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改行のないメール

2006/04/28 00:24
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松村太郎

携帯電話の機能進化が進む中、アーリーアダプター層がどのように携帯電話を使いこなし、生活がどう変わっていっているのかについて、携帯電話と社会のあり方について研究するSFC研究所の松村太郎さんが紹介します。
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 ある企業で新人研修をしている方のお話を伺う機会があった。ビジネスマナーの話、会社の中の決まりの話、業界についての基礎知識、業務全般について、担当することになる仕事についてなど、研修で扱う内容は多岐に渡る。いろいろとご苦労が絶えないというお話だったが、その中の1つにケータイに関係するトピックを見つけることが出来た。それはメールの書き方という話である。 電子メールを使うのが初めて、という人はゼロ。就職活動のサービスに登録するためにはメールアドレスが必要だし、最近のケータイメールは「@」付きの立派な電子メールアドレスだ。ところがそのケータイメールに慣れすぎていることがアダとなっているのか、メールを書かせてみるとみんな改行しないで送ってくるのだそうだ。初めから顔文字を入れてくる人すらいるくらいで、頭を抱えるという。 同世代の間でやりとりするならば改行がなかろうが顔文字が入っていようが、むしろそれが共通言語なのだから、コミュニケーションの深さはあるかもしれないけれど、これが他の部署や社外のいろいろな世代の人に向けたメールともなると、やっぱりちょっと気になるというか、直さざるを得なくなるのではないか。組み合わせによってもいろいろな意味をなす絵文字が入ってこないだけ、まだマシと言うと酷だろうか。 メールについて、僕の大学時代の事を思い返しながら少し昔話を。僕が大学に入学したのは1999年。慶應義塾大学湘南藤沢キャンパス(SFC)はデジタルキャンパスと言われていて、授業を取るだけでなくサークル活動も含めたキャンパスライフを送るには、電子メールやUNIXでのホストのアクセスが必要不可欠だった。そのため入学して半年は週2回の情報処理の授業でみっちりたたき込まれるし、入ったサークルの先輩から便利なツールや使い方を習ったりしていた。 ケータイに目を移すと、ちょうどi-modeがスタートした年。ケータイのメールアドレスにやっと「@」(アットマーク)が入るようになった、つまりやっと電子メールの規格でやりとりされるようになった年だ。まだまだ古い端末を使っている人がいて、キャリアを超えたメールのやりとりが完全ではなかったという、今からすると想像できないような時代。そのためキャリア間で通話以外のコミュニケーションが出来なかったため、メールに力を入れていたJ-PHONE(現Vodafone)のユーザーが目立っていた(auが「学割」を始めるまでは)。 そんな理由から、当時は教室のほとんどが、電子メールそのものに触れるのが生涯初めてという学生だった。今でこそSFCでもWindowsやMacのメールクライアントを使ってメールをやりとりするが、僕らが授業で習った当時は、UNIXのemacsの上で動くmewというプログラムやmnewsというプログラムでメールの読み書きをしていた。そのため文字コードやサブジェクトの文字数、機種依存文字、署名や引用などのマナーなど、発信者がメールを文字化けさせない、読みやすくするなど、気を遣うように口を酸っぱくして言われた記憶がある。 そんな経験からか、僕はメールの改行には何らかのアイデンティティが宿っているのではないか、と思うようになった。例えばこの文章を、普段僕が書いているメールのように改行してみる。

するとベタッとテキストを流し込んでいる普段の体裁とはちょっと違った雰囲気になる。改行や1行の空行の入り方に対して、伝わるかどうかは別だけれど、自分としては、意味やテンポを自然と持たせるように心がけ始めるから面白い。それだけでなく、言葉遣いもなんだかちょっと変わってくるかな。 # 最後の「かな」はわざとらしいけれども。

 自分では基本的に句読点で改行しているのかなと思いきや、句読点で改行しているところとソウでないところとが見られて、自分の無意識の行動ながらそこに隠された意味を探るのはちょっと重し折りかもしれない。というように、電子メールを相手にキチンと表示させるための努力が、メールの文章に対して、その字面にアイデンティティを持たせるように働きかけていることがわかる。 ところがケータイではなかなかそういうわけに行かない。字面で変化をつけると言っても、ケータイメールの横文字の幅は10数文字がほとんどで、端末の差だけでなくどんな文字サイズで読んでいるかによっても変わってくる。そこでよっぽど話題が変わるとき以外は改行や空行を使わないし、話題が変わるときは別のメールに分けるので、結局1通のメールの中に改行が使われることがなくなっているのではないだろうか。 しかしメールの字面のアイデンティティは失われていない。そこに使われる顔文字や記号、そして色つきやアニメーションする絵文字は、改行よりもリッチな、字面のアイデンティティの新たな手法として確立されているのである。更にDoCoMoのデコメールは、ケータイ上でHTMLメールを実現して、さらなる字面のデコレーションを可能にしている。デコメールはテンプレートとして保存できるので、決まったテンプレートを使えばよりアイデンティティ性は高まりそうだ。 一番よく触れるメールのメディアであるケータイサイドで字面のアイデンティティ表現が進歩していくとなると、来年以降もずっと新人研修担当者の頭痛の種が増大するのだろうか。そんな彼らに明るい話題もある。それはソーシャルネットワーキングの流行だ。SNSのメールでは、どうやら改行による字面を気にしたメッセージングが行われているようである。これで新入社員からも改行による読みやすいメールがくるようになる。 しかし今度は別の悩みの種も生まれてくる。メールそのものは読みやすくなるかもしれないが、メールを送るときに、「@」付きのアドレスを入れないとメールが送れないことから教える必要が出てくるだろうから。日常当たり前になっているメールというツールは、なかなか難しいモノですね。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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