お使いのブラウザは最新版ではありません。最新のブラウザでご覧ください。

CNET Japan ブログ

FITから見える、地域ビジネスの二極化

2012/12/25 02:30
  • このエントリーをはてなブックマークに追加

プロフィール

村上敬亮

長年、官の立場からIT業界に携わり、政策の立案、実行をしてきた経済産業省 資源エネルギー庁の村上敬亮氏が、ITやエネルギー、様々な角度から、日本の発展のための課題や可能性について語ります。
ブログ管理

最近のエントリー

 


固定価格買取制度(以降「FIT」(Feed in Tariff))をはじめてみて、地域経済について考えさせられることがとても増えた。


 


FITは、ソーラーのような再生可能エネルギーによって発電される電気が、そう希望すれば、必ず、政府の決めた値段と期間で電力会社に買い取られることを保証する仕組みである。このFITによって、信用力の高い一部上場企業や十分な担保・信用力を提供できる企業は、どんどん新たなファイナンスを組み、様々なソーラー発電ビジネスを始めている。制度が始まってまだ半年というのに、今や、普通の不動産屋さんまでが、土地・土地の日照をチェックし、果ては、送電線までの接続距離まで調べるほど、その市場の徹底ぶりはすさまじい。


 


しかし、これだけ活況を呈している再生可能エネルギー市場にあって、まだ、地域経済は、こうした動きに置いて行かれている感がある。その原因も、また、上述したファイナンス側の動きにある。


 


というのも、いくらFITがリターンを保証していると言っても、信用力の弱い地域の事業者には、億円単位の保証や担保は、なかなか出るものではせないからだ。しかし、それでは融資は出ず、結果としてソーラー発電は始められない。さりとて、億円単位のお金を自己資金で出せる人も、そうたくさんはいない。FITがあってもなお、地域自身の力だけでは、なかなかソーラー事業が始められない。地域からは、そう見えているのが実情だ。


 


確かに、地域でも、信用力のある東京の大手事業者に土地等を提供して事業を組んでもらうことはできる。若しくは、いきなり構造赤字事業にして補助事業による事業開始を目論むこともできる。事実、こうした動きは多数見られる。


 


しかし、東京の大企業でも手を出せるハイリターンレートなプロジェクトの世界と、補助金をもらうために、敢えて様々な事業内容を追加し全くリターンを生まなくなるプロジェクトの世界。これは、あまりに極端な事業の二極化ではないだろうか。最近、そうした印象を強く持つ。


 


地産地消と良く言うが、大切なのは、地元産品で物事が完結することではない。地域で資金が循環するサイクルを確立することこそが本質だ。しかし、大企業の手を借りるか、政府補助金の手を借りるか。何かを実現しようとすれば、このいずれかに頼るしかファイナンスの道がない。これが地域経済を活性化しようと頑張っている人たちにとって、曰く言い難く立ちはだかっている壁であるような気がする。


 


それでもなお、これらを潔しとしない場合は、自分の主張にエッジを立て、理想のパートナーを探し求め続けながら、ささやかに言論で食べていくかしかなくなるわけだが、これは、場合によっては感情論にも陥りやすい。自身にとっても辛い体験だ。


 


このような現象が気になり始めて以降、こうした状況は、何も、ソーラーに限った話ではない。そう思う局面に、良く出会うようになった。


 


本来は、ローリターンだけど、しっかりと自立的に実行していくことのできる、地域の身の丈に即した建つべきプロジェクト。そうした事業機会は十分にあるはずだ。


 


しかし、地域におけるソーラービジネスの現状を見ると、東京の事業者に土地を提供するしか出口が無く、精一杯土地代をふっかけるくらいしか、出来ることがない。それが実態なのかもしれない。もちろん、東京の事業者にも悪意があるわけではない。ただ、大企業は大企業なりに投資採算性基準がある。具体的には、他の分野に投資する場合との比較考量を社内でせざるを得ないため、結局、事業内容を絞りに絞り込み、地域には土地代くらいしか還元できない、そうなることも多い。


 


今、地域の金融機関の預貸率は総じて高くない。借りたお金を地域に還元しようにも、なかなか、その先に困っているのが、他方の現実だ。


 


地域にも、事業ビジョンを描きリーダーシップを発揮できる人は多数いる。しかし、問題は、その人達のファイナンス・リテラシーが低いことだ。補助金プロジェクトの組成には慣れていても、ファイナンスを呼び込むような提案や事業計画書が書けない。補助金の申請書には慣れていても、ファイナンスを組成したことのある人は極めてレアだ。


 


FITの存在を考えれば、ソーラービジネスは、非常に手堅いファイナンス機会を地域にもたらす可能性が高い。ファイナンスを取りに行ける人と、様々な事業Ideaを持つリーダー達とがパートナーとして互いを見つけあって事業を進めていくような人的ネットワーク。FITは、地に足の着いた地域事業の組成と、その結果として、こうした人的ネットワークの形成に貢献できる可能性は高い。


 


FITが、もし、地域再エネ事業づくりを通じて、こうしたパートナーの醸成を促進できるのであれば、必ずしも目に見える経済効果ではないかもしれないが、またとない人的資本形成効果があると言える。最近はやらないのかもしれないが、地域経済における社会的共通資本の形成に貢献することができる、ということだ。


 


なかなか難しい課題かもしれないが、地域経済活性化にとって、FITがもたらす一番のメリットは、こうした人的ネットワークの形成効果なのかもしれない。最近、そう思い始めている。




※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
運営事務局に問題を報告

最新ブログエントリー