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慶應義塾大学の國領二郎先生と「つながりの時代をリードする創発経営」について対談しました

2014/12/01 16:00
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村井亮

エンタプライズソーシャルからLINEやアップルウォッチなどのウェアラブルまであらゆるテクノロジーは表舞台の裏側、『楽屋』から始まっている。楽屋では色々な情報が飛び交い、その楽屋でしか体験できない物語がある。IT業界の日常にある出来事を、自由に感覚的に書き綴っていきたい。
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日本経済は大きな岐路に立たされています。
情報化、グローバル化、フラット化など世界が大きく変わっていくなかで、新しい経営のスタイルが求められています。
慶應義塾 常任理事であり、総合政策学部教授の國領二郎氏は著書「ソーシャルな資本主義」で、これからの時代を「つながりの時代」と表現し、多くの企業が「統制」から「いかに創発的な価値創造を活性化させるか」という経営課題に直面していると説いています。そんな國領氏に「つながり時代の創発経営と組織づくり」についてお話を伺いました。


つながり時代に求められる創発とは


– まず最初に著書「ソーシャルな資本主義」でキーワードとなっている「創発」について簡単な説明をお願いします。


「創発」という言葉は様々な学問分野で使われている言葉で、それぞれの分野で少しずつ定義が異なっています。
共通していることは、主体的に動く個が相互的に作用し、思わぬ動きをすることで新しい何かがうまれるということです。
著書の中では、さまざまなヒトやモノがネットワークを介してつながり、相互作用する中で新しい発見が生まれ、そこから新しい価値が創造されるという現象を「創発」と呼んでいます。


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創発的な価値創造を生み出すには


– なぜ、多くの企業が「統制」から「いかに創発的な価値創造を活性化させるか」という経営課題に直面するようになったのでしょうか。


まず「統制」についてお話したいと思います。
近代になって大きな生産設備を動かしたり、多くの人々が一緒に働くという状況が生まれ、ヒトやモノを統制・管理する仕組みが必要になりました。
たとえば工場で考えてみると、1時間に50個の製品をつくるためには、製作のすべての工程が滞りなく進むことが必要になります。
工程のどこかで遅延が発生すれば1時間に50個の製品をつくることができなくなってしまいます。
そこで正確に計画を立てて、正確に実行する必要がありました。
そのような背景から様々な管理や統制が生まれました。
20世紀型大量消費社会では、統制は大きな経営テーマでした。
規模の経済性と効率性を追求するなかできちんとコントロールできることが重要だったのです。
これらの能力は引き続き重要なのですが、現在では、機械化が進み、ノウハウが共有され、付加価値の高くない大量生産が可能な製品の生産拠点は新興国に移っています。
その一方で、付加価値の高い商品やサービスを継続的に生み出している能力・創造性が求められるようになっています。
創造性が重要となる時代では「いかに創発的な価値創造を活性化させるか」ということが大きな経営テーマとなります。


– 創発的な価値創造を活性化させるために重要なことは何でしょうか。


人々の持つ様々な能力・特徴・創造性を上手に引き出していくことです。
新しいヒトとのつながり、新しい企業との連携などで、常に組織に刺激を与え、そこから生まれてきたアイディアを企業の価値に変換していくことです。
そのためには、多様な主体が言葉や考え方・価値観を共有しながら、共通の課題に取り組んでいくことができる共通基盤、プラットフォームが必要となるでしょう。
経営的な視点で見ると、そのようなつながりの場の設計とマネジメントがこれからの大きな経営課題となるでしょう。


– つながりの場の設計するにあたって重要なことは何でしょうか。


設計において重要になってくるのが、蓋然性です。
蓋然性とは何かが起こる可能性が高まっている状態を指します。
偶然と必然の中間にあるもので創発が生まれやすい状態です。
創発自体は人工的に作りあげることが難しい。
コントロールをしてしまうと創発にはなりません。
そのパラドックスを解いていく必要があります。


つながりの場、つながりの共通基盤・プラットフォームとしての社内SNS


いまつながりの場として社内SNSが注目を集めています。
社内SNSを導入いただいている企業様でも、國領先生がさきほどお話されていた創発の源泉である蓋然性を引き出すために活用するケースがあります。
経営コンサルティングや政策研究などを担うある企業では、コンサルタントや研究員の持つ高度な専門分野の知識を社内SNSの導入により全社で共有し、創発に活かしています。
社内SNSを導入する前はお互いの面識がある人同士での共有に留まっていたそうです。
メールなどのコミュニケーションツールでは社内の面識のない人に質問するということが難しかったそうです。
それが社内SNSというつながりの場が生まれたことで、質問しやすくなり、社内の情報共有が進んだということでした。
たとえば、自発的に開催していた研究会の成果を社内SNSに公開したところ、その方法論が実際のプロジェクトで活用されたり、社内SNSの投稿から社員の隠れた才能に気づき、新しいプロジェクトへのアサインが行われたりというケースが生まれています。


– つながりの場、つながりの共通基盤・プラットフォームとして、社内SNSを始めとするコラボレーションツールには、どのような価値があるとお考えですか?


企業にはさまざまな「命令と統制」のメカニズムが働いています。
そこで社員は命令に従い業務をこなしています。いわゆる定形の仕事がこれにあたります。
しかしそれだけでは会社から創造性や柔軟性が失われてしまいます。
どんな会社にも公式、非公式のコミュニケーションチャネルがあり、そこから新しい動きの芽が育ちます。
これらのチャネルは定形の仕事とは別に「ゆらぎ」を意図的に作り出し、創造的な活動に結びつける働きがあります。
社内SNSはそのようなコミュニケーションチャネルの役割を担っていくことができるでしょう。
公式情報を共有するものから、自由に様々なトピックについて議論を深めるものまで様々な用途・場面で社内SNSの活用が考えられます。
たとえば、企業では先輩後輩の人間関係の中で新しいアイディアが実行できないことがあります。
このような固定的なつながりがもたらす閉塞状況を破らないと、創発的なイノベーションは期待できません。
創発には、主体がさまざまな他の主体とのつながりを選択できる柔軟な環境、仕組みが必要となります。
社内SNSを活用することでつながりを選択できるような柔軟な環境をつくりだすことができるのではないでしょうか。


創発と向き合うこれからの経営とは


– さきほど「創発はコントロールができない」というお話がありました。何が生まれるかわからない状態は経営者・責任者にとってリスクを抱えることになると思います。そのようなリスクに対して経営者・責任者はどのように向き合うべきでしょうか。


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不確実なものに対して投資をするということですから、非常に難しい問題です。
本業とは別に少しずつ余裕をつくっていきながら、いろいろなことが起こる状況を作り出していくことが重要になってきます。
様子を見ながら、勝算があると感じたら、多くのリソースを投入するという判断力が求められます。


その意味で創業社長は凄いと感じることがあります。
会社の中で生まれている色々なものから、まだどうなるかわからないようなものをポッとひとつを拾い上げて、依怙贔屓(えこひいき)して引っ張りあげてしまう。そういう能力に長けている人が多くいると感じます。
経営者や責任者が自分の目で判断するタイプの企業もあれば、制度として取り組んでいる企業もあります。
3Mの「Post-It Note」は、執務時間の15%を自分の好きな研究に使ってもよいとする「15%カルチャー」から生まれていますし、Google にも、自分の好きなことを自由にやっていてもよいという「20%ルール」があります。
余裕がないとクリエイティブなものは生まれません。
無駄なのではないかという部分から新しい事業が生まれ、次の事業へと繋がっていきます。
新しい事業を次々と生み出しているという意味ではリクルートは非常に有名です。
リクルートでは「New RING」(New‐Recruit innovation Group)という新規事業提案制度によって、新規事業が生まれることが仕組み化されています。


– これからは多くの企業にとって「いかに創発的な価値創造を活性化させるか」という仕組みづくりが重要になってくると思います。一方で「統制」についての仕組みづくりはどうなっていくとお考えですか?


創発の仕組みが重要視されている一方で統制の仕組みがなくなることはないでしょう。
クオリティコントロール、現場での小さな改善を横展開して全体の品質を押し上げるというプロセスの重要性は変わらないでしょう。
現場で生まれた小さな改善、クリエイティビティみたいなものを共有するという意味でも社内SNSのようなプラットフォームはこれからますます必要になってくるでしょう。 

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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