から、日本の発展のための課題や可能性について語ります。
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1.Power to the People

 

(1)規模が出てくれば、「仕組み」がいる


まちエネ大学では、各会場のプレイベントで必ず、参加者の方々にPower to the Peopleという映画を見ていただきました。これは、北欧のある島で、島内の電気を再エネ100%にすることに成功した人たちを中心に描いたドキュメンタリータッチの映画です。


その中に、こんな一説があります。「仲間内で市民ファンドをはじめたところ、最初のうちは、特段大げさな仕組みは必要なかったが、規模が大きくなりはじめたある時、一人の参加者が不正を働き、それ以降、監査の仕組みを入れなくてはならなくなった。」


確かに、監査の仕組みが必要になったこと自体は、残念なことです。でも、僕が、この映画を良いなと思うのは、監査の仕組みを入れざるをえなくなったことを、この映画が決して後ろ向きには評価していないことなんです。


新たな活動をはじめようとするとき、思いを純化させた仲間でスタートするのは、必要なこと。でも、規模が出てくれば、監査の導入など「仕組み化」が必要になるのも、また当たり前。それがなければ、責任を持った発電事業ができるはずもありません。なのに、「仕組み化」の部分は、案外嫌われやすい。


しかし、この映画すごいところは、見た人みんなに対して、規模に伴う「仕組み化」に、決して後ろ向きな印象を与えない。純化した思いのメンバーによるスタートを見せつつも、責任ある事業主体に成長していくプロセスでのトラブルを、むしろ前向きに、「凄いな」とか、「がんばらないとね」といった印象を残させるところなんです。まさに、


   ”Power to the People”

 

(2)方向性をリセットする


こういう取組がいけるはずだ、こんなビジネスモデルが次の市場を作るはずだ・・・。ある分野に詳しい人が集まると、共通して盛り上がる新しいネタや方向性って、案外簡単に共有できる。そんな風に感じたことはありませんか?同好の士が集まって好きに語り合う夜の宴会などは、本当に盛り上がる。


しかし、こうした外部の人とだと簡単に盛り上がれる話を、自分の会社のなかで盛り上げるのは、とても難しい。まずそもそも、その話題を取り扱ってくれる適切な部署がない。それをそのまま社内で無理に叫んでしまうと、だいたいの場合、既存市場との利害関係が障害になって、トラブルになる。


Walkmanを世に出した我が国企業が何故iPodに負けるのか。同機能の商品企画をAppleより先に持っていても、何故市場に出せなかったのか。このブログでも繰り返し問うてきたテーマですが、MDなど既存の録音機器市場をもっていたからこそ、先に商品化できなかった。本件も、そんなパターンと似てるのかもしれません(初期の頃のエントリはこちら)。


 そんなときは、誰もが会社や組織を腹立たしく思ったりするわけですが、でもそれは、ある程度やむを得ないこと。今ある会社内組織だって、その部署を最初に立ち上げたときは、純粋に語られていた「新たな」思いがあったでしょう。取組をきちんと反復継続可能な事業にしていくためには、やはり「仕組み化」は不可欠だったはず。でも、一度、市場の方向性がずれてしまえば、今度はその仕組みが、新たな取組の足を引っ張る材料になる。さりとて、今現在、売上をたてている既存の組織や事業を軽視するわけにもいきません。起きていることは、とても当たり前のことなのです。


その方向性をリセットするときには、おそらく一度、既存の仕組みから少し距離を置くことが必要になる。監査が無くても取組をシェアできる。そういう思いの熱い社内外のネットワークを作り直した上で、目指すべきVisionをリセットしなければなりません。裏を返せば、そもそも、それを可能にしてくれる、監査の仕組みが無くても互いに信用しあえる人間関係そのものが貴重な資産、ということなんだと思います。ただし、それだけでは課題は解決しない。それを生かすも殺すも、このリセットした方向性を、また新たな「仕組み化」につなげていかねばならないからです。


同好の士が集まること自体への気持ちよさに慣れてしまうと、そのグループは、徐々に多様性を拒み、新たな「仕組み化」に二の足を踏んだり、直感的に「怖いな」と思って足踏みしてしまいがちです。それでは、継続反復可能な「仕組み」には到達できません。信頼の強いネットワークの下で、新たなVisionをシェアしたら、次は、どこかのタイミングで、それを「仕組み」へと離陸させていくことが必要です。


そこで特に難しいなと感じているのが、新たなVisionの発酵期間から、「仕組み」へと離陸するまでの間合いです。この間合い、とても掴み方が難しい。どんな人にとっても、飛び立つ瞬間は勇気がいる。その難しさが、多くの意義ある立ち上がりかけた事業を、一過性の活動にとどめてしまっているような気がします。

 

(3)楽しむ、儲ける、交わる

 

 まちエネ大学で、いつも大切にしているキーワードがあります。


「楽しむ」*「儲ける」*「交わる(:多様性を大切にする)」


この三つのキーワードで何を言いたいのか。



楽しむ:楽しくない作業は続きません。しかし、続かない作業は、成果を生み出せない。成果を生みだす取組となるためには、作業自体への楽しさが欠かせません。


儲ける:儲からない取組は持続できません。一過性のシンポジウムまでなら楽しさを原動力に実現することができても、シンポジウムを毎月定例の事業として継続できるよう、いざ事業化する段階となると、しっかり収益を上げられる構造が必要です。まさに、我が国民法が、「業として」という概念で、反復継続性を問うているとおりです。


交わる:では、反復継続できるような仕組みを作るためには、何が必要でしょうか。その鍵の一つが、多様性の受け入れということではないかと思います。同じように意見が合う人ばかりを相手にしていては、仕組みは作れません。お金をお借りする、資材を調達する、場所を融通していただく。それだけでさえ、多くの場合、考え方や感じ方が違う人の協力が必要になります。取組を反復継続させるためには、考え方や感じ方の違う人とも一緒に活動できることが不可欠です。そうして人の輪を広げ、流れをつかみ取ったなと感じた瞬間が「離陸」速度なのではないかと僕は感じています。



楽しくないものは続かない。儲からないものは反復継続しない。多様性を飲み込まなければ、事業の「仕組み」は作れない。実は、今、地域活性化を考える取組の多くが、この三つのどれかで「壁」にぶち当たっているのではないか。どうやってこの「壁」を超いていくか。これは個々人のスキルでもあり、また、地域の力でもある。


その力を付けてもらうのがが、このまちエネ大学の大きな講座研修目的の一つです。

(続く)

 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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