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「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正について

2010/06/30 00:26
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友人のTwitterで知ったのですが、日本証券業協会が『新規公開前に行われる不適切な自己募集を規制するための「有価証券の引受け等に関する規則」等の一部改正について(案)』という文書を公開していて、パブリック・コメントを募集しています。

http://www.jsda.or.jp/html/oshirase/public/10061001.pdf

この問題について、ベンチャー企業関係の何名かの方が反対の意見を表明していらっしゃいます。例えば、?インフォテリア平野さんはご自身のブログで「VCや事業会社からの投資を受けることが、厳しい昨今、ベンチャー企業のスタートアップ時の強力な支援者は個人投資家です。いわゆる「エンジェル」ですが、(この改正案は)この道をも閉ざそうというのです。」と述べていらっしゃいます。
http://blogs.itmedia.co.jp/pina/2010/06/post-5bea.html

また、エンジェル税制の立役者である、日本アイ・ビー・エム最高顧問の北城さんもこの改正案に反対の意向でいらっしゃると聞いています。

これは大きな問題だと思い、私もこの改正案を読んでみました。私は個人投資について詳しくはありません。しかし、この改正案の目的が「未公開株式に関わる詐欺を防止するため」ということですので、セキュリティに興味を持つ者として、私はその観点からこの改正案の背景とその意図するところ、考えられる効果を考えてみました。

未公開株詐欺に関して金融庁のホームページ(http://www.fsa.go.jp/ordinary/mikoukai/index.html)では、次のような事例があるそうです。

    *  業者から上場間近で大儲けが出来ると言われ、未公開株を購入。業者からは株券の代わりに「預り証」を渡されたが、株券は手元に届かなかった。不審に思い発行会社に確認したら上場予定は全くないと言われた。
    * 業者から未公開株を買わないかと話を持ちかけられ買付代金を渡した。その後、何の連絡もないので業者に電話 をしてみるとつながらなくなっていた。
    * 業者から今年の秋に上場すると未公開株を勧められ購入した。株券の名義書換えを要求したところ「待って欲しい」として引き延ばされるだけで一向に名義書換えに応じてもらえず、不審に思い、発行会社に問い合わせたら「上場の予定はない」、「当社の株式は譲渡制限がついているので名義の書換えは出来ない」と言われた。

このような問題に対して、日本証券業協会が「未公開株式の投資勧誘による被害防止対応連絡協議会」なる活動を行い、その結果「未公開株式の投資勧誘による被害防止に向けた具体的な方策について」という報告書(http://www.jsda.or.jp/html/houkokusyo/pdf/10012001.pdf)が発行されています。この報告書に基づき、改正案では「未上場会社が上場前に自己の株券等について個人投資家に対し募集等を行っていた場合には、原則として、当該未上場会社の新規上場時の株券の募集又は売出しの引受けを禁止する」、としています。この改正案の裏にある考え方は、「個人が投資する場合、上場はできない」ということをルール化することによって、上場による株価上昇を期待させる詐欺ができないように、という意図だと思います。

しかし、この改正案が上記のような未公開株詐欺を防止できるか、と考えると、非常に疑問だと思います。理由は2つあります。

1つは、この改正案によって未公開株詐欺が防止できるのは、被害者が「個人が投資する会社は上場はできない」というルールを知っている場合に限る、ということです。被害者がこのルールを知らない場合には、上記のような詐欺を防げません。従って、被害者になりそうな人すべてに、広報を徹底しなければなりません。未公開株詐欺については、既に日本証券業協会、金融庁、消費者庁などが広報の努力をしています。にもかかわらず、被害が収まらないのは、そもそもこのような広報を徹底するのは難しい、ということを示していると考えます。このルールを知らない限り、改正案があったとしても被害に合ってしまうでしょう。

もう1つは、たとえ被害者が「個人が投資する会社は上場はできない」というルールを知っていたとしても、例外条項があるために、悪意を持った者が被害者を騙すのは比較的簡単であると思えることです。例えば、例外条項に「発行者が有価証券報告書を提出していたとき」という項があります。「未公開株を個人の私が買ったら上場できないのでは?」という疑問に対して、「いやいや、この会社は有価証券報告書を出しているから大丈夫ですよ」と言われたら、皆さんは典型的には100ページにもなる「有価証券報告書」を正しくチェックできるでしょうか?EDINETで有価証券報告書をいくつか見てみましたが、私には無理そうです。上記報告書によれば、被害者の77%は60歳以上の高齢者の方だそうです。多くの被害者には難しいのではないでしょうか。

***

この改正案の問題は、善意の発行会社に対してのみペナルティーを課し、悪意の者に対してはなんら制約を課さないところにあると思います。拙速でなく、多くの心ある方の意見を聞き、有効性のある対策を立てていただきたいと思います。

※このエントリは CNET Japan ブロガーにより投稿されたものです。朝日インタラクティブ および CNET Japan 編集部の見解・意向を示すものではありません。
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