Tech Crunchに「iPhoneママは第二のサッカーママになるか」という記事が出てきた。モバイル広告ネットワークのGreystripeが最近行った調査によると、iPhoneユーザーのうち29.5%が子供のいる女性が所有している事が分かったそうだ。日本ではどんな展望があるのだろうか。
この記事を読んだときに、目に浮かぶのが、表参道や六本木界隈で、ベビーカーを押しながらiPhoneを使っている人たち。あるいは母子連れで電車に乗っていて、電車の椅子にちょこんと座ってiPhoneアプリに夢中になっている子供の風景。東京にもiPhoneママは増えているのではないか、という感覚がある。
「iPhoneママ」というキーワードを聞いた瞬間、アマガサくんに電話をかけた。以前彼と同じケータイラボのミーティングで「ケータイと主婦の主婦性」というキーワードを耳にした事を覚えていたからだ。慶應義塾大学 政策・メディア研究科後期博士課程の天笠邦一さんは大学時代からケータイとコミュニケーション、社会的な関係についての研究を続けている。そこで、ちょっと話を聞いてみた。
まずケータイと主婦の主婦性という耳慣れない言葉から。
「主婦は家事という仕事と結びついています。子育てと家事をする主婦にとって、ケータイは都合の良いメディアです。PCの前に座ると、家事がままならなくなりますが、ケータイは買い物をしながら、洗濯をしながら、と仕事をしながら触れる事が出来るメディアです。そのため、家事という仕事により専念し続け、主婦が主婦であり続ける循環を生んでいる、という意味合いです」(天笠さん)
実はちょっとネガティブな意味合いで使われていたのが、この言葉だったのだ。しかし一方で、社会システムの変化や少子化の影響によって、これまでの主婦のコミュニケーションが成立しない場面が出てきているそうだ。
「例えばこれまでの主婦のコミュニティ参加の儀式として『公園デビュー』があります。大きな地域の拠点となる公園にはまだ子供連れの親が集まりますが、少子化の影響もあってコミュニティが成立しない公園が増えているのが現状です。NTT西日本が発表した『今どきママ白書』では、公園デビューよりネットデビューという言葉が踊り、パソコン派の増加も指摘されています」(天笠さん)
こんな環境の変化から、ケータイは育児ママの友人の多様性が高まり、ネットのライトなコミュニティ参加によって不安や心配事を解消していくポジティブな要素が目立ち始めているのかもしれない。そしてより高度な情報を求めて、PCを情報手段として活用しようとする「デジマム化」(今どきママ白書)も進んでいるようだ。※ この白書がインターネットユーザーを母数としているので、ケータイ側の話が出てきていない点は留意。
そこでiPhoneというツールの登場である。iPhoneはデジマムの強力な武器になる可能性があると天笠さんは指摘する。
「iPhoneをケータイと捉えると、タッチタイプに長けているケータイユーザーからすれば、ながらメールがやりにくくなるなどの不便さを感じるかもしれません。一方で、情報面を考えると、ケータイウェブからPCのウェブへと、より多くのサービスや情報にリーチ出来る手段を手にする事になります。ケータイでもフルブラウザは標準装備ですが、料金の問題で使っていませんので。PCを持ち歩く感覚として捉えると、iPhoneは魅力的な情報端末として映るのではないでしょうか」(天笠さん)
海外と日本ではiPhoneママの意味合いは当然異なるが、ケータイからiPhoneに持ち替える行為は、ママとして持ち歩く情報ツールをケータイからPCに持ち替えるような感覚がある。ケータイの延長上として捉えると、iPhoneの側面を見落とす可能性がある一方で、だとしたらFlashが使えない、他のケータイとのコミュニケーション(赤外線やIC通信)などが使えない点は、やっぱり不便に映ってしまうのだろう。