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PC対TV:予見されてきた異種格闘技決戦

2004/03/06 23:42
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mori

マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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米国では日本と比べて驚くほど安い価格で液晶やプラズマの大型テレビが売られている。それら大型フラットテレビの発売元は家電メーカーではなく、デルやゲートウェイといった直販PCで伸びてきた企業ばかりだ。彼らは主要パーツを極東エリアで調達して組み立てるというPCと同様の手法で廉価に製品化されたこれらのTVは、当然PCにつながるようになるだろう。そのとき、単独製品で高機能を謳い、ブランド力で高価格を正当化してきた日本のTVメーカーはどう対抗するのだろうか。PC対TV。古くて新しい競争がいよいよ本格的に起ころうとしている

PCコンパチと同じロジックで作られるTV

元から米国のテレビの販売価格は、ハイエンド製品こそは日本並でも、全般的には圧倒的に廉価だ。だから、初めて米国に住んだ10年前には、主要な米国内テレビメーカーがつぶれてしまのも仕方ないと、ふと思ったほどだ。日本ではブラウン管方式であってもかなり平面に近い形状の画面が中心だったけれども、米国で一般的に売られていたTVは、ほとんど球面をばっさり切り取ってきましたと言わんがばかりに上下左右に曲面的。ライトなどの映り込みがひどかったこともあって、まあ、安いだけのことはあるなと、納得した

だが、今はそんなことはいっていられない。そもそも、フラットTVになれば画面への写りこみなんて関係ないし、そこそこの画質がデバイス自体の性能で自動的に保証されるからだ。今までは、店舗で画質を見比べて・・・といわれていたTVだが、デジタル化によって性能が均質化し、コモディティ化したこともあって、価格が安い直販が増えている。例えば:

デルの30インチのハイビジョン対応液晶ワイドテレビは、$2,499というから約27.5万円だ。TivoなどHDDレコーダーも実質$149からラインナップ。残念ながら、日本では1機種だけを販売中だが、米国とは異なる価格体系だ(17"ワイドが日本では\85,000だが、米国では$699≒\77,000)

eMachinesの買収によって再び日本市場に参入することを発表したゲートウェイは、46"のプラズマ・デジタルテレビを特価といえども$2,999.99(約33万円)という価格で出している

いずれにしても日本メーカの同等製品の日本国内最低価格(液晶30〜32"で30万円以上、プラズマ40〜42"でも40万円以上)と比べても十二分に安いことがわかる

これらメーカーはご承知の通り、撤退した米国家電メーカーではなく、現役バリバリのPCメーカーであり、すでにPC向けに液晶ディスプレイを山のようにネットや電話といった直販で売ってきた経歴の持ち主だ。PCで確立した、量販店や専門店といった販売チャネルを飛ばす直販手法で、コストを削減できるということも事実だろうが、それにしても尋常ではない安さを実現するにはそれだけでできるはずはない。厳密な調達価格と在庫管理の徹底など、PCというコモディティ=非常に価格圧力の大きい製品を製造販売してきたノウハウが、すべて投入されてはじめて、実現したと思っていいだろう

日本の家電メーカーでも、当然、コスト削減に尽力を尽くしているものの、このレベルには達していないだろうし、そもそも、製品に関する発想が違っているではないかと思う

賢くて高めの価格をつけられた日本のTVたち

典型的に、PCでも、日本のメーカーはIT系であっても家電系であっても、独自性を盛り込み、差別化し、付加価値を付け、価格を上げる努力をするのが一般的だ。そのため、デザインに優れたり、軽量かどうかが問われるノートPCなどは、海外メーカーの製品が非常に見劣りする印象が強い

しかし、デスクトップPCのような製品では、それほど差別化できるわけではない。せいぜいTVチューナーなどオプション的なものを出荷時に標準搭載するとか、それに関連する独自ソフトの開発搭載、そして最近であればインテリア性などに優れたケースやディスプレイで少しでも差別化できるように努力している

そして、TVも同様。画質が大きな差別化要因といわれている。パネルも調達先によってかなり差があるというが、それ以上に信号処理やパネル制御のテクノロジーで差が出るという。ソニーがWEGAエンジン、PanasonicがPEAKSと、画像処理テクノロジーを強調するのがその理由だ

しかし、店頭で見比べるとさすがに分かるが、通常利用でそれほど画質や色彩などにこだわる人は少ない

よく友人や親戚の家にいくと、居間にあるTVの色彩調整がひどくずれているのが気になって、ついつい調整してしまう。「便利なヤツ」とかよくいわれたが、逆にいえば、それまで毎日平均数時間、そんな色の狂ったテレビを見ていても平気な人が多いということだ。実際、そんなレベルなのである

だから、カタログのスペック上は様々な進化が毎リリースごとになされているTVなど家電製品であっても、不連続的な訴求価値の獲得に至るものは少なく、高価な家電機器を購入することへの認知的不協和の低減以上の何物でもない性能アップが多い。ただ、そんなメーカー側の努力が無駄だといっているのではない。日常的な利用を大きく左右するほどの性能差は、利用者の認知という点でなかなか難しいということなのだ

ちょっと話がずれてしまった

家電という市場で、日本が付加価値による価格の上昇を前提とした製品開発を行っているのに対して、米国では圧倒的なコモディタイズをむしろ推進し、より安い製品を提供することにゲームのルールは最適化されている。故に、製品は最低必要限度の性能をしっかり押え、余分な機能を削ぎ、その分コストダウンに成功したことを前面に出すのだから、価格競争となると、圧倒的に日本製品は不利になる

日本では売り物となるネット接続や他AV機器との連携作動など、TVだけではなかなか十分な価値を得られない機能は、削がれてしまう。その分、安い

ただし、機能的な進化がないというわけではない。メーカーにとって開発実装コストが押えることができ、かつ顧客訴求力が価格以上に増すことが明白であれば、実装される。典型的に、マイクロソフトやインテルが開発し、それらを廉価に搭載できれば市場に出るというPCのロジックが、まさしくそれなのだ

2005年、PCが中心となるか、TVが中心となるか

メーカーの立場とは別に、着々とマイクロソフトやインテルはそんなテクノロジーを開発してきた。すなわち、PCを家電の中核となすための準備をしてきた

Windows XP Media Center Editionは、リモコンでPCを操作できるインターフェースが注目されたが、その裏では当然のことながらAV系家電とのネットワーキングが前提となってきた。今まではPCでAV家電をコントロールするというイメージがあったが、Windows XP Media Center Extenderインテルの新しいチップを組み込んだ機器では、PCに保管された各種コンテンツの再生や加工、PCを経由したネットワーク接続で認証などを行うといった仕組みが提供されるという。実質的には、PCとAV機器でクライアント・サーバー関係ができるということだ。TVも、PVRも、XBOXも、PCとつながり、ホーム・クラサバ・システムを構成するのだ。結果、ITの世界で起こったのと相似のコストダウンの手法=ちょっとだけ賢いアプライアンスと機能の多くを集中させたPCで、相対的に廉価なシステムを実装できるしくみだ

デジタル放送やブロードバンドの普及にはかなりてこずったものの、ネット家電では圧倒的に安い価格で米国市場を一気に攻勢しつつある。その主役は、PCフォーメーションで成功を収めてきた企業たちだ。安くとも、ネット家電としての条件は十分に満たしているが、PCを中核とした戦略である点で、日本の家電メーカーが付加価値の高いTVの機能として、あるいはTVの進化系として設定したネット家電とは根本的に異なるものだ。しかし、両者は同じリビングルーム市場をターゲットとしている

廉価+クラサバ、付加価値+単体高機能という、単に中核とするハードの違いだけではなく、それぞれの生誕文化を反映させながら、PCとTVの異種格闘技決戦が始まる。PCメーカーが米国と同様の価格体系で日本市場に参入し始めたら、デジタル景気と暢気なことを言っている日本経済だが、一転、圧倒的にPC勢の有利となる可能性もある。もちろん、百戦錬磨の日本家電メーカーも日本の流通市場の特性を押さえてかかるのだろうから、一筋縄ではいかないだろうがなんといっても米国PCメーカの強みは直販。果たしてどんな戦いぶりになるのだろうか

好調といわれても、以前から指摘しているように本質的な成長のカギを手にしておらず、本質的にはむしろ後退した感も強い日本家電メーカーにとっては、このPC対TVの戦いは大きな試練になるに違いない。この挑戦をどう戦うべきなのか、次回議論してみたい

# リビングルームでゆっくりとした休日の時間の流れを実感しながら

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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