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テレビ・ビジネスにもまだまだ可能性がある

2003/10/28 15:43
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mori

マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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sansaraさま、コメントありがとうございます

# コメントへのコメントをエントリーにさせてください

先のエントリーのような問題はビジネスモデルに関する問題なのではないか、というご指摘おっしゃるとおりです

テレビメディアがとりうるアクションの大きな方向性

思うに、現在のテレビメディアには、2つのとりうるアクションの方向性があります

1)既存のビジネスモデルの中での変更

2)新しいビジネスモデルの実現

1)について、多チャンネル化に伴うアソシエーション(ターゲットセグメントの行動を誘導する番組の編成を多チャンネルで実施し、特定セグメントに今まで以上に高い露出を実現する)など、欧米のメディア・コングロマリットで実施され、効果を挙げたものがあるでしょう。これについては、日本の場合、集中排除規制などによって実現されてこなかったという説明がなされてきましたが、本当にそうでしょうか?

2については、地上デジタル放送サーバー型放送などの、新しいテクノロジーによって、ある意味インターネットに近い(そして、それ以上に利用者特定力があるかもしれない)サービスが登場しつつありますが、これらのテクノロジーの可能性については以前取り上げていますので、今回はあまり述べません。ビジネスモデルについては、また今後取り上げて行きたいと思います

視聴率は何のために?

さて、1)ですが

メディアではなく、広告出稿者の立場から見ればアソシエーションは、広告代理店が複数のチャネルや番組を組み合わせたパッケージングを行うことで、ほぼ同様の効果を得られるはずです。しかし、効果を求める合理的なパッケージングは実質的には行われることはなく、ターゲットよりもリーチを求める複数の大広告主に対して、等しく価値を実感してもらうために、人気番組(=視聴率が高い番組)を均等に買ってもらうことが重要になっていました

ですから、集中排除という規制から来る問題よりも、業界構造の問題のほうが大きいのではないかと思われます。いわゆる「論理ではなく、決め(政治的)の問題」であるとしたら、「決め」を覆すために本来何がキーなのかを考える必要があるでしょう

NetRatingsの萩原さんが主宰する「Internet SurveyML」でも話題になっていましたが、再考のきっかけとして視聴率とは何のためのものかというキーがあります。時間毎に異なるセグメントの視聴者が、TVの前に座って視聴をします。(あるいは、ながら視聴で、場合によっては音も低めて、時々、キャプションでストーリーを追う程度で)しかし、一般的に視聴率は、時間帯ごとにどんな人がTVの前に座るかという議論を忘れ、単に数字が大きければいいという話になりがちです

# よく「猫が見てても、視聴率」などと揶揄されていますよね。ま、猫だとザッピングしない分、いいかもしれない。日テレの某プロデューサは、そもそも視聴者は2時間のスペシャル番組の最中、ずっと同じ番組を見続けていてくれると思っていたのでしょうかね?

時として、7時から9時ごろまで放映されている「プロ野球中継を見ているのは、オジサンが仕事から帰って、ビールを飲みながら見ているのであって、女性や若い人は視聴者として少ないだろう」など、われわれは常識で「視聴率」の意味を補いますが、客観的に正しい判断を下しているかというと怪しい。にも関わらず、視聴率は高いほうがいいというのは、リーチの議論をしているのか、セグメントの議論をしているかも関係ない場合が多い。本来、特定の時間に放映されている番組を見る人たちのセグメントまで想定した上で、議論しないといけないのですが、とにかく多ければいい、と。これを「手段の目的化」と呼んだわけです

既存のフィールドであってもビジネス化できるネタは多い

別にインターネットじゃなくとも、手法的に「個人視聴率」などの方策によって「視聴率」をより精緻化することはできます。その結果、セグメント別のリーチやアソシエーションなどの仕組みを実現する可能性はまだ十分あるでしょう。もちろん、先ほど指摘したように、広告代理店内のセクショナリズム&メンタリティなどの課題もありますが、今後、代理店よりも広告主から対投資効果を図るための手法を求められるようになれば、「決め」も変わらざるを得えないはずです。

また、テレビ朝日と慶応大学が共同で試みている視聴「質」調査リサーチQのように、過剰に単純化したために誤った使われ方がされてしまった指標とは異なる視点から、メディアを見る試みもあると思います

むしろ、簡単に計測できないものをうやむやにして儲けるのではなく、できる限り事実を把握し、得られたものから価値を創出するというのが、正統派のビジネス開発なのではないかと思うのです。

# このあたりの分水嶺は、広告代理店のビジネスモデルがコミッションベースか、フィーベースかにあるのかもしれませんが

このような手堅い機会が、まだまだマスメディア業界にはたくさんあるのではないでしょうか

新たなテクノロジーは必ずしも新たなビジネスモデルを必要としないが・・・

同時に、2)の対象となるであろう地上デジタル放送についても、すべて新規のビジネスモデルが導入されることもないでしょう。基本的には、今まで通りのスキーム/ビジネスモデルが存在し、付加的に新たなビジネスモデルの対象となるサービスが出てくるということになるのではないかと思います

だからといって、新しいビジネスモデルが必要ないわけではありません。すなわち、現れるであろう新しいテクノロジーにも、2つの流れが想定できます

a) 既存のビジネスモデルの価値を高めるテクノロジー

b) 既存のビジネスモデルとは異なるビジネスモデルを生み出すテクノロジー

「イノベーションのジレンマ(Innovator's Dillenmaですから、業界ではなく、その業界内部の特定の主体にとってのジレンマですな)」に関連して話題になるのは、b)に当たります。が、このaとbの両方を満足するものも十分にあるはずです

地上デジタル放送のような新たなテクノロジーは、既存のビジネスモデルをどこまで拡張し、そしてまたどのように新しいモデルを導入するのか、興味は尽きませんね

# 久しぶりの山登りでひねった足と再び風邪気味の身体をいたわりながら、自宅にて

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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