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日本の放送事業はビジネスとして垂直統合ではない

2004/01/20 18:02
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mori

マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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ある放送関連の研究会にご招待頂いた。放送はもっと儲かるはず、という以前からこのblogで書いてきた内容を示してきた。全般的には納得できる内容といっていただいたものの、そうかなぁと依然として疑問を持たれたのが放送事業の垂直統合性である。多くの方々は、放送事業には垂直統合性があり、それが故に放送事業は成立しているという、大前提をお持ちだと思う。しかし、その大前提の認識自体、僕は間違っているのではないかと思う

ついついエントリーができず、あっという間に10日以上経ってしまった

「長く書かなくてもいいんじゃないの」とか「思いついたことをさらっと書けば」という方もいれば、「もっと、最初にサマリーが合って、それをサポートするファクトをドンドンと・・・」と小論文を求める方もいる。ううむ、週に2つも小論文を書けるのであれば、10年前には博士号を2つくらい取れていたに違いない・・・

さて、今回は再び放送の話

危機意識が芽生えてきたか、放送業界

冒頭で述べた研究会で放送事業者の方々を前に、「放送事業はもっと儲かる」、「現状は事業機会の損失を自ら招いている」という指摘をしたところ、「今までそういう考え方をしたことはなかった」とか、「(放送に)まだまだ可能性があるとは思わなかった」と、いう思いのほか後ろ向きな発想で今まで来られたことを吐露される方が多く、意外な印象を持った

もちろん、どのような方々が参加されているのかによって違うが、ようやく危機意識を持つ人が増えてきたのはよいことだろう。もちろん、プライドの高い方が多い業界だし、外部の人間からの指摘を素直に受け止められるのは、普通でも一種の才能が必要になるから、簡単なことではない。しかし、以前よりも印象が異なってきていることは事実だ

前提が異なるためにすれ違ってきたのでは?

放送事業に関する議論が、今まで正面からできなかった理由がわかってきた気がする

放送事業に携わる方々には、放送事業者の本質は垂直統合性にあり、それが故に放送事業は成立しているという、大前提がある。しかし、大前提となっている「放送事業の垂直統合」という認識自体、違う、あるいは現時点では外れてしまっているのではないかということを僕は明確なものとして捉えてきた

具体的に僕がそう思う根拠を示すと、放送事業者は番組の編成を、放送倫理などの緩やかな限定の中で、任意にすることができるが、それは見かけの自由であって、収益最適化のためのものではない。垂直統合とは、バリューチェーン全体の戦略や収支については、自由度を自らコントロールできることをいうからだ

放送事業者は、公衆に向けて放送電波を発信できるという放送免許を有し、その免許に定められた様式で番組を送出している

しかし、分かりやすいので製造業に例えると、ある製品を与えられた仕様に準じて、自らの創意を組み込みながら製造し、それを流通させていることになるが、対価を、誰から、何に対して、どれほど、どのように受け取るかということについては、営業代理店に丸投げにしているに近い。要するに、垂直統合というのは、コンテンツの製造流通というテクニカルな部分だけで、価格設定のフレームワークや基本的なマーケティングというフィードバックループを構築し得ない立場にあるのだ

これをビジネスという視点からは、垂直統合と呼ぶことは苦しい

もちろん、利点はある、枠買いをしている代理店が存在するがゆえに安定した事業を放送事業者が行うことができる、などだ。ちょうど国内携帯電話端末メーカが、DoCoMoに代表される通信キャリアに端末を買い取ってもらい、安定した需要の下で製品開発製造ができるというのと同じ関係だろう。しかし、結果として、国内携帯電話端末メーカは国際競争力を失うことになった

収益のための編成とコンテンツのための編成の主従関係

もちろん、これがいいとも悪いともいえない。そして、公衆に向けた放送という公共性の高い事業であるがゆえに「カネのためなら何をしてもいい」といっているわけではなく、収益をあげるための編成という自由を外部の代理店に依然しており、放棄しているといっていい状況が故に、事業機会を損失しているという指摘をしているだけだ。せいぜい「もったいないなぁ」という以上に怒る権利があるのは、放送事業者の株主となっている皆さんだろう

繰り返すが、収益の最適化を(これ以上求めるかどうかを別にしても)選択できない構造である限り、それを放送事業者が「垂直統合型産業」であると明言すること自体、不自然だと思う。表現の自由や報道の自由といっても、実質的に代理店や広告主の顔色を見て行われていることは視聴者のほとんどにとっても公然の事実となっている。この構造的な不安定さに介入するのが国家権力だから、あるいは特定の事業者だから許せない取った論調が時折平然となされるが、考えてみれば奇妙なものだ。そもそも、放送局は特定の利害に構造的にコントロールされているといってもいいからだ

いやいや、放送局の皆さん、もっと儲けましょうよ

# ARKのANAホテル・ロビーにて

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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