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メタデータは放送を放送でなくするか

2003/09/16 15:34
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mori

マイクロソフトやマッキンゼーで情報通信分野の戦略立案に携わってきた森祐治さんが、通信・放送業界やエレクトロニクス産業に関連した時事的トピックスについて、アカデミックな視点から分析していきます(このブログの更新は2004年4月9日で終了しました。続きは<a href="http://japan.cnet.com/column/mori/">コラムによる連載</a>をご覧下さい)。
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調べ始めたら面白くなって掲載が遅れてしまったが、前回の続きで放送メタデータについて議論してみよう

サーバ型放送についての総務省情報通信審議会答申ではメタデータとして、A)番組そのもの(記述言語メタデータ)については1)番組情報と2)セグメンテーション情報の2種類、加えて番組の放映に関したB) 番組配列メタデータについて述べられており、資料参考編で任意に生成利用が可能なC) 視聴者属性(プライベート)メタデータについても詳細が言及されている。本編で議論されているA) がコンテンツの蓄積再生支援やダイジェスト視聴やマルチシナリオ視聴などのために用いられる番組全体やシーンごとの内容に関した情報であり、B)はEPGに使われることを想定した情報である。もちろん、A、B、Cの情報を組み合わせて利用可能なサービスも多いだろう

A) 番組

1) 番組情報: 番組全体のタイトル、概要、ジャンル、キーワードなど
2) セグメンテーション: シーンごとの開始終了時刻、キーワードなど

B) 番組配列

C) 利用者属性

1) プリファレンス: 番組やシーンごとの嗜好性の記録
2) ヒストリー: 番組の視聴、あるいはその形態についての記録
3) ターゲティング: 視聴者のデモグラフィック属性の記録

また、放送コンテンツおよびメタデータに関する権利保護情報についての記述もある。具体的には、REL(Right Expression Language)のようにMPEG-21として標準化が進んでいる表現方式をとるものとみられる

いずれにしてもこれらの利用はハードディスクに蓄積された放送コンテンツについてのものであり、具体的な利用方法については放送事業者や家電メーカなどの創意に依存するということになっている。また、データの内容については、番組を制作放映する立場にある事業者やそれに準ずる東京ニュース通信社など番組欄情報提供会社のみが知りうる情報であり、多様な利用方法の前提となる基礎情報にあたると考えていいだろう

加えて、ハード内部で生成され、組み込みアプリケーションで利用されるメタデータとしてC) 視聴者属性データがあるが、C-1〜3のような利用者の行動や属性の詳細が記述される。これは、サービス提供者ごとに大きく異なる内容にはならないだろう。

さて、御手洗氏がコメントしていたオープンであるべき内容とは、この次のレベルにあたる話だ

オープンであるべきと氏が言っていたのは、具体的なアプリケーション(利用のされ方:例)ダイジェスト番組)を想定し、「私家版ダイジェスト」ように具体的なプレゼンテーションの仕方を記述した「シナリオ」であり、「編集フォーマット」である。コンテンツそのものから見てメタ・メタ・データにあたる情報だろう。ウェブでいえば、HTMLで記述された「index.html」ファイルに当たるような代物だ。アプリケーションの仕様が公開されていれば、シナリオデータはオープンに作成可能な領域であり、DJ的なスキルとセンスが要求される領域になろう。自宅のテレビで自動実演されるビデオ・プレゼンテーション・プログラムといったところか

しかし、そもそも、このような利用までをサーバー型放送では想定しているのだろうか。「第3者によるメタデータの提供」や「通信との併用(による放送以外の配信手段の利用)」を議論している限りにおいては想定しているようにも見えるのだが・・・。ちょっと中途半端な気がする

というのも、ここまでくるとサーバー型放送に対応したTVは、家電というよりもPCといった方がいい感じがしてくるからだ。果たしてこのような世界観を、放送や家電の業界が認めうるかどうか・・・

もし認められないとしたら、基礎となる番組記述や放送配列データにぎちぎちの著作権が主張され、家電メーカや放送局関連といった特定の開発者しか利用を許されない可能性が高い。シナリオは放送の内部でしか配信できないなどの仕様が策定される可能性もある。すでに、「著作権者が望ましくない利用のされ方を防ぐ」などの議論が答申の中でもされているほどだからだ

これら放送に第三者のシナリオを入れさせないという立場の前提となっているものは、放送は社会的影響力が大きな公共性の高いサービスであり、公的な資源である電波を用いたあまねく多くの国民に利用されるものという発想である

だが、放送はそのままでいいのだろうか? いや、もっと正確に言えば、そのままの議論が今も可能なのだろうか?

そのまま丸ごと見てほしいというのが現在の放送局のスタンスだが、家庭用VTRが普及した時点から、放送の意味合いは変質しつつある。番組の私的利用という著作権に抵触しない範囲であれば問題はないとされてきた。だが、サーバー型放送はそのまま私的利用の延長で考えられるだろうか。基本的に、審議会の答申内容として議論されているのだから問題はないのであろうが、そのレベル感がはっきりしない

シナリオなど私的利用形態をフォーマット化し、配布することはどうだろうか。加えて、放送と通信の融合結果として、放送局が必ずしも想定していない形態(通信によって付加データを獲得し、それらを交えた形など)での視聴は、どの程度まで想定されているのだろうか。前回も書いたとおり、「通信との併用も想定」としている限りは否定されていないものの、シナリオデータの外部からの挿入による、オリジナルで想定されていたものとは異なる視聴をどの程度まで許可するのか

放送局が番組を素材として提供していないという理由において、自由勝手な再生や加工は許されないというスタンスがあってもおかしくない。であれば、ザッピングなどの、あるいはDVDやCDのプログラムによるカスタム自動再生はどうなるのか・・・

せっかくメタデータがつけられた限りは、それを利用した多様な視聴ができた方が言いに越したことはないのだが、それは「放送」ではない可能性が高いのが問題なのだ。すなわち、メタデータをつけたとたん、包装が放送でなくなる可能性が具体化してしまうということではないか

じゃあ、サーバー型放送って、自己矛盾を抱えているということなのか。YES

だからこそ、単にメタデータの技術的な仕様だけではなく、この御手洗氏が指摘したようなオープンな仕様のあり方も含めて、改めて広く放送について議論される必要があるだろう。もう、地上波デジタル放送は、今まで通りの放送ではないのだから

しかし、NHKによる地上波デジタル放送でのB-CASカード採用のように、どんどん放送は放送であり続けるために垣根を高くしつつあり、新たな産業の誕生に抵抗しているように感じるのは僕だけだろうか。改めて放送とはどんなものなのか、広く議論する場がほしいものである

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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